1:職業は傭兵です。
読者の皆様、おはこんばんにちは!
Nakiです( ^ω^ )
別作品を書いていましたが、違う設定を思いついてしまったので書いてみました。
良ければこちらも是非!
1話:
ズドドドッ!
「相手はたった一人だぞ!何をやってる!?さっさと殺せ!」
ドカーンッ!
「隊長!魔術師団壊滅!第二次防衛ライン突破されました!間もなく最終防衛ラインと激突します!」
「クソッ!奴は化け物か!?」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「隊長!敵の魔力が尽きたようです!既に魔術での攻撃はなく、スキルのみで戦っていると思われます!」
「良し!ここが勝機だ!全軍一斉集中砲火!撃てぇぇぇぇ!」
ズドドドッ!ズドドドッ!
ズドドドッ!ズドドドッ!
ドカーンッ!
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「ここは何処だ」
気づいたら辺り一面、白い空間の中にいた。
「俺は集中砲火を喰らって死んだはずなんだがな?」
俺は自分の手・腕・胴体・足と順に見て触ったが、紛れもなく自分の身体だった。それにケガをしていない。
さっきまで帝国軍と戦っていたから傷だらけだったはずなのだ。転移魔法か?でも一体誰が?
《目覚めたようですね》
すると自分の後ろから女性の声が聞こえた。
気配を悟らせることなく私の背後を取るとは、この女...できる!
《そ、そんなに警戒しないでください。怖いですよ!》
いかんいかん。さっきまで戦っていたからつい...
「ここは何処だ?俺は帝国と戦い死んだと思ったんだが?」
《合っていますよ。死んだ瞬間、あなたの魂をこちらの世界に引っ張らせてもらいました》
「こちらの世界?それは俺がいた世界とは別の世界といったことか?」
《そうです。意外と驚かないのですね...》
魔法と言うものが存在する世界で生きていたからな。別の世界があっても不思議じゃない。
「それで?何故、俺を呼んだ?」
死んだ瞬間、俺を呼んだということは見ていたということだから俺でなければならなかったということだろう。
《あなたに私が管理している世界へ転生していただきたいのです》
世界を管理...ということはこの女性は神ということなのか?まぁ誰でもいいか。
「依頼か...それで俺は何をすればいいんだ?」
《何も》
「なにも?」
《はい。私が望むのは、あなたという存在を世界へ送り込むこと。それだけです。強いて言うなら第二の人生を楽しんでください》
ふむ。それでこの女性の気が済むのであればいいか。第二の人生...それも悪くない。
「だが、断る!」
《なっ!?何故ですか?第二の人生を送れるのですよ!?》
女性が狼狽している。断られるとは夢にも思っていなかったのだろう。
俺は戦いに明け暮れていた。そんなある日、帝国が裏切り敵対してきた。
逃げるのに疲れた俺は最後の意地を見せるため、敵陣へと攻め入った。魔力も尽きた時の攻撃でやられてしまったけど。
そこで記憶は終わっている。別に裏切り自体はよくあることだ。怒りはあるが恨みはない。
撃っていいのは撃たれる覚悟があるやつだけだ。それが今回、俺の番だったというだけのことだ。
「俺は傭兵だ。簡単に人を信じることなどできない。理由をきちんと説明してほしい。納得できれば依頼を受けよう」
《...私が管理している世界で、どうしても助けてあげたい人がいるんです》
「助けたい人?それなら、あなた自身が助ければいいのでは?」
わざわざ俺を使う必要など無いと思うんだが。
《管理者が直接世界に関与することは禁じられているのです》
禁じられている...か。
「なら俺はその世界に行き、あなたが助けたいと思っている人を守ればいいのか?」
《いえ、その必要はありません》
必要がない?それじゃあ助けることなどできないぞ。この管理者は何をさせたいんだ?
《なぜなら、あなた自身がその者になるからです》
「転生先が...ということか...詳細を求む」
《その世界に一人の男の子が生まれます。ですが、その男の子は幼くして非業の死を迎えます。その死が巡り巡って世界に破滅を齎すことになるのです》
「予言...か?」
《そのようなものです》
「当たる確率は?」
《100%です》
未来を予言する魔法なんてものもあったが、確率は10%未満だった。それが100%とはな。
「世界の破滅とは?世界そのものが無くなるということか?」
《いえ、世界はあり続けます。ですが、その世界に住む人間がいなくなるということです》
人類滅亡...ということか。重いな...重すぎる。一介の傭兵に頼むことじゃなくないか?
「俺が転生することで、それを防ぐことが出来るという事か?」
《そうです。あなたが前世で得た知識・経験があれば、そんな未来を防ぐことができるんです》
ふむ。何故、俺なのかという疑問はあるが、ある程度納得するとしよう。だが、一つ腑に落ちないことがある。
それだけは答えてもらうことにするとしよう。
「あなたは俺という存在を世界へと送り込むだけ、そして、俺に何もしなくていいと言っていた。助けて欲しいと言う先ほどの回答と矛盾しているが?」
《あなたという存在を世界に送り込みますが、あなたの記憶や意識は受け継がれることなく消えます》
「それでどうやって助けるというんだ?記憶や意識がないのであれば、知識や経験も消える。ここで話したこともなくなるということだよな?」
それでは守るも何もない。あっけなく死ぬだけだと思うが。
《記憶や意識は消えます。ですが、あなたが前世で得た知識や経験は魂となって、その男の子に刻み込まれます》
ふむ。要するに、俺は転生するが、転生先は俺であって俺でない人間。俺の魂を持つ別の人間になるということか。
そして俺としての記憶や意識がないから、転生しても何もする必要がない...ということか。
何もする必要がないというよりも、することができない、というのが正しいという訳だ。
「理解した。その話、受けよう」
《本当ですか!?よかっ「ただし!」...なんでしょう?》
「一つ条件がある」
《条件?なんでしょうか?》
「1日でいい。俺の記憶と意識をそのままにして転生させてもらえないだろうか?」
《何故ですか?》
「あなたは世界を救うため、俺をその世界に転生させようとしている。最悪の未来を回避するために。それに保険を掛けておきたい」
《保険...ですか?》
「そうだ。あなたは俺の知識と経験が生きるといった。ということは転生先の世界は、俺がいた世界と同じく魔法がある世界で、似ている部分が多いのではないですか?」
《そうです。同じように魔法が発展している世界です。多少の差異はあるものの考え方もほぼ同じです》
「やはり。であれば、新たな人生の自分に一つ贈り物をしたいんだ」
《贈り物...ですか?》
管理者が不可思議な顔をしている。当然だな。自分から自分への贈り物なんて想像できないだろう。一体何を送るのかってね。
「魔法に対して同じ考えなのであれば、魔力についても同じだろう。それなら魔力を増やすための方法だも一緒のはず。だけどその方法は転生先も知られていない可能性がある。どうだ?」
俺は魔力が人一倍少なかった。それによってかなり苦労した。魔力の問題で就ける仕事も限られ、傭兵となった。まぁ、そのおかげで魔力を効率的に使うための魔力制御は人一倍うまくなったし、傭兵人生も楽しかったから後悔はしていない。けど、魔力が多ければ、別の人生もあったかもしれない。そう思ったときもあった。
《そうですね。その方法は知られていません...なるほど、その方法を知らせるために1日の猶予が欲しい。そういうことですね?》
「そうだ。魔力は多いに越したことはない。それに魔力を増やせる時期は決まっている。その時期を無駄にさせないためにも必要な事なんだ」
《わかりました。保険は大事ですからね。しかし、1分いえ、1秒でも記憶や意識を残すことはできません。ですが、魂を刻むときに夢を見せることであれば一度限りですが、できます》
生まれるときに魂を刻むのではなく、夢を見せるその日に魂を刻むということか。そんなことができるのが管理者ということか。
「わかった、それでいい。夢の内容はこちらで決めることは出来るのか?」
《可能ですが、複雑な事は無理です。できるのは魂を刻む日、それと簡単な事でなければ》
「なら刻む日は ― ― ― ―内容は― ― ― ― ― ―これでどうだ?」
《それなら大丈夫です》
「よろしく頼む。それじゃあ依頼を受けよう」
《ありがとうございます。それでは早速...あなたの二度目の人生に幸あれ》
それが俺として聞いた最後の言葉となった。
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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