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バスでJKの太ももを舐めていたら

 俺は妖精だ。

 大きさは10センチ、重さはりんご1つ分。

 人間の目には見えない。

 俺は人間が大好きだ。

 特に、女子高生が大好きだ。

 日課は女子高生の太ももによじ登ること。

 りんごの重さの生き物が太ももにぶら下がったら重たいだろうと思うかもしれないが、人間は俺の重さ感じることができない。

 

 今日はどんな子の足を登山しようか。

 そんなことを考えながら駅を飛び回る。

 可愛い子発見。あれは確かこのあたりで有名な私立高校の制服だ。

 ぱたぱたと羽を動かし(もっとも、この羽音は俺にしか聞こえていないが)その子の顔の横まで飛んだ。

 髪型はボブと言うのだろうか、耳の下のあたりで切りそろえられている。真っ黒で、真っ直ぐな髪だ。

 肌の色は白く、唇には赤みが差している。大きな黒い瞳と長いまつ毛はまるで人形のようだ。

 いい匂いがしそうだ。そう思って思い切り息を吸い込んだが、残念なことになんの匂いもしなかった。

 今日はこの子にくっつこう。名前はとりあえずボブ子。ボブカットだから、ボブ子。

 ボブ子は周囲より一テンポ遅い足取りで、駅の中を歩いていく。バスターミナルに向かっているようだ。

 俺はボブ子のカバンにしがみついた。登山は最後のお楽しみなのだ。

 駅は今日も混雑していた。人間たちがせわしなく動き回っている。あの人混みの中を歩かないといけないとしたら。考えただけでゾッとする。

 ボブ子はなれた足取りでバスターミナルにたどり着き、停車していたバスに乗った。

 俺はカバンとともに網棚に投げ込まれる。ずいぶん教科書が入っているのだろう、おもそうなカバンだったが、ボブ子は意外に力持ちなようだ。軽々とカバンを持ち上げた。

 バスが発車する。

 ボブ子はどんな子なんだろう。網棚の上からボブ子の顔を観察する。先程から一切表情を変えないため、妄想が捗る。

 今どき髪を染めていないなんて、おとなしくて真面目な子なのかもしれない。

 ボブ子の元に飛んでいき、制服の胸元に止まる。

 しかし俺は胸になど興味がない。

 ゆっくりとボブ子の制服の上を這い回り、太ももを目指す。

 飛んでいけばすぐなのだが、歩いてたどり着くことに意味がある。

 なぜわざわざバスの中で登山を始めるのか。それはロマンだ。

 バスの中で太ももをもてあそばれる。

 それはまるで、痴漢のようではないか。

 人間ならばお縄になるところだが、幸い俺は妖精なのだ。

 思う存分痴漢プレイができる。

 スカートのプリーツを楽しみながら乗り越え、ついに太ももにたどり着く。

 そっとスカートの内側に入り込み、手を伸ばした。

 ああ、可愛いボブ子の太もも。

 なんて冷たい……冷たい?

 そんな疑問をかき消すように。

 

 俺の体は突然、すさまじい衝撃とともに宙を舞った。


 不意のことにうまく羽ばたくことができずに、回転しながら窓ガラスに叩きつけられる。

 叩きつけられたのは俺ばかりではなかった。

 バスの乗客という乗客が、シャッフルされたかのように逆さまや横向きになって窓に突っ込んでいた。

 中には頭部をガラスにめり込ませている乗客もいる。

 何が起こったのか。

 見回すと、窓越しに一面のアスファルト。

 窓が地面に面しているということは、このバスは横倒しになっている。

 ボブ子は大丈夫だろうか。

 俺は車内の状況を確かめながら、ボブ子を探した。


 足が生えていた。

 白い足が。

 先程まで登山していたプリーツスカートが。

 ローファーは脱げている。上半身は見えない。

 比較的前の方に立っていたボブ子は、頭からバスのフロントガラスに突っ込んでいた。

 その足はピクリとも動かない。


 「ボブ子ー!!」


 俺は思わず叫んだ。

 もちろんこの叫びなんて誰にも聞こえないけれど。

 叫ばずにはいられなかった。 

 だってあんまりじゃないか。

 ボブ子はただ、通学していただけなのに。

 バスに乗っただけなのに。

 こんな大事故に巻き込まれて。

 まだ君の太ももを堪能してないよ、早すぎるよ。


 俺は涙を流し、ボブ子の元に飛んでいった。


 「ボブ子、なんてかわいそうに」

 

 ガラスから突き出したボブ子の足につぶやいたその時。


 「変なあだなつけないでもらえる?」


 鈴を転がしたような声がした。


 おれはぎょっとして硬直した。


 ボブ子が割れたガラスから顔を出して、俺をまっすぐ見た。

 

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