お義母さんという存在
祐介のお母さんは子離れできていないらしい。
もしかしたら祐介の彼女である人物だったら、みんな嫌いなのかもしれない。
だけど、そこまでわかったところで対策を練るのは難しい。
なにしろ、彼女という存在が嫌いなら、もうどうにもならないわけだから。
でも私はこれが3回目の人生。もしかしたら4回目もあるかもしれない。
だったら、今回は情報収集のために人生を使おう。
私は前回同様祐介に顔合わせのセッティングを頼み、そしてなんの策もないまま当日を迎えた。
「初めまして。二宮菜月と申します。よろしくお願いします」
当たり障りのない話題から入り、お義母さんがどういう人物か探る。
祐介同様、人当たりが良い人で、話上手に聞き上手。
とてもじゃないけど子離れできずに、息子の彼女を敵視するような人には思えない。
「聞いていると思うけど、うちは会社を経営していてね。いつかは祐介に譲るつもりなの。そうなった時、祐介のことちゃんと支えてもらえるのかしら?」
そしてついにこの話題がでた。
これに関しては、一応考えておいた。祐介を支えるのは私じゃない。
祐介はお義母さんに支えてもらい、私は見守るだけでいいはずだ。
「そうですね。できる限り支えていきたいと思うのですが、私ではもしかしたら力不足かもしれませんので、お義母さんの指導の元、一緒に支えていけたらと思います。やはり、お義母さんと祐介さんは長く一緒にいる家族ですから。私じゃ敵いません」
「あら! あらあら! そう!そうね!」
明らかに目の色が変わったのを見て、これが正解だったかと密かに思った。
「そうね、祐介ちょっと気難しいところがあるから菜月ちゃんじゃ、難しいかもしれないわね」
「そうですね。付き合ってから日も浅いものですから」
「そうすると、結婚後もうちの近くに越してきてくれるのかしら?」
「はい。歩いて行けるくらいの距離がいいですね。祐介さんもお義母さんと離れて暮らすのは寂しいと思いますし」
「嫌だわ、もう!これから結婚するっていうのに。祐介にも少し親離れしてもらわないとね」
「いえいえ。親孝行の範囲内ですよ。家族を大切にするのはいいことだと思います」
「そう言ってもらえると、安心だわ!」
本来、結婚したら祐介の家族は私になるが、お義母さんにとって私は他人。
祐介と私が家族になるのは、ありえないことなのだろうと思う。
それならば私は他人というポジションを崩さずにいけば、うまくいく気がする。
そうだ。これだ!これが正解だったんだ!!
祐介と結婚するには義母に逆らうことは許されない。
例え今後、不自由な生活であっても一緒にいるにはこれしかないのだ。