第10話 決意
すると、瑞樹くんは足元に倒れていた私の両親の亡骸に気づいた。憐れむような表情で呟いた。
「ごめん。結愛。もう少し早く来れば結愛の両親を助けられたのに……」
「瑞樹くんが謝ることじゃないよ……。これが私が引き起こした悲劇なんだから」
「結愛が……? 一体何があった」
そこで私は、瑞樹くんが死んでから起こったことを全て説明した。魔法の力を得たあと、復讐に心を奪われ、同級生二人と教師一人を殺したこと。そして、それが引き金となり、龍弥くんが両親を殺したこと。
私の話を最後まで聞いた瑞樹くんは私から目をそらし、呟くように言った。
「俺が死ななければそもそもこんなことにはならなかったんだ」
私は何も慰めの言葉を持たなかった。そう、そもそも瑞樹くんが死ななければ私は幸せな生活を送っていたはずだったのだ。それでも、それは瑞樹くんが悪いわけではないのだ。
「誰に、殺されたの……?」
私は、瑞樹くんの死に際に、答えをもらうことができなかった質問を再び投げかける。
「わからない……。どうやら、この仮の姿では記憶に一部障害があるらしい?だけど、一つ覚えていることがある」
「なにを?」
「俺は、死ぬ直前まである事件について調べていたんだ」
「事件……?」
「それは、今日の龍弥の行動にも関係がある」
そう言い、瑞樹くんは地面に横たえてあった龍弥くんの体の元へと近づいていった。
「龍弥の魔法……。これは正式に継承されたものではない」
「正式じゃない……?」
「前説明した通り、魔法を使えるものはこの世界には7人しかいない。そしてその魔法使いが命を落としたときのみ次の継承者へとその全ての力が与えられる。俺の魔法もそれで結愛に引き継がれた」
「うん」
ここまでは、以前瑞樹くんから聞いた話だったのでとくに驚くことはなかった。
「だけど、龍弥のように正式に継承されずに、魔法を使える人間が存在するらしいんだ」
「そ、そんなことができるの……?」
そこで私はふと思い出す。龍弥くんは魔法をある人から与えられたと言っていた。
「おそらく、7人のうちの誰かが魔法を与えている。魔法とは本来、人を守るために使われるべきものだ。だが、その力の大きさのあまりに自己を失い復讐心に心を支配されてしまうことがある。それを利用してそいつは、いろいろな人に残虐な行為をさせているんだ」
それを聞いて気づく。私もそうだった。魔法の力を手にし、その力の大きさのあまり私は人を殺してしまった。一生償うことのできないことをしてしまった。
「なんのために……?」
「わからない。これは推測だけど俺はその首謀者を特定した。そして、そのすぐあとに殺された。おそらく、首謀者の差し金だ」
一般人に魔法の力を与え、復讐心を引き出す。そして、その人に残虐な行為をさせる。目的は不明だが、そんなことがあっていいのだろうか。いや、だめだ。
「……たしが……める」
「えっ?」
「私が止める」
この力で罪なき人を助けることができるなら、私はー
「止めるって、結愛が……?」
「うん。せっかく救ってもらったこの命。誰かを助けるために使いたい」
すると、瑞樹くんは泣きそうな、しかしそれ以上に嬉しそうな笑顔を私に向け、言った。
「結愛。強くなったな」
瑞樹くんは私の頭を優しく撫でる。この感じも懐かしい。私が虐められていた時にはよくしてもらったことだ。
その時だ。瑞香くんの体が透け始めたのは。
「そろそろ時間だ」
「時間……?」
「魔法の根元に残された俺の意識ももうなくなる。これで、お別れだ」
「そ、そんな……」
「俺はもう、結愛に会うことはできない。最後に一つ。榊原浩介の元を訪ねろ。7人の魔法を使う者の一人で、俺の師匠だ。必ず助けてくれる」
「瑞樹くん!!」
「愛してる」
瑞樹くんの体が、初めからそこになかったかようにこの世界から消えた。
ああ、私はなにを口にしたんだろう。私が止めるだって? 力に溺れて罪を犯したのは私が。そのおかげで大勢が死んだ。その分際でなんとおこがましいことだ。
本当は、死ぬべきなんだろう。龍弥くんに殺されるべきだったのだ。
だけど、瑞香くんに救ってもらったこの命。そして、瑞樹くんから受け継いだこの魔法の力。
それを使えば、私にだってできるかもしれない。罪なき人を助けることが。
これで、私の罪が消えるわけではないことはわかっている。私の罪は一生背負わなければならない。だから、このまま死ぬのは自分勝手すぎる。
この魔法の力を使い、罪なき人を助ける。それができたらそのときは私も死ぬ。瑞香くんの元へと私も行こう。
そして、私の人生は再び動き出した。
これで、第1部 復讐編が完結です。
読んでくださった方ありがとうございました。




