婚約破棄
前回はシリアスなものを書いたので、今回はコミカルなものを目指していこうと思います。なるべくテンポよく頑張ります。
よろしくお願いします。
「菜月、ごめん。別れて欲しい」
「は?」
話があると言われ、駅前のカフェに呼び出された。
先月婚約したばかりなのに、いきなりの別れ話。
なのに祐介は、悪びれもせず淡々と話し始める。
「いや、母さんがやっぱりやめとけって言うから」
「お母さん? …え?お義母さん?」
「菜月には悪いと思ってるけど、でも母さんが反対するなら仕方ないだろ?」
「え? ……え?」
え?
マザコンというのだろうか。知らなかった。
いや、恋する気持ちが強すぎて見ていなかっただけかもしれない。
「ちょ、ちょっと待って。お義母さん結婚に反対してるの?」
「うん」
「この間顔合わせした時は歓迎ムードだったじゃない」
「なんか思い直したみたい。やっぱり結婚はダメだって」
「は?」
「菜月ももう30だし、結婚がダメってなると別れた方がいいだろ?」
言ってることがさっぱりわからない。
そもそも結婚しないなら別れるって私のセリフじゃないだろうか。
なんでこの人は私の話も聞かずに勝手に決めてるのだろう。
「もし私が結婚しなくてもいいからこのまま付き合いたいって言ったらどうなるの?」
「えー…、困る」
「なんで!?」
「母さん、菜月のこと好きじゃないみたいだから」
は?
祐介の気持ちじゃなくて、お義母さんの気持ちの方が大事なの?
えっ…。噓でしょ。
この人、こんな人だっけ?
混乱する気持ちを必死に抑えて、なんとか平静を繕う。
「あの…私会社辞めてるんだけど」
「それは菜月が勝手に辞めたんでしょ?」
「え?」
「そんなの自分でどうにかしてよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。 家に入って欲しいって言ったよね?私、会社辞めるよって何度も念押したよね!?祐介、私にありがとうって言ってたよね!!?」
気持ちが高ぶって、思わず立ち上がってしまう。
「でももう別れるんだし、そんなの知らないよ」
はー。なにこいつ。
地獄に落ちればいいのに。
「ふざけんな!くそ野郎が!別れてやるよ!!」
「うわっ!なにすんだよ!!」
手元にあったLサイズのコーヒーを祐介の胸あたりに投げつける。
周りがざわざわしてヒソヒソ聞こえていたけど、そんなのどうでもいい。
私がバカだった。
なんでこんなやつと婚約までして会社まで辞めてしまったんだろう。
信じられない。もう嫌だ。
泣きそうになりながら電車に乗り、駅前のスーパーで酒を大量に買った。
家に帰って大泣きで買ってきた酒を飲み干し、そして衝動的に自殺した。
思えば、これが一回目の人生だった。