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numero  作者: 夢幻
異世界召喚
4/5

事情説明からの仲間

今回は事情説明なので、少し読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。

「んじゃ、とりまその理由とやらを説明してくれよ。」


燈夜さんが焦れたように尋ねました。


「やっぱり、あれか?なんか、数千年ぶりに魔王とか邪神が復活して困ったから、異世界から勇者と聖女を召喚したとか?んでもって、そんな俺達には超絶美女or美少女の女神様の加護があって~とかいうやつか⁈いや、ひょっとしたら、テンプレにちょっと捻りがあるかもな...だとすると...


ティアと同じような、少年の目になった燈夜さんは、目を爛々と輝かせ、ワクワクしながら捲し立てました。


すると陛下は苦笑と驚異が入り混じったような複雑な表情で御口を御開きになり、


「へぇ...話すと長くなるけど...」


そう前置きすると、陛下はゆっくりと語りだしました。


「トウヤ殿が言っていることは、あながち間違っているとは言えないね。

事の始まりは666年前、神々が二つの立ち位置に分かれ、神戦、神々による戦争を始めたことなんだ。それ以前は、神々はこの世界を共に創造し、我ら人族と亜人族つまりエルフ、ドワーフ、獣人、だね。あと魔人族を生み出した後、平和に世界を見守ってくださっていたのだが...」


そう仰ると、悲しそうに目を伏せました。


「実は、神戦のきっかけは我ら、人族、亜人族、魔人族にあるんだよ。

とある多数族国家で、魔人族のグループが人族と亜人族を大量無差別殺害するという事件が起こった。結果、人族と亜人族は殆どそれぞれの種族のみが生活する国へ移住したよ。当然、それらの国はその多数族国家と魔人族のみが暮らす国々へと抗議をした。当たり前だよね。だって、自分の種族の者が大量に殺されたのだから。」


陛下は、そこで一旦深いため息をつかれました。


と、そこで燈夜さんが質問をしました。


「ん?その多数族国家の名前とかグループの組織名とかは何だ?」


確かに、当然の疑問です。


「それはね、わからないんだよ。」


え...?

どういう、ことでしょうか?

そこまで歴史に残っている国名くらい、わかる筈なのではないでしょうか?


「君達が疑問に思うのも無理ないんだけど...

まあ、話を聞けばわかるよ。」


そうして、またお話が再開しました。


「問題はね。抗議された側の国々は、どれもまともな対処をしなかった。理由は解明されていないんだよ。

それに、ましてその魔人族のグループの弁護をし始めたんだ。

人族と亜人族からすれば、信じられない話だろう?

だって、関わりたくないから対処をしないのなら、まだわからなくもないのかもしれないけど、まさか大量殺害犯の弁護をするだなんて、常識で考えたら、ありえない。

1つの国ならまだ狂っている国、で終わったけれど、それが約10国、正確には...確か12国あったんだ。

本当に、理解不能だよね。

だから、戦争が幕を開けた。」


ここで一回話が途切れると、また燈夜さんが口を挟みました。


「その抗議された魔人族の国とか多種族国家の名前はわかっているのか?」


恐らく、事件が起こった国がわからなくても、その他の国、1つくらいは判明しているだろう、という考えなのでしょう。

私も、彼の意見には同意です。


「それも、わかっていないんだよ。」


見事に期待を外してくださった陛下。


って...


「「えっ!」」


私と燈夜さんは声を揃え、お互いの顔を見合わせました。

また、その後、燈夜さんは震える声で尋ねました。


「ひ、1つもわかっていないのか?ははは。そんな、まさか、な...」


私の中にある記憶という名の常識によると、少なくとも元の国では、過去に起きたある程度大きな戦争において戦った国名は、学校で習う筈です。

それを、1国家の王すら知らないとは...


「残念だけど、1つもわかっていないんだ...」


否定されてしまった燈夜さんは、呆然とした様子で黙ってしまいました。


そんな彼を気遣わしげに見て、陛下はまたお話を始めました。


「まず、多種族国家に住んでいた人族と亜人族は、全員それぞれの国に帰ったか、新しく人族と亜人族だけの多種族国家を造ったんだ。

次に、人族と亜人族の商人は、魔人族がいる国には一切近づかなようになった。これが、魔人族にとっては痛手だったんだな。何故なら、魔人族が住む国は大抵資源がほぼ無いんだ。農作物は作れないし、川も濁んでいる。また、魔石やその他の鉱石も取れない。しかも、凶悪な魔物が住み着いている。

もともと、魔人族は人族や亜人族に遠慮をしてくれていたんだよ。何故なら、彼らは強者だからね。心優しい彼らは、無力な人族や亜人族の為に資源が豊富な土地を譲っていたんだ。作物が作れなくても、彼ら程の力があれば魔物を狩って食べることができるからね。

だけど、いくら彼らが強いとはいえ、その時代では魔人族も魔道具に頼って生活していたんだ。だから、その魔道具や魔道具を動かす為の魔石が無い魔人族は生活が困難になっていった。」


ここで陛下はまた1回区切りました。

これは、私達が話についていけるように配慮してくださってるのでしょうか?


「さて、ここから先、どうなったか予想できるかな?」


と思ったら、私達に振りました。

ですが、これは簡単ですね。


「えっと、生活が困難になった魔人族は戦争を仕掛けたけれど、強力な魔道具を扱う人と亜人には、いくら強力な力を持つとはいえ、素手では勝てなかった、というところでしょうか。」


きっと強い魔人族も、魔道具、日本でいう最新テクノロジーには勝てないのではないでしょうか。

自信満々に私が推測すると、陛下は満面の笑みで


「正解だ。流石シラキ嬢だね。」


そう褒められると、照れてしまいます...


「それじゃあ、魔人族が劣勢になったところから話すね。

魔人族は劣勢になり、その人口を次々と失っていった。

亜人族の国々や多種族国家はその様子を見て早めの終戦を提案したのだが、人族の国はそれを良しとしなかった。人族は執念深いから、完全に倒すまでは、怒りの矛を収めることができなかったんだ。亜人族は基本的に平和を好む種族だから、魔人族を許そうとしたのだけど、人族と争うことは避けたかったんだろうね。

暫くして、魔人族は降伏したんだ。あまりにも消耗が激しかったからね。ただ、その降伏の条件というものがまた人族と亜人族の怒りを買ってしまったんだ。

さて、トウヤ殿。その条件とは何だったか、当ててみて。」


今度は燈夜さんに話を振った陛下。


「え、俺っ?えっと...例のグループだけは見逃せとか?」


如何にも当てずっぽう、といった様子の燈夜さん。いくら何でもそれは無いのでは?と思うのですが...


「正解だよ。トウヤ殿、凄いね。」


「「え~!!!!!」」


本気ですか...

まさかです...


「さて、その条件を聞いた途端、人族は勿論、温厚な亜人族までまた怒り出してしまったんだ。

当然と言えば当然なんだけど...その後が、一方的過ぎて、ね。

ついには、神々が手を出してしまったんだ。

これが、悲劇の始まりだと言えるね。

どちらの陣営も、数はともかくとして、力量は殆ど同じだった。だけどとある神の夫婦がいてね。夫は魔人族に、妻は人族と亜人族に味方したんだ。2人とも、かなり強力な神で、それぞれの陣営のリーダー的存在だった。聞かれる前に言っておくけど、その神々の名前も、我々は知らない。

そして、戦いは互角だったのだが、とある時、戦場でその夫と妻が出会ってしまった。妻はチャンスとばかりに、人情、神情かな?を捨てて、夫に攻撃した。だけどその夫は、愛する妻を攻撃することを一瞬躊躇い、妻に殺されてしまったんだ。

そしてその妻は、夫は躊躇ったのにも関わらず、自分が夫を殺してしまったことに病んでしまい、彼女以外の神々を敵味方構わず、皆殺ししてしまった。そしてその後、我に返った彼女は己のしでかした事を知り、心が崩壊した。もともと、彼女はとても優しい女神だったんだよ。ただ、人族と亜人族を守りたかったが故に自分の意思を押し殺しただけなんだ。

さて、彼女はまず、夫の蘇生を試みた。だけど、完全には蘇生することができなかったんだ。彼は幽霊のように実態のない状態で、更に元の善の心を失ってしまった。そこで、邪神が生まれたんだ。

彼女は自分がまたもや過ちを犯したことを知り、とうとう自分を封印してしまう。いつか、また世界中を巻き込んだ戦争が起こった時まで自分が目覚めないようにして。

そしてその封印する際、彼女は人族と亜人族が今回の事について、国名や神々の名前を忘れるように魔法をかけた。そして、魔人族はもう1人も残っていなかった。理由は諸説あってまだわからないのだが、きっと重要な理由があるのだろうと言われている。だから、その名前を知る者は、もういない。」


壮絶な、お話でした。


燈夜さんもそう思っているようで、息を呑みました。


「それは...とても壮絶な歴史ですね...ですが、それと私達にはどのような関係が...?」


そう。私達の今回の件との繋がりが見えてきません。


「ああ。そうだったね。じゃあ、歴史はここまでにして、本題に入ろっか。ごめんね、その前が長くて。

ここ数年、魔物の被害が尋常では無い程に増えている。しかも、魔物が少ない筈の人族、亜人族の住んでいる場所でね。

そして、これまでに何回も様々な国の騎士団や冒険者の討伐隊が出向いているのだが、毎回ボロボロになり、命からがら報告に戻って来る。そして彼らが言う内容はね...子供に一瞬でやられた、との事だ。しかも、全員が同じ発言をする。おかしいだろう?そこで、私達は魔族の可能性を疑っているんだ。」


え...?


「おいおい王様。魔族は滅びたんだろ?言ってることが支離滅裂だぜ。」


燈夜さんの言う通りです。話の筋が通っていません。


「確かに、いない筈だったのだが...2年前、調査をしてみたところ、1人の魔人族の男の子が魔人族の国から逃げ出している可能性が出てきたんだ。つまり、彼は今まで力をつけていて、今、復讐の為に動き出そうとしているんじゃないか、ということだ。

そして、さっき言った報告には、実はもう1つ付け足すことがあって...魔王を名乗る、子供に一瞬でやられたとの事らしい。」


「よっしゃ来たぜ!テンプレの魔王討伐っ!やったるぜぇ!」


「えっと、異様にテンションの高い燈夜は置いておいて...「ちょ、おいっ!」私達に、その魔王を討伐して欲しいということですか?でも、私達はただの子供なので、戦うことはおろか、人を殺したことなんてありませんよ。多分...」


少なくとも、私の中での常識では、人を殺すだなんて、まずやる機会が無い筈、らしいです。


「戦いを強いるのは酷なことだけど、能力については問題ないよ。

今から、君達を召喚した流れを説明するね。

まず、魔王が存在するかもしれないと思った僕達は、女神様を祀っている神殿に出向き、神託の儀を行った。今までは女神様は封印されていたから、そんなことできなかったんだけど、駄目元でやってみたら、なんと成功したんだ!つまり、女神さまは封印から解放された。要するに、世界中の危機が迫っているということなんだけど...

まあ、その神託で女神様が仰ったには、『異世界より、祝福を受けし勇者と愛子の聖女を召喚しなさい。彼らは、努力すれば魔王など赤子の手を捻るかのように倒せるでしょう。彼らに誠心誠意頼みなさい。心優しき彼らならば、最初は戸惑うでしょうが、きっと最後には平和をもたらしてくれるでしょう。私は彼らを導きます。彼らを召喚したら、神降ろしの儀を行いなさい。彼らは適性があるので、問題ありません。さあ、世界を救うために、動きなさい。』とのことだった。

だから、君達を召喚したし、君達には戦うだけの能力があるし、努力すれば魔王に勝る。」


「...理解した。だけど、それに伴うリスクがあるんだから、俺達にメリットはあるんだろうな?あと、俺達は...帰れるのか?」


自然な疑問です。

私は覚えていませんが、きっととても素晴らしい家族や友人などがいたに違いありませんし、メリットが無いのにリスクを負うだなんて、非合理的にもほどがあります。


「...すまないが、帰れないと思う。そして、メリットとのことだけど...まず、この世界では誰もが知る、英雄になるだろうね。全ての国々が君達に感謝の証として、財や地位、名誉を与えることは確かだよ。それ以外も、可能な限り君達の要望に応えるつもりだよ。」


口調は先程変わっていないけれど、表情がとても真面目になっています。

ですが、私達は重要な言葉をまだ聞いていません。


「ふーん。それだけか。お前はもっとマシな奴かと思ったけど、俺が間違ってたみたいだな。何てったって、お前は1番重要な事を1つ忘れている。」


この言葉には、流石にシュヴァルツさん、ティア、リターさんが憤慨するかと思いましたが、そこまで愚かではないようですね。

あれ?ティアの様子がおかしいような...


「あーっ!もう!我慢できないにゃん!ムートン、いい加減にするにゃ!ムートンは何でこんにゃ単純なこと忘れてるにゃん⁈」


ティアは、わかっているんですね。

見直しました。


「ティア?どういう意味?」


陛下は困惑した御様子。これは、無理でしょうか?


「はぁ。ムート・フォン・ヌンマー!目を覚ましにゃさい!お前は、人間として、ものを頼む時に言わなければにゃらにゃいことを忘れてるにゃ!」


物凄い迫力のティア。先程までの態度が嘘みたいです。


「人間として...言わなければ...あっ!」


どうやら陛下も思い出されたようです。


「シラキ・ササハラ嬢。トウヤ・センザキ殿。こちらの勝手だという事は充分理解している。だけど、協力してくれ...協力してください。お願いします。」


「「「お願いします」」にゃ」


陛下に続いて側近の皆様も。


「よくできました、だな。あと、俺のことは呼び捨てでいいぞ。だって、目的を共にしてる仲間だろ?」


燈夜さんの威勢のいい言葉。

そして私も。


「当然、尽力します。私のこともどうぞ呼び捨てでお願いします。」


私達の言葉に、申し訳なさそうに眉を下げる陛下。


「本当に、ごめんね。」


ですが...


「また間違えてんじゃねぇかよ。」

「私達が欲しいのは謝罪それではなくて、感謝の言葉です。」


私達の駄目だしに、陛下は苦笑されました。


「そう、だね。ありがとう。シラキ、トウヤ。」


シュヴァルツさん、リターさんは温かい目で私達を見守り、ティアは周りで飛び跳ねています。


「よしっ!俺達の物語はこれからだっ!」

「「「「「おーーーーっ!」」」」にゃんっ!」




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