そしてまた、繰り返す
祐介の「由美が好きだった」話は、1年も経つと我慢ならないものに変わった。
祐介が酒を飲みすぎるせいで子供をつくることもできなかったし、仕事が終わって家に帰っても由美の話ばかり。いい加減嫌気がさしていた。
「ねえ!祐介さ、自分の言ってることわかってる!?」
ある日、プツンと切れた。
我慢の限界で、いつものように酔って由美の話をしている祐介に掴みかかった。
「なにすんだよ!!」
「それはこっちのセリフ!私とは結婚したくなかった、由美と結婚したかったって、それを聞いた私がどんな気持ちになるか考えたことある?」
「はあ!?なんでお前の気持ち考えないといけないんだよ!!」
「夫婦だからだよ!!」
思わず祐介に平手打ちをして、その勢いで祐介が椅子から転がり落ちる。
暴力はいけない。そんなことはわかっているつもりだった。
「毎日毎日毎日、由美由美由美由美!もう、本当うんざり!」
「じゃあ離婚するか!?」
「する」
「は?」
「あんたみたいな酒飲みマザコンと、もう一緒にいたくない。夫婦やめる」
「お前!!」
衝動的だったんだと思う。お酒で自制心もなくなっていたんだと思う。
私は祐介が手に取った椅子で殴られ、そのまま死んだ。
そしてまた、人生は繰り返すことになる。
「はー。何やってるんだろう。繰り返せるだけましか」
私は29歳に戻っていて、その日はなんだか疲れて会社を休んだ。
子離れできない義母にも疲れた。
親離れできない祐介にも疲れたし、愛想もつきた。
私は一体なんのために頑張って、祐介と結婚したんだろう。
というか、死んだら戻るんだ。今気づいた。
「もう、恋愛はいいや。一人で生きていこう」
そう思ったらなんだか気楽で一人の人生も悪くないと思った。
「なんだか最近頑張ってるね」
「うん。仕事に生きるって決めたから」
彼氏がいなくても私には千佳ちゃんという友達がいて、相変わらず飲みにばかり行っていた。
けれど3年もすると千佳ちゃんは結婚し、子供もでき、そのまま退職してしまった。会社には他に仲のいい人はいたけれど飲みに行くほどでもなく、そのままお酒からも遠のいた。
私は昇進し課長になった。給料も増え、どうせ一人で生きていくならとマンションも買った。なかなかいい人生だなと思っていた。
けれど、35歳にさしかかったある日、私はまた繰り返していた。
死んでもいないのに、また29歳に戻っていたのだ。