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レムリアの大地 ~三十男と日ノ本娘~   作者: 大本営
第一章「アクイレイアへの道」
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第6話  「冒険者の街」

 冒険者の街。

 アクイレイアのような大都市にはやや不釣り合い異名だが、かかる事態になったのはアクイレイアを統治するロンデニア王国の政策に原因があった。

 ロンデニア王国は辺境諸都市の治安と物流の安定を冒険者に一任していた。辺境諸都市如きに多額の税金を投入したくないという思いが生んだ方針は、良くいえば民間の活用、悪くいえば政策の丸投げだった。

 当初冒険者達は討伐報奨金を得やすい辺境都市に拠点を置いていた。王国の目論見通りに事が進むかに見えたが、次第に冒険者達は拠点を移していく。

 冒険者達が拠点を移した先はアクイレイアだったのだ。アクイレイアはポストゥミア街道によって辺境諸都市と繋がる戦略上の要所にあり、同時に広い港湾にも恵まれた物流の拠点だった。それはつまり内陸部へ向かう隊商の護衛依頼の多くが、アクイレイアから出されていることを意味した。他者に先んじて依頼を得るためアクイレイアに拠点を移すのは道理に合うのだ。

 しかし冒険者が拠点を移した理由はそれだけではない。

 国が支払う討伐報奨金が商人が支払う報酬と比較して極端に大きくなかったのだ。

 討伐報奨金は塩税で賄っていた。塩税が財源として申し分ないのは、塩が生活必需品であるため安定的な税収を得るには最も適している。絶え間なく襲撃を繰り返す魔物襲撃への対策資金として、塩に着目したロンデニア王国の判断は正しい。いや、正しすぎたのが問題なのだ。塩は生命活動にとって必要不可欠であり高額な税を課せば住民の不満が高まる。

 税率が低くければ住民の不満は抑えられるが討伐報奨金が少額すぎて冒険者のやる気は起きず、税率が高ければ冒険者は嬉々して魔物討伐に向かうだろうが、住民の不満は暴動へと繋がっていく。

 塩は極めてデリケートな商品なのだ。

 ロンデニア王国は国家の基盤を傾けてまで辺境諸都市を保護する意思に欠けていた。結果、塩税は比較的穏やかな額となり討伐報奨金は制度導入時に期待されたほどの高額にならなかった。一方ロンデニア王国第二の都市と呼ばれるアクイレイアの商人達は身銭を切る覚悟があった。

 その差である。

 護衛の報酬は討伐報奨金を大きく上回ほど高額ではないが、護衛の方が安全で安定した仕事だと冒険者達の多くは認識していた。


 国家と商人。

 治安と物流。

 需要と供給。


 隣り合わせの事実はどちらが正しいというものではないが、ロマンや名誉では明日のパンを購入できない。

「港湾都市アクイレイア」

「交易都市アクイレイア」

 これらの異名に「冒険者の街アクイレイア」が加わったのは必然であり、王国の政策は導入当初から二兎を追う矛盾があったのだ。


 今日も多くの者達がアクイレイアを訪れる。

 アクイレイアに集う冒険者の出自は不問とされ、経歴さえも問われないと囁かれる。

 真実は分からない。

 いずれにしてもシオンのような人物がアクイレイアに引き寄せられたのは必然だった。

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