第9話 再会
第9話
「あなたは瑞樹さん!? 死んだはずでは……」
龍弥くんの顔に怯えのような影が走り、咄嗟に後退する。
当然、瑞樹くんとは、同じクラスであったため、彼を瑞樹くんのことを知っている。当然死んでいることも知っているはずだ。その顔の怯えがそれを証明している。
だが、困惑しているのは彼だけではない。私も同じだ。何しろ私は瑞樹くんが死ぬところを目撃しているのだから。そして、そのあと葬式も取り行っており、私も参加したのだ。だから、目の前で起こっていることが信じられない。
そんな私の気持ちも知らず、瑞樹くんは倒れている私の元へと近づくと、手のひらを私に向けた。だんだんと、私の傷が塞がっていく。そう、いつかも使ってくれた回復魔法だ。
「どうして、ここに……?」
私は思わずそう口にしていた。それに対する瑞樹くんの反応は
「話は後だ、結愛。まずは、龍弥のやつをなんとかしないと」
と、非常にそっけないものであった。いかにも瑞樹くんらしい態度だ。
「そうか、あなたも魔法が使えたのですね……! 瑞樹さん!!」
どうして瑞樹くんがここにいるのかはどうでもよくなったのか、非常に興奮した様子だ。
龍弥くんは手に持っていた釜を捨てると、右手の手のひらを広げ、前に突き出し、魔法を発動する準備をする。
「あなたも殺してあげます」
「俺は、もう死んでるんだ。これ以上殺されないよ」
瑞樹くんは淡々とそう告げた。
もう何が何だかわからない。とりあえず今目の前で起こっていることを見届けよう。そう思い、私は瑞樹くんと龍弥くんから距離をとった。
「なにを意味のわからないことを言ってるんですか!」
そう激昂し、龍弥くんは魔法を発動した。手の平から、瑞樹くんへと衝撃波が放たれる。それは瞬く間に瑞樹くんに直撃し、けたたましい爆発音がする。すぐに、暴風が私を襲い視界を遮られてよく見えなくなった。
「瑞樹くん!!」
私は思わず叫んでいた。いくら瑞樹くんといえど、あの衝撃で無事であるはずがない。
「ふっ、瑞樹さんも口だけだったようですね。さぁ、水瀬さん。さっきの続きをしましょうか」
勝ち誇った笑みを浮かべ、龍弥くんが私の元へとゆっくりと近づいてくる。
私も反撃するべきか、そう思った時。
私の目の前を閃光が走った。
「な、なにっ!!」
突然、龍弥くんの驚きの声が聞こえたかと思うと、龍弥くんと目の前に瑞樹くんが現れた。
龍弥くんは目の前で起こったことをすぐに理解することができず、反応が遅れた。その隙をつき、瑞樹くんが魔法を使う。
「眠れ」
その場で瑞樹くんに倒れこむような龍弥くんは眠りについた。瑞樹くんは龍弥くんをしっかりと抱きとめた。
「少し眠っていてくれよ」
龍弥くんをその場にゆっくりと横たえると私の方に歩いてくる。
「久しぶりだね。結愛」
「瑞樹くん……」
私は、思わずその瑞樹くんの体に抱きついた。瑞樹くんも、優しく私を抱き返してくれる。この、感触。間違いなく瑞樹くんだ。私が愛した瑞樹くんだ。
「どうして、瑞樹くんがここに?」
しばらく抱き合ったあとそう尋ねた。確かに瑞樹くんは私の目の前で死んだのだ。ここにいるのはおかしい。
「結愛に引き継がれた俺の魔法の根元に、わずかに俺の意識が残っていた。その意識から一時的に具現化したのが今の俺」
「根源? 意識? どういうこと?」
「説明すると長くなるからさ。幽霊ぐらいに思ってくれればいいよ」
「幽霊?」
「そう、幽霊」