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27 悪巧み


永久の旅路 水形の月20つ

Kirltoende

Lord of Ephemeral

チェスナット王国三等地 ユーの家


「失礼いたします……」


「おや、おぬしは……姫様の側にいたおっぱいメイドではないかえ?」

「失礼ですが、どなたですか?」


 主人の家に、冗談みたいな胸板をした女がやってきた。この女はこちらのことを知らないが、生憎と自分は知っている。まぁ、名前は一度しか名乗ってなかった気がするので忘れてしまったが。


「わしはキルトエンデじゃ。しかしそんなことはどうでもよかろう。

 ほれ、そこにおる男に話があるのじゃろ?」


 そう言ってロキの奴に視線を譲る。

 ロキは一昨日からずっと、何やら絵を描いていた。


「おい。ロキ、おぬしに客が来たぞ。一体何をやっておる?」

「ビラ作りだよ。オレのファンキーでクゥルなところを世間に知らしめるのは、これが一番良いからな。まぁ手書きで作り出したことは失敗だったけどよ。今からでも印刷技術を探すべきだったと後悔してる所だぜ……」


 ロキは何やら大袈裟に誇張された文字(アルファベット)をそのままイラストにして、手書きの紙をたくさん作りだしていた。非常に読みにくいが、その多くはデカデカと「Loqi」などと描かれているようだ。



「お、姫さんのメイドさんじゃねえの。

 今日はユーたん、仕事に行っちまったぜ?」

「あ、いえ……ロキさんでも構いません。この前のお話の続きをしようかと。

 これから二人きりで、お時間を頂けますか?」


「キルトっち、やべーわ。これ間違いなくデートのお誘いだわ。

 断らないとオレ、後で死ぬかもしれないんだが?」


 まったくこやつの甲斐性無しときたら底なしだと呆れるばかりだが、これはただのパフォーマンスなので、ここは()()()()()()()()()()()()()



「それはマズイのう……おかしな真似をせぬよう、わしが見ておかねばならんかもしれんではないか?」


「え、子連れのデートか……いやでもワンチャンあるんじゃね?」

「おぬし、それで良いのか……わしは見ておるが、止めはせんぞ」


「ユーたんも酷いよな。見ろよ、あのおっぱいをよ。なあ、ちょっとぐらいは見逃してくれよ」

「おぬしがそこのおっぱいに負けたら終わりじゃろうな。わしはちゃんと報告するぞ?」



「あの、内密の話があるのでそちらの方は……」


「……」


「メイドさん、幼女の言葉を聞いてたか?

 オレは監視の目がなきゃ、お前と話せない立場なんだよ。どうするんだ?」


「わしは見ての通りの子供じゃ。ユーのやつにも真名を預けておる。心配するでない」


「……」



「……分かりました。お二人とも主人のことをよく慕っているのですね?」


「ああ、そうだぜ。オレはユーたんに頭が上がらないダメな男なんだからな?」

「わしはこやつが粗相をせぬよう見守るよう言われてるのじゃ」

 


「……そうですか……分かりました。

 ですが、くれぐれも他の人には話さないでください……」



 どうやら()()()()()()()()()()()。メイドは話し始める。



「この前のお話の場を設けてから、私達も計画を考え直しました。やはり当日は馬車を手配して、それで脱出しようかと。周辺の警備は出来るだけ緩むように働きかけるつもりです。城下では、人を轢く可能性も考慮してあります……」


「それが姫さんの覚悟、ってヤツか?」


「はい。ロキさんには、式の会場で踊っていただいて、後は私達の方でなんとかやろうと思います。

 それで、お願いできませんでしょうか……?」



「わかったぜ」

「おぬし、良いのか?」

「ああ。それぐらいならオレでも協力は出来るさ。任せとけ。

 とびっきりのダンスパーティをしてやるぜ、このロキの名前にかけてな!」


「あっ、ありがとうございます……!」


 ロキのやつは嘘は言ってない。だがロキの言うダンスパーティは、このメイドも、自分が考えているモノよりもふざけた内容に決まっているのだから、タチの悪い詐欺師と言わざるを得ない。キルトエンデは呆れつつも、自らの役割を果たす。



「話はまとまったようじゃの。当日、やる時は合図を出すのじゃ。

 息が合っとらんと成功するものも成功せんじゃろうからな?」


「わかりました……!」



 そうして、ロキとおっぱいメイドは幾つかの手の合図(ハンドサイン)を取り決めて、それでメイドは満足したのか、帰って行った。

 ここまでアッサリ話が進むとは驚いたものだ。



「ロキ……おぬし、相当のワルじゃの」

「へっ、キルトもナイス演技だったぜ。将来は女優になれるぜ?」


「わしに将来なんてもんは存在せんわい……。

 さて、準備をせねばなるまい。わしも下見ぐらいはしておくからの」


「そーだな。オレもバックパックは重たいから、逃げる先に持って行かなきゃならねーし。ビラ作りも飽きて来たしな。んじゃ、頼りにしてるぜ?」


「わしに任せておくのじゃ!」





 ロキと別れて、キルトエンデは街の中央にある、魔法防衛装置の管制塔を見に行くことにした。


 街の中心に配置されたその魔法塔は上空から飛来するあらゆるものを寄せ付けないドーム型の天井を魔術的結界で形成しているが、これからの計画には支障のあるものだ。こいつの機能を停止させておく必要がある。


 チェスナットの街中を一人で歩いていき、塔のすぐそばまでやってきた時、キルトエンデは知った顔に遭遇することになった。



「あ、キルトエンデさん。こんなところでお散歩ですか?」

「おぬしは……弟のカイじゃったかの?」

「そうだね。今は一人なの?」

「ああ、ちょっとそこまで用があってな。ほれ、そこの塔じゃよ」


 そう言って高さ10メートルはあろうかという塔を見上げる。白く塗りたくられた塔はかなり肉厚な形をしていて、大きな魔力源になっているのを肌で感じることが出来る。


()()()……」


「あれは王国の対空防衛装置の心臓部だからね。曲がりなりにも軍事施設だから、キルトエンデさんじゃ用事があっても追い払われると思うよ」


「そうなのか? じゃが心配せんで良いぞ。わしを子供と侮っておるだろう?」



「……僕についてきて。見学くらいなら出来るから」


 カイはそう言うと、先に塔に向かってしまった。


「わしはこっそり見学するつもりじゃったんじゃがの……」



 魔法塔の下には4人の兵士が駐屯しており、代わる代わるでその警備をしているようだったが、カイのやつが話をして、頼み込んでいるようだった。



「……じゃあ、僕たちは上まで登って、視察してるから。

 特別手当は期待しておいてよ」


「ハッ! いつもお疲れ様です!」


「それじゃあ行こうか、キルトエンデさん」

「おぬし、どんな魔法を使ったんじゃ……?」



 それに対しては特に答えはなく、わしらは塔の内部へと踏み入る。真ん中には魔石がちりばめられた柱が上まで通っており、塔の内周にはらせん状に階段があり、それで上まで登れるようになっていた。


「これはすごいの……」

「さあ、上まで行こうか?」


 わしらは塔の中をぐるぐると回り始める。


「魔石もここまでの規模になると見ごたえがあるのう。王国を覆い尽くす範囲魔法か……」


「これはドラゴンのブレスまで防げるらしいけど、ここ数百年は来てないみたいだから、実際どうかは誰も分からないんだけどね。僕は安全を保障されてる、っていう名目のために建ってると思ってるよ」


「いや、これは誇張なく空からやってくるあらゆるものを弾けるぞ。どれ、一つ試してやろうか?」

「……騒ぎになるからやめてよ……」


 やがて塔の上まで来て外に出る扉をくぐると、塔の外周をぐるりと周る見晴らしの良い通路に出てきた。通路沿いに回っていくと、チェスナットのあらゆる場所を見通すことが出来るようになっているようだ。

 ()()()()()()()()()()


「壮観じゃのぅ。ここから飛んだら気持ち良さそうだわい」

「それも騒ぎになるからやめてよ……?」


「軽い冗談じゃ」


「……」


「……ねえ、キルトエンデさん。一体何をするつもりなの?」


 カイのやつは何か察してはおるようだが、こちらの真意までは見抜けていないようだった。

 何をやるかと言われれば、先ほど言った()()()()()()()()()つもりなのだから。



「そうじゃな……わしは未来ある若者を応援しようと思うておる。

 おぬしの姉に世話になっておいてなんじゃが……近い内に出て行こうと思っておるのじゃよ」


「そうなんだ……」

「わしも、ロキのヤツも、何物にも縛られてはおらん。おぬしの姉は優しいから、わしらを無理やり引き留めることはせんじゃろう。受けた恩ぐらいは返したかったんじゃがの、まぁいつでも連絡は出来るし、永遠の別れでは無いから安心せい」


「……そっか。行くんだね?」

「……」



 コクリと頷き、話はそれきりになった。

 魔法塔の機能も調べて分かった。これは当日止めればよいモノだ。今日は特に細工も必要ない。


 下見を終えたキルトエンデは、ただ静かに帰ることにした……。


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