8章
あの後
ほぼほぼ死体となった腑抜けの俺はベッドの床につき、殿下がせっかくきてくれてもどうにかベッドで眼を開け
何が欲しいか?食べれる物はないか?何か病気ならどんな魔法も使うと、必要以上な殿下の心配に俺はメンタル的に半死状態なのでどれも効くわけもなく
申し訳ない気持ちで、せめていらない事とありがたい事をジェスチャーで伝える。
殿下が何故か傷ついた表情になり、俺が振る手を握りしめ
何でだか、手にゴツゴツするものがいつの間にか握らされていた。
殿下は口を小さく開け
「これは防音魔石だ。握っている。カシ…すまない。
ティンルリー・ファウス、お前と私以外には聞こえない。」
「えっ、そんな大事な物良いのですか?」
「疲労が辛いんだろう、そんなに焦るな」
「ソレにお前に使う物に何一つ勿体ない事などない。」
そう言うと殿下は真摯に俺を見、どこか熱ッポく俺に呟く。
「本当は体調崩してしまったお前に、見舞いを送り帰るだけが最良なんだろうな」
「いまだに、いや。今だからこそ。
もうお前を…………失くす事は、今度は生命に変えても許せない」
最後のセリフは聞こえず、まるで鋭い刃に見える触ったら切れるだけでしかない瞳になった殿下の瞳が。
この俺様が一瞬とはいえ
生理的に
つい恐いと思った目線だけが殿下が帰った後も鮮明で。
前の生きた世界の名前と、今の生きている世界の俺たちの名前がややこしく
お互い
俺は殿下を『ハイアル』と
殿下は俺を呼びやすく『ティンリー』と
呼び合う事にした。
前世の名前で呼び合ってたら、周囲に不思議がられ困るだろうし、しょうがない。
殿下は帰る時にお見舞いだと、何故だか
その、あの、お、女の子の姿の小さな人形と花を贈られた。
正直殿下から贈られた人形は、え?いい歳こいて。お人形!?と不躾な感想しかなくしかも髪も目も水色で、メイドや侍女には
「まるでお嬢様みたいですね。
お嬢様がそのお人形を持つとまるで双子ですは!」と
周囲の感想は可愛いらしいお嬢様にはピッタリとの事。
逆にそんなに幼く俺は見えるのかと、鏡を何度も見返した。
次の日も使用人の溢れる善意に、前世の使用人の溢れて溜まって激流悪意を懐かしく振り返り
そういえば、早朝そうそう寝込みにモップの木の部分でオデコに叩きつけられ。
殺されそうになって起きた事を思い出して血抜きだけはどんな物でも、俺上手いんだよなぁと思わず自画自賛しつつ
今世の使用人達に支度を終わらせられて
「アレ?」っとなった。
昨日のダメージがメンタルゆえ、一晩寝たら大事はないが
「どこかに出かけるんだったか?」
どうやら俺専用のメイドらしいピンク髪に聞くと。
「嫌だ、アタシったら言い忘れてました。
ケディ様がいらっしゃいますよ」
うん、俺には意味わかんねー
どうやら誰かが来るのは解ったが。
どんな関係の人間でどんな理由で来るか解らない。
ピンク髪って前世ではエロい奴多そう!と勝手な持論を持っていたが
今世では頭が悪い奴が多そう!とまたもや勝手な偏見持論ができそうだ。
「あの、、、」
俺は今までこの館の親父や母親や使用人達の優しさだけで、ほぼ記憶がたまに水面に上がってくるか細い記憶だけを頼りに。
皆の説明でやってきたが無理がある。
だから、俺は正直に酷い炎に囲まれた事故にあってから。なんだか昔の事が思い出せない事を告白した。
勿論驚いた、ピンク髪は雇用主の親父に告げようと踵を変えようとした所で悲鳴を俺は上げ
「お父様やお母様には言わないで!!
これ以上傷つけたくないの!!!」
そう大事なのは。人を騙す時には嘘に本当を混ぜると言うヤツよく聞くだろうが反対だ。
まずは、騙したい人間を本気で自分の嘘で幸せになると信じきり。
そして本当にほんの少しの嘘を混ぜて
嘘でもない。けど、本当でもない。を作れば
言ってる本人でさえ、嘘か本当か解らなくなるのがコツだ。そうしたら放つ言葉は嘘か本当かすら本当に解らない。の出来上がりで、前世では生きていく為によく役に立ったなぁとしみじみしつつ
同情をまんまとピンク色メイドから勝ち取り
俺が記憶がない事の手助けやらを手伝わせるのに成功した。
そんな訳で
殿下、事。ハイアル様がいらっしゃるのは午後からだが
お昼前の今からは隣領の親同士友人でその子供達である親友人の息子もいつも通り遊びに来るらしい。
ふむ。どうやら俺には留学中の兄妹がいるらしいが、幸いな事に現在留学中とは悪魔に感謝したい位だ。
訪問してきた夫妻と息子は人の良さが全面に出て洗練されたたたずまいが香りたつ。
うん!最初から苦手だ!!
人の良さが出てる夫妻は、親父や母様にハグをし会った早々打ち解け
子供は子供同士と、談話室で
「久しぶり、ティンリー。凄い噂が広がってるね!まるで別人の噂みたいだけど困ってない?」どうやら本気で心配してるのだろうか俺の顔を覗きこみ、様子を探ろうと
赤茶の髪にこれまた赤茶色の眼を持つ幼馴染みは近い距離で俺を探る
「ケディ、噂は噂よ。私が魔物の事故にあってしまったせいで、それでなんだか色んな人を巻き込んでしまったのが…その、悪かったみたいで」
後は下を向き黙ってしまうと
「ご、ごめん!!辛い思いをしたばかりの君に言うことじゃなかったね」
明るい話題に変えようと言われ、自ら話を振ってきたケディは
「そうそう!あの水晶だけで作る剣だけど
素材が、ようやく集まったよ!!!」
勢いよく言うと。俺の様子を見てくる。
えっ、水晶だけで、できた剣だと!
前世を17歳で、亡くなった意識の俺の男性部分がムクムクと、好奇心でいっぱいになり
ケディに話を合わせながら、俺の中の武器の知識を使い楽しく話をし話が尽きず
侍女がもうすぐケディ達の親が降りてくる事を告げにき、お開きの雰囲気が漂う中
ケディが
「あーあ、妹も会いたがってたけど風邪なんて間が悪いよなアイツ」
「え?」
ケディに妹がいるとまで聞いてなかった俺は一瞬飲んでた茶器に音を立てた
「?」
となったらケディが懇切丁寧にケディの妹の事を話してくる。
俺はケディが妹の話しを紡ぐ度、なんだか血の気が引いていく。
俺の頭に思い出すな!思い出しちゃいけない!!と警報がなる
「ティンリー?」
「ティンリー???!!!」
様子のおかしい俺にケディが慌てて近づき心配するが
俺が、普通は持ってない前世の記憶の中
たった2つしか大事で譲れない物はなかったのに
その2つの幸せを死ぬまで守る筈だった俺は軽々裏切り死んでしまたった事を
どこかで思い出しちゃいけない!
どこかでほんの少しも考えちゃいけない!
じゃないと、俺は
「ティンリー!」
生きている理由すら
「もうすぐおば様達が来るから!!!」
なくなる
「ティンリー息をして!?頼む!!!」
から。
息がなんでだか出来ず苦しくて苦しくて何かに縋り付きたく浅ましく動いていた、手をどうやらケディが握って俺のハッハッハッ、と早く、大きな息づかいをどうにかマシにしようと最終的に俺を抱え込み、少しでも息遣いをよくしようとしてるらしい。
そこで俺の意識は真っ暗になった。
次に眼に映ったのは
殿下だった。
少し怒った顔をしてる。
当たり前だ、今日もいらっしゃる約束をしたのに又ベッドの住人では殿下でなくてもうんざりするだろう。
怒りながらも、申し訳ないから俺がすると言ったが譲ってくれず
丁寧にお茶を殿下は入れてくれ、俺をベッドで飲めるようにしてくれ
2人で飲む。
どうやったのか、意識が戻ったばかりの俺は大きな部屋に珍しく使用人が誰もいなく2人でいる事に今回ばかりは
殿下の苦渋の怒りの眉間の皺が気になり誰かいて欲しかった。
黙ってお茶を飲む殿下に合わせ俺も黙ってると。紅茶をテーブルに置いた殿下は
俺の頬に手を持ってきて
フッ、と俺と殿下の顔はお互いの吐息が解るほど近くなる。
長い銀色の睫毛はキラキラとしてるくせにしっかり長く主張し、宝石に見える紅の赤の瞳は達はただただ美しく思わず見入ってしまいそうな俺に
苦しそうな表情に今更俺は気づき
「殿「すまない………」
かぶせて言われた上、今まで見た事のない男性の苦しみやら辛さしか感じない吐息で殿下は
「ティンリーは…俺を、決して赦すな」
深い深い低い声でそう言い。
最後に思わず口づけるのか?と言う程近くなり
何かを我慢した表情の殿下に抱きしめられた。