本当に正解ルートだったのか?
私はタイムループしている。
死んだら戻る。そう思っていたけど、前回は死ななくても戻ってきた。
戻るタイミングはバラバラだったのに、思えば始点はいつも同じ。
いつも同じなら、そこにきっかけが隠されているのかもしれない。
千佳ちゃんが、彼氏の友達と私と合わせる。
それを話そうとしていた『今日』が重要なことだったのかもしれない。
会社からの帰り道にあれこれ考え、寝ても覚めても友達の彼氏が気になった。
おそらく、私の運命を大きく変える人だ。
どんな意味でかはわからない。前回の人生のように殺されるかもしれない。
とにかく注意しなきゃ。
「菜月ちゃん、こっちこっち!」
約束の日、約束の時間より前に着くと、すでに全員そろっていた。
「遅れてごめん」
「遅れてないよ。みんな早すぎちゃったんだよ。あ、こっち彼氏」
「初めまして。二宮菜月です」
「初めまして。千佳から聞いています。今日は急なのにありがとうございます」
千佳ちゃんの彼氏はとても穏やかで優しそうな人だった。
いつも明るく元気な千佳ちゃんを、きっと優しい眼差しで見守っているんだろうなと思うと、なんだか羨ましくもあり恨ましくもあった。
そして問題の、彼氏の友達。
「それでこちらの方が、彼氏の友達」
「初めまして、橋本祐介です」
「ええ!!!」
「? どうしましたか?」
「あ…すみません。同姓同名の方を知っていたので驚いてしまって」
「ああ、そうなんですか?まあ苗字も名前も普通ですから」
驚いた。2人目の祐介だ。こんな偶然そうそうあることじゃない。
これは絶対に、正解ルートに入った。
うまくいけば、もう繰り返さずにすむ。
そう思うと、綻ぶ顔を抑えきれなかった。
「え!3人とも同じ大学なんですか?」
「実はそうなの。私は学部が違うんだけどね」
「へー」
飲み会は、彼氏さんと千佳ちゃんが喋る形で進んでいった。
話によると、橋本さんと彼氏さんが同じ学部で、彼氏さんと千佳ちゃんが同じサークルだったらしい。橋本さんはサークルには所属せず、ひたすら勉学に打ち込む毎日で、就職後はすぐに転勤してしまったため今日まで千佳ちゃんと会う機会もなかったようだ。
「今日は出張できたんだろ?いつまでいられるの?」
「明日には帰るよ。退職するから引継ぎに時間もないし」
「そうか。忙しいところ悪かったな」
「いや、いいよ。久しぶりに会いたかったし。婚約者にも会えたし」
千佳ちゃんを連れて飲み会を開催したのは、友人である橋本さんに会わせるため。
……私、完全にお邪魔虫じゃん。
絶対私のこと、ノコノコついてきた空気の読めない女だってみんな思ってる。
彼氏さんはたまに話振ってくれるけど、橋本さんに関しては少しもこっちを見ようとしないし、ピクリとも笑わない。会話を続けようと頑張っても、素っ気ない。
もう無理だ。とにかく居心地が悪いし、酒もまずく感じる。
ただひたすらに我慢したまま、飲み会は終了した。
私はただ疲れて、なんだか嫌な気分のまま帰宅した。