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35 グラビティデイズ


 私たちは、檀上から飛び出した。


 私の光魔法を受けて殆どの人間がたじろいでいたが、謁見の間のちょうど中間地点まで来たところで、幾人かの勇敢な兵士がその道を塞ごうとしてくる。



「姫様! なりませぬ!」


(くっ……ロキを引っ張ってまで逃げるのは無理ですか……!)



 ここまで来ても、ディアの姿が恐ろしく遠い。


 これなら、初めからロキを手放していれば或いは抜けられていたのかもしれないが、もう後悔しても遅い。今からでも、全力で逃げる選択をする。


 私は彼を突き飛ばして右に90度曲がり、謁見の間からテラスに抜ける通用扉へと方向転換する。


「うぉ、そっちか!」


 目は押さえているものの、ロキは追いかけて来る。

 捨て駒にするつもりだったが、その足取りはしっかりと私についてきている。ならば逆に、心強い。


「テラスから下に降りられるわ!

 私について来て!」

「オヴァ!」


 王宮内の通路を二人で走り、テラスへめがけて走っていく。

 


「ここから降りられるから、私が先に降りるわ!」


 そう言って、テラスの手すりをまたいで外へ向けて足を降ろし、中段になっているところへ足掛けた時。



 ロキは、()()()()()()()()



タタッ……!



 テラスから直接飛び降りたロキは、私が足を掛けていた中段を蹴り返し、下にまで飛び降りてしまい、そのまま下で動かなくなっている、なんて無茶を!



「大丈夫なんですか!?」

「ああ。先に降りると言われたら、その先を行くのがオレの生き様ってワケだ。

 んで、どっちに逃げるんだ? やっぱ姫さんが先に行ってくれないと困る、みたいな?」


「あっちです!

 この先に壁が崩れた場所がありますから、そこから外へ飛びます!」


 私は先導して城壁へと走り出す。

 と言っても、もう目の前だ。つけた助走のまま、今度は先に飛び降りる!



「やあーっ!」


カランッ!


 オレンジ色の屋根瓦が小気味いい音を鳴らす。

 だが、ロキが降りて来ない。


「どうしたの!?」

「いや、なんかアッチからすごい形相で走って来てるぞ……?」


「ぼっ僕のお嫁さんを返せええええええええええええええ!!!!!!」



 その声が聞こえるや否や二、三歩下がったロキは徐に飛び降りて来た。



ガワンッ……


 大きな音を立て、屋根が大きく(たわ)む。


(すごいわ、ほとんど助走を付けずに飛んだ……?)



「オイオイ、今30センチは凹んだぜ……。軽く死ぬかと思ったわ。

 しかしこれは使えるな。姫さん、ちょっと来い」


 ロキはそういうといきなり私の両肩をつかんで、後ろに回り込んでくる。

 背中を取られて正面の城壁を見上げれば、ギッシュマン王子がそこにいた。



「オオ、王子様じゃねえか!?

 ほらほら、早く捕まえないと本当にオレが姫さんを貰っちまうぜ~?」


 彼は王子を挑発しながら、私の身体を煽情的に撫でまわして……()()()()()()()をした。



(まただ。強引なように見えるが、彼はその中に優しさを備えている……)



「ぐぬぬぬ……フェリシアたん、今、助けに行くからね!?」


 王子はそう言うと後ろに下がって行って見えなくなる。まさか。



「……タタタタタタッ! トォーー!!」



グワラワアアンッ!



 子豚が飛んで。

 目の前で屋根に埋まった。



「ぐわああああああああああああ!?!?」


「アァーハッハッハッハッ……!!」


「出せ、ここから出せええええええ!!」


「ワハハハ、ナイスファイト! いや、もう最高だぜ。コイツは最高の男だと思わないか、姫さんよぉ?

 今からでもコイツとヨリを戻していいんじゃねーの?」


「バカ言わないで! 誰がこんな男と……ぷぷっ」


 身体の半分以上が埋まってしまった王子を見て、少しおかしくて笑ってしまった。

 私は彼に別れを告げる。



「ごめんなさい……でも結婚相手は、やっぱり自分の力で見つけるべきだと思うの。

 こんなことをして、本当にごめんなさい」


「フェリシアたん……。

 良いよ、別にボクも君とは釣り合うとは正直全然思っていなかったから……こんなに可愛い子が僕のお嫁さんな訳がないって、夢が見られてボクは幸せだったから……」



「泣ける話じゃねえか。まぁ、姫さんはこのままオレが貰っていくんだけどな?

 お前はちゃんと痩せろよ。そうすりゃ、女なんて向こうから寄ってくるんだからよ!」


「……わかったよ……ボクの花嫁泥棒さん……」


 それで話は終わった。

 私達は王子を見捨てて、逃亡を再開する。



「このまま、屋根伝いに逃げます。

 私のメイドが街に馬車を走らせている筈なので、あの大街道のどこかで合流します!」


「大街道……? なら、あの塔に行くぞ。真ん中にぽつんと立ってるアレだ」

「魔法防衛装置ですか? あそこは常に警備の兵が居ますから……」


「とにかく行くぞ!」



 彼の迷いのない言葉に、私たちは兎にも角にも、王国内を走り出すことにした……。


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異世界エクストリームエアセッション!

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