Act.0『未来を想いて開闢する運命の星─Creatio fati=De spe futurae─』
この作品は私の過去のオリジナル作品をリメイクした物語となります。一昔前の作風に感じられるとは思いますが、どうかご容赦を。
この世界には表と裏がある。
古くから各地に神秘の足跡を残しながらも魔法の存在を否定し、科学によって文明を発達させた、物理法則に支配された人類の世界──『人界』。
そして人界から排斥される未来を予見したある魔法使い達によって、神秘と寄り添う者達が生きるために創られた、神秘によって文明を発達させた裏側の異界──『魔界』。
そんな裏側の世界で、ある存在による大きな陰謀が渦巻いていることを、聖女と呼ばれる者は予見していた。
彼の者の望みを叶えてはならない。
そのためには数々の因子が必要だ。
運命の輪は静かに廻る。
運命を選べ。
運命を導け。
運命を創れ。
貴女の奇蹟ならば、それを可能にする。
貴女の理想ならば、それを可能にする。
どうか貴女達の想いが彼女を救い、彼の飽くなき欲望を打ち砕きますように──
誰かが言った。
運命を選べと。
誰かが言った。
運命を導けと。
それが誰の声なのかは分からなかったけれど、私は薄れゆく意識の中で賛同した。
あんな事はあってはならない。あの未来を実現させてはいけない。間違いなくあれは私達の世界を脅かすものだ。
だけど私にはもう、抵抗する力は僅かしかなくて。私の大切な人達が巻き込まれようとしているのに、私は奇蹟に頼る事しか出来ない。
運命を選べ。
運命を導け。
運命を──未来を、創れ。
私にそう呼びかけた声が、どうして私の持つ奇蹟を知っているのかは不思議だったけれど。もはや迷う余地はなかった。私は意識を失う寸前、最後の力を振り絞って奇蹟を行使する。
どうか奇蹟よ、届いて欲しい。
彼女の願望を打ち砕く希望の元へと。
──より良い未来を想いながら。
私の奇蹟は、未来を創る──