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二日目の世界地図

 晴れ渡った青空の下春の暖かな陽気とは裏腹に、一人だけ浮かない顔をしていた。それもそのはず、今朝粗相をしてしまったのだから。飛鳥は登校中ずっとうつむいて歩いていた。

「そんな落ち込まないでよ。ね?元気だそ!」

 真由が励ましてもむしろ、朝の失敗を思い出させるだけで逆効果だった。とはいえ、一日はまだ始まったばかり。学校につき次第にいつもの調子を取り戻し、お昼になるころにはいつも通りふるまえるようにまで回復していた。


「そういえば飛鳥ってなんで中性的な恰好しかしないの?」

 学食を食べながら真由がおもむろに聞いた。

「うーん。家、片親で母親に育てられたこともあってあんまり男らしさみたいなところは教えられなかったからかな?あとは単純にサイズ的な問題で。」

「え?片親だったなんて初めて聞いたよ。でもそっか。お父さんいなかったならなんか飛鳥が女の子っぽいのもなんかわかるかも。」

「小さいころは割と片親で苦労したよー。まあ、もう過ぎたことだけどね。」

「苦労したんだね…。よしよし」

 思いがけない過去の告白に、真由は飛鳥の頭をなでていた。

「ちょっと。こんな人が多いところでそんな恥ずかしいことしないでよ。」

「ん?人がいなければいいのかな?それに付き合ってるんだからこれくらい普通だよ~。」

「い、いや、そういうわけじゃ…。ないわけでもないっていうか…。こういうのは彼氏が彼女にするものじゃん!」

「ふふふ。なら飛鳥も私の頭なでなでしてよ。はい。」

 頭を飛鳥に差し出してなでなでを待っている。

「う、うん、なでなで。」

 真由の積極的な態度に戸惑いつつなでるとまわりの視線が集まっていることに気が付き、意識すればするほど飛鳥は顔を赤らめてしまった。

「あれ?なんでそんなに赤くしているの?」

 ふふふと含み笑いを漏らしそうに飛鳥をいじるとまた恥ずかしそうにする飛鳥だった。

 すっかりといつもの調子で真由にいじられる飛鳥は知らず知らずのうちに元気を取り戻し真由と帰宅したのだった。


 その日の夜。真由が自分の布団を敷いていると、飛鳥は床で寝ようと座布団とタオルケットを準備しようとしていた。

「あのさ飛鳥、今朝その...粗相しちゃったじゃない?で、それはいいんだけど、飛鳥の寝る布団ないだろうから今夜は私の布団で一緒に寝ない?」

 真由が飛鳥を極力傷つけないように問いかける。

「いいの?」

 少し恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに飛鳥が聞き返した。

「もちろんよ。私たち付き合ってるんだもの。ほらおいで。」

 ばふっと掛布団を持ち上げると飛鳥が入ってこれるように隙間を作った。すかさず飛鳥がその隙間に潜り込む。その様子は、仲の良い姉に妹が甘えているかのようだった。むろん、ここでの妹は飛鳥のほうである。真由が膝を少し折り曲げ、飛鳥に腕枕をする体勢になっていたことで、自然と飛鳥はそこに収まる形になっていた。

「なんだか、ちょっとドキドキするね。」

 真由が飛鳥にささやく。

 飛鳥は勢いよく潜り込むまではよかったが、真由の豊満な胸がまじかに迫り男としての葛藤の中にいたため真由の言葉が耳まで届かなかった。

 顔の見えない真由はもう寝てしまったのかと勘違いしたのか、少し不機嫌そうな顔を見せたが何かを思い出したかのような顔に変わった。すると、真由も自然と飛鳥に微笑みながら瞼を閉じたのだった。その後の飛鳥は、真由の匂いになつかしさを覚えると不思議と邪な気持ちはどこかへ消えていった。そして、次第に瞼が重くなり、十分もしないうちにすやすやと寝息を立てていた。


 雀の声で、朝がやってきたことを告げた。天気も良いことがうかがえる。部屋に朝日が差し込み、飛鳥を起こした。気分のいい朝は目が覚め、脳が起きるまでのほんのわずかな時間で終わりを迎えた。昨日と同じ不快感が飛鳥の下半身を襲ったのだった。しかし何かの間違えもあるかもしれないという、一縷の望みにかけて、ズボンをもぞもぞと確認した。結果は言うまでもなく、おねしょであった。それに飛鳥が気が付いた瞬間声がした。

「おはよ。何もぞもぞ動いてるの...って、まさか!」

 真由も同じ不快感に襲われ緊急事態に脳が目を覚ます。次の瞬間には、真由は飛び起きていた。立って真由が下半身を確認すると、確かにパジャマのズボンにシミが付いていた。しかし、それはとても不自然な模様だった。なぜなら、本来なら股間から広がるようにできる模様のはずが、どうやら違うらしいからだ。真由のズボンは右太もものあたりだけが濡れていた。そしてすべてを察した真由は、恐る恐る飛鳥の下半身に目を向けた。

「今日もしちゃったんだね。」

 真由が飛鳥にそういった。

「…。」

 言葉は発さずにうなずくだけの飛鳥。

「昨日も言ったけど、その…新居のストレスじゃないかな?だからそんな落ち込まないで。ね?」

 飛鳥の落ち込み具合に真由がフォローを入れた。

「とりあえず、シャワー浴びようか?学校まで時間あまりないし、一緒に浴びちゃおっか。」

 落ち込んだ飛鳥の手を引いて、二人は風呂場へと消えていった。


 その後は二人で学校に行き、何のトラブルもなく学校を終えると、飛鳥はアルバイトに出かけて行った。真由はそれを確認すると、家とは反対方面へと向かっていった。

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