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世界を救う巫女になったのだけれど、仲間が堕天使と神官と踊り子ってどうなんでしょうか?  作者: 釧路太郎
不思議な屋敷編

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屋敷と月

 敷地の外から屋敷を覗いていてもよくわからないし、やはり近くで確認しないと屋敷の全容はつかめそうにないとの結論が出た。私達はお世話になっている住人のためにもあの屋敷に住んでいるという魔女の事をもっと調べないといけないだろう。それに、あの屋敷にはマサキがいるような気がするとミサキもミカエルも言っているのだからそれを信じて行動することも大事だと思う。

 昼間に屋敷の近くを何度調べても中に入れそうな場所は無いし、様子を窺うことも出来ないし、誰かがいる気配もない。夜に探索に行こうと思っても、灯りのないこの屋敷の様子を窺うにも目ではなく耳が頼りになってしまうのだけれど、どんなに耳を澄ませても聞こえてくるのは風が揺らす草木の音と私たちの吐息だけだった。


 私たちが集落にお世話になって結構な時間が経っていると思うのだけれど、夜間の外出時に外が月や星の光で照らされていることは一度もなかった。時折雲の隙間から見える月は新月なのかと思うくらい存在感が無いのだけれど、それがもう10日ほど続いているような気がしていた。不思議なことなのだが、夜間に見える月はかすかに月の形を見つけることが出来るような程度で、空から目を離すとどこに月があったのか探すのも大変になるくらいだった。そんな感じで夜の月は全くと言っていいほど存在感は無いのだけれど、空が白んできて朝が近付いてきている時に見える残月はなぜか毎日月齢通りの形を見せていた。このことはミカエルも気づいていたようだったけれど、ミサキは全くと言っていいほど関心を向けておらず、今も朝方まで時間をかけてマサキの痕跡を探しているのだった。ミカエルに至っては私達に協力することもなく、一人で空を飛んで何かを探しているようだった。


 ふと見上げた空に浮かぶ残月はほぼ満月に近いようで、地球と月の関係と同じだとしたら、私達は集落にお世話になってから二週間以上は経っているのではないかと考えていた。その間にしてきたことと言えば、森に棲んでいた魔物退治と時々やってくる集落を狙った山賊討伐くらいだった。集落の人達はそんな私達を熱烈に歓迎してくれているし、私達も多く助けられているし、きっとこういうことの積み重ねでいつかマサキの手がかりが見つかるのだろうと思い、毎日一生懸命に行動を起こしているのだ。


「ねえ、門から玄関の途中くらいに何か落ちてるんだけど、アレって何だと思う?」

「何が落ちているのかな、って、ここからじゃよくわからないわ。私はあんまり物事に詳しいわけじゃないけど、アレって絵か写真なんじゃない?」

「どうしてそう思うの?」

「あんまり詳しくはないんだけど、絵とか写真って額縁に入れて飾ったりするんでしょ?」

「そういう家もあると思うけど、あたしの家はそういうの無かったかも。やっぱりこのお屋敷はあたしたちと生活レベルも全然違うんだろうね」

「私達って言ってるけど、私とミサキだって全然違うと思うよ。私がここに来るまで住んでたところって、生活スペースがほぼ廊下だったからね。部屋の管理しろって言われてもさ、どの部屋も中に入ることが出来ないんだからどうしたらいいのって感じだよね。ミサキはそんなことないんでしょ?」

「あたしも一応は部屋があるんだけど、それもお姉ちゃんと同室だから気の休まる時間とか少なかったよ。マヤちゃんの家ってそんなに人が来ないみたいだし、あたしよりもリラックス出来てたかもよ」

「そうは言ってもね、私だって好き好んであんな所にいたわけじゃないしね。他に行く当てもないし、あそこで一生過ごしていくんだろうなって思ってたんだよね。でも、ミサキたちが来てくれたおかげで私の行動範囲も広くなったと思うよ。ミサキの影響だと思うんだけど、徐々に来てくれる人が増えているからさ」

「そう言うもんなんだね。あたしはそんなことを全然考えていなかったし、ただ流されるままに生きていたかもしれない。全部友達やお姉ちゃんの後について真似ばかりしてたんだけど、そんなあたしを変えてくれたのがまー君なんだよ。そんなまー君の姿が一瞬見えた気がしたんだけど、あの屋敷になんでまー君の姿があったのかな?」

「本当にマサキの姿が見えたんっスか?」


 私とミサキが屋敷の玄関前に落ちている額縁に夢中になっていると戻ってきたミカエルが私たちの会話に混ざってきた。混ざってくるのは構わないのだけれど物音を一切立てずに会話に参加してくるのは少しやめてほしいなと思った。


「ここからじゃ何の絵なのかわからないけど、どうにかしてあれって見れないかな?」

「アレに何か思い入れでもあるっスか?」

「ちょっとね、まー君の家に遊びに行ったときに見た絵の額縁と似てるような気がしているんだよね。ちゃんと見たわけじゃないし、完璧に覚えているとは言えないんだけど、あの形と細工の細かさはあたしが見たやつに似てると思うんだ。それも、あの絵があそこに落ちている原因はまー君のような予感がしているんだよ」

「自分もマサキの家に行ってみたいっスけど、自分たちは自由にミサキたちの世界に行くことが出来ないんっスよ。だから、ミサキでもマサキでもサクラでもアイカでも誰でもいいんで自分をそっちの世界に招待してもらいたいっス。今まで自分を呼んでくれた人たちはみんな力不足で自分は意識体だけ向こうの世界に行くっていう拷問に近い行為を受けて居たっス。おかげで好き嫌いは無くなったんスけど、自分は本来なら食事をとる必要はないんっスよ。でも、向こうの世界に行って自分を維持しようと思うと必要以上に魔力を消費しちゃうんで常に何か食べてないと死んじゃうっス」

「そんなに明るい感じで言われていても困るんだけど、どうせ門の中に入ることは出来ないんだし、今日は集落に戻ってお昼くらいまで休むことにしましょう」

「そうだね、私も少し眠くなってきたところだったし、ミサキの判断力は間違いないってことが証明できるかもね」

「自分もなんだかよくわからないっスけど、二人には休息が必要っス。毎日深夜0時過ぎから毎晩行動してるんだし、完全に昼夜逆転しているのは直した方がいいかもしれないっスよ。そんなわけだから今日からちゃんと休むことにしなきゃダメっスよ。鉄の人が作った暗室で寝るのもいいと思うっスけど、用意されてる部屋で寝るのもいいと思うっスよ」



「それにしても、こっちの世界は月がおかしいことになっているんっスね」

「月がおかしいってどういうことかな?」

「自分は空を飛んで確認しているときに雲の上に行くこともあるんすけど、昨日が新月だったのに半月になっていたり、三日月になっていたり、半月になっていたり、また新月になったりと規則性が不明なんっスよ。不思議なことに、地上から見える月はそんなことも無いんすけどね。どうしてそんなことになるのかあとで集落の人達に聞いてみるのもいいかもしれないっスね」


 集落に向かう途中でミカエルがそんなことを言い出したので私はふと空を見上げていたけれど、空には先ほどと変わらない残月が浮かんでいた。今にも消えてなくなりそうな月は綺麗に半分だけその姿を私達に見せてくれていたのだった。

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