表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻りの魔法銃士(マジックガンナー) 出稼ぎオッサン異世界記  作者: 長野文三郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/60

9-7

かなり時間が空いてしまいましたが更新しました!

 突如として響き渡る戦闘音に首をすくめてしまった。

どうやら俺たちは戦場の一隅に転移してきてしまったようだ。

見れば、京王井の頭線・東大駒場前駅を出城にした人々が押し寄せる魔物に対峙していた。

防衛する人間は高い位置にあるホームで防備を固め、下から迫る魔物に攻撃を仕掛けている最中だ。


「寛二、ここはまずい。すぐに身を隠すのじゃ」


 魔物の群れはまだ俺たちの存在に気付いていないけど、防壁も何もない場所でやつらを迎え撃つ気はない。

いくらエルナのパワーが桁外れだとしても、囲まれてしまえばなす術もないのだ。

少し慌てながら目についた公衆トイレの陰に身を隠した。


「とりあえずトイレの上に避難しよう」

「任せるのじゃ」


 エルナは後ろから俺を抱えて、軽々とトイレの上へと放り投げた。

ちょっとバランスを崩したけど、無様じゃない程度に着地を成功させる。

すぐに手を伸ばしてエルナを引っ張り上げた。


「そっちの壁はなんじゃ?」


 トイレの後ろにはフェンス付きの高いコンクリートの壁があった。


「さあ? どうしてだ」

「武器を調達する。セイッ!」


 強烈な前蹴りでコンクリートが崩れると、エルナは手ごろな大きさのものを拾ってトイレの屋根に並べだすではないか。


「どうする気だよ?」

「投げつけるのじゃ」


 飛び道具は戦の基本か。

戦国時代には弓矢と同じように石ころは有効な武器だったと聞いたことがある。

しかも、エルナのパワーならコンクリートの塊が恐ろしい迫撃砲に早変わりだ。


「よし、魔物が密集しているところから狙っていくぞ」

「おう!」


 俺とエルナは集中砲火で確実に魔物を減らすことにした。


 予想だにしていなかった背後からの攻撃をくらい、憎悪の雄叫びを魔物たちがあげている。

近くにいた群は牙をむきながら公衆トイレに接近してきたが、装弾数が19発×2丁になった俺は弾幕を張って敵を寄せ付けなかった。


「エルナ、リロードの4秒間は一人で持ちこたえてくれ」

「任せるのじゃ!」


 うん、その勢いや良し。

投球のパワーも申し分ない。

だけど……当たってなくね? 

エルナが投げるコンクリートは、虚しく道路やフェンスを破壊するだけで、なかなか魔物に命中しなかった。


「え~い、ちょこまかと動きおってからにっ!」


 いや、止まっている的も外しているぞ。

こいつ、絶望的にピッチングセンスがない!?


「遠くの敵はいいから、近くに来たのだけを狙えよ。近距離ならなんとかなるだろう?」

「バカにするでない! これくらい目をつぶっていても当てられるわっ!」


 それは誰だろうと無理だって。

さすがに至近距離の標的を外すことはなく、エレナは直近に迫る魔物の顔面にコンクリートの塊を投げつけて撃退した。

それでも心臓が破裂しそうに緊張したよ。

ものすごく下手な人がやっているシューティングゲームを見せられている気分だった。

戦闘において1秒というのは、気が遠くなるくらい長い隙である。

早いところレベルアップして少しでもリロードの時間を短くしなければならないな。


 もどかしい4秒間が過ぎて俺のリロードも完了し、反撃の狼煙のろしが上がった。

俺の再攻撃が始まるころには駅を守る人々もこちらの存在に気が付き、有効な挟撃ができるようになっていた。

魔物は次々とその数を減らし、人間は勢いづいていく。


「反町っ!」


 向こうのプラットフォームで神大が俺に呼びかける声が聞こえた。

クールな俺は軽く手を振るだけ。

だって男同士でイチャイチャしていたら恥ずかしいだろ。

誤解されても困っちゃうし……。


 あれ、でもアイツがここにいて大丈夫なのか? 

神大のスキル『覇王』は半径50メートル以内にいる者のスキルを封じることができるスキルだ。

そんな奴が戦闘に加わっていたら他の人のスキルが発動しなくなってしまうじゃないか。

だけど、俺のいる場所だって神大のところから50メートルも離れていないのに、『マジックガンナー』は問題なく発動している。

エルナだって必要以上に力持ちのままだ。

ということはアイツの封印はオン―オフが切り替え可能なのだろうか。

でも、よく観察してみると神大の周囲数メートルだけ人がいないような……。

いつだって葛城ちゃんみたいな戦国美少女を近くに侍らせているような、うらやまけしからん神大にしてはおかしなことだ。

ひょっとすると『覇王』の力が及ぶ有効半径を調節しているだけかもしれない。


 覇王のスキルはダブルだから、封印の他に格闘系のスキルを有すると聞いていたが、俺はその実力を目の当たりにしているところだ。

いや、これはすさまじ過ぎるだろう。

後退する魔物を追撃するために人々は駅から降りてきたけど、その先頭に立っていたのが神大だった。

奴の手刀が魔物の外皮を貫き、蹴りが頭部を爆散させていく。

血まみれの修羅だか夜叉をみているようで、俺もエルナもドン引きだ。

特に戦っているときの目つきがイっちゃってて怖い。

転移前にせっかくトリプルハンバーガーを買ってきたんだけど、何となく食欲が失せてしまった。

いや、これまで見てきた中でも最凶の戦士だと思う。


「とりあえず……シェイクだけでも飲もうかな……」


 血まみれの神大をみて食欲は減退したけど、季節限定シェイクを飲まないという選択肢は小デブにはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 再開まってました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ