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世界を救う巫女になったのだけれど、仲間が堕天使と神官と踊り子ってどうなんでしょうか?  作者: 釧路太郎
不思議な屋敷編

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金髪少女

 僕たちが開けた扉の入口があったのだけれど、銭湯や温泉で見かけるような暖簾がかかっているのだった。僕たちは誰が何かを言うでもなく自然と男女で別れて入ったのだけれど、今になって思うとあそこで別れたのは失敗だったと思ってしまった。僕はなぜか一人で見たこともない屋敷の前に立っていたのだ。ミカエルがこちらではなくみさきとマヤについて行ってしまったのは驚いたけれど、何かあった時に困りそうなのでそれはそれでいいのだろうとは思っていた。

 ただ、黙って立っていても仕方ないので門の外から屋敷を覗いてみたのだけれど、不思議と人の気配はしなかった。それどころか、誰かが住んでいる感じもしなかったのだ。庭はしっかりと手入れされていて、芝も綺麗に狩り揃えられているし、庭木の剪定もしっかり行われている。それでも、どこか生活感を感じさせないのが僕を不安にさせた。

 塀伝いに一周回ってみたのだけれど、思っていたよりも大きい屋敷だったようで、門の前に戻ってきたときには額にじんわりと汗が浮かんでいた。それと、どこで切ったのかわからないけれど右手の甲に軽い擦り傷が出来ていた。痛みは全くなかったのだが、うっすらと出血しているようで見た目には痛々しい感じがしていた。


 屋敷の周りを一周してみてわかったことなのだが、この屋敷は高台にあり周囲は何もない見晴らしのいい環境であった。屋敷の門に続いている道をたどってみていくと、だいぶ離れた場所に村と呼べそうな集落が存在していた。集落は周りを木々に囲まれているので解放感は無さそうだが、それほど近くに川も流れていたり、家も密集していないので住みやすそうではあった。屋敷は三階建てに見えるのだけれど、眼下に見える集落には木々よりも高い建物が見受けられないので、おそらく平屋建ての家しかないのだと思われる。

 このまま屋敷の前にいても仕方がないと思うので集落に向かってみようと一歩進んでいると、後ろから門の開く音が聞こえてきた。振り返ると、そこには誰もいないのに僕が通れそうなくらいのスペースだけ門が開いていた。僕は少し悩んだけれど、その開いているスペースに体をねじ込むんで中に入ることにした。門を抜けて数歩歩いていると、再び門が動く音が聞こえてきた。振り返ると門は完全に閉じており、僕の力ではどうやっても門が開くことは無かった。乗り越えようと思っても、上の方に返しがついているので僕にはそれを超えることは出来ないと思う。

 そのまま屋敷の入口まで行ってみたのだけれど、玄関は固く閉ざされていて開く気配はなかった。呼び鈴などはなく、数回ノックしてみても反応は一切なかった。とりあえず出ることも出来そうにないし、今度は塀の内側から一周してみようと思って歩いてみることにした。

 窓から部屋の中をのぞくことはできるのだけれど、どの部屋も判で押したように同じようなつくりになっているし、誰かがいる感じも受けなかった。それでも、誰かがいるのではないかと思って確認してみたのだけれど、誰もそこにはいないのだった。

 結局のところ、一周してみたのに収穫はなく、途方に暮れていた。いつの間にか屋敷に夕日がかかってきていたのだけれど、門からは遮るものが何もないため夕日を綺麗に眺めることが出来た。地元でも時々こうして夕日を見る機会はあったけれど、今みたいに悲しい気持ちで見る夕日は初めてだった。


 夕日が地平線の奥に消えて、闇が空を覆いつくすと同時に屋敷の照明が一斉に点きだした。誰もいないはずなのに門や入り口についている松明も灯り、何があったのかと恐怖すら感じていたのだけれど、そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、玄関にある大きな扉が開くとそこには小さな少女が僕を手招きしていた。ギャルではないのだろうが、金髪の少女は含みを持たせたような笑顔で僕を誘うと、それに誘導されるように僕は屋敷の中へと入っていった。誰もいないと思われていた屋敷の中から日没と同時に現れた少女は僕を食堂へと誘い、何人座れるのかわからないくらい多くの椅子が設置されている長テーブルの中央の席を指示され、僕がそこに座ると、先ほどまで隣にいた少女が対面の席に座っていた。

 席に着くといつの間にか目の前には一口サイズの良くわからない料理が出されていた。誰もいないはずなのに不思議に思っていると、目の前に座っている少女がそれを二口で食べていたので、僕もそれに続いた。味は薄味だったのでよくわからなかったけれど、少しだけ物足りなさを感じて他にも何か食べたいと思ってしまった。

 視線を外している一瞬の間にスープが提供されていた。澄み切ったスープはさっぱりとした味わいと程よい温度で次の料理を期待させるものだった。夢中でスープを飲んでしまったのだけれど、視線を上げて少女を見ると嬉しそうにほほ笑んでいた。再び視線を落とすと、白身魚に黄金色のソースがかけれれている料理が提供されていた。その後もシャーベットを少量いただき、骨付き肉のグリルが出てきたのだけれど、牛とも羊とも豚とも違う触感と独特の臭いがしていたのだけれど、ソースをつけて食べると言葉に出来ないような旨味が口の中いっぱいに広がって鼻孔を抜けていった。

 そのあとにはデザートとコーヒーをいただいていたのだけれど、すべて美味しくいただくことが出来た。しかし、誰が配膳していたのか全く分からなかったのが気がかりだったし、どうして僕にこんなにもてなしてくれるのかわからないままだったけれど、再び少女に手を引かれると暖炉の前のソファーに座るように促された。

 僕はそれに従って座ると、僕の膝の上に少女が座って猫のように喉を鳴らして喜んでいるようだった。その様子を見て僕は思わず喉元を触ってみたのだけれど、少女はくすぐったそうにしていたのに嬉しそうな声を出していた。そのまま僕の手を抱きしめるように握ると、そのまま寝息を立ててスヤスヤと寝てしまった。

 僕も暖炉の火を見ているといつの間にか眠くなってしまい、ウトウトとしながら眠ってしまったようである。みさき達はいったい何をしているか気になっていたけれど、僕は食事の満足感と少女のぬくもりと暖炉で時々爆ぜる薪の音が心地よくて、考えることは早々に放棄してしまっていた。

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