18 魔剣、これからのことを告げる
これで1章終わりです。次回はネット開通してから(ネカフェアイスを食べながら)
すいません、短いです。
一様は重苦しい空気が漂っていた。
もしかしたら、『魔王』すらも操るものがいる。しかも、人に害を成す為に。
それは十分に衝撃を受ける内容であり、想像を超えた話であった。
推論の域を出ないそれであるが、またかつてと同様に人の歴史が滅ぼしかねないと聞いただけで、それぞれの口は重いものとなっていた。
「リューナさん、ぼくはそういった先々の話よりも現実に迫っている脅威の方を認識した方が良いと思うんだ」
と、ダイト。
重苦しい空気のなか、彼はあえて明るい調子で言う。
「あれから千と何百年かわからないけども、ぼくらのような魔剣種でない限り、朽ちている可能性だってあるんだし。それに、なにより今回の魔剣は、前者の可能性だってあるでしょう?」
明るい材料を拾って、ダイトは言う。
それは、かつての戦から学んだ知恵。
人は暗いことばかり考えると、体が鉛のように重くなって、身動きが取れなくなるものだ。そうなると、すべての思考がマイナスに向いて、すべてを大事に考えがちとなり、やがて人は腐り果てる。
なにもかも無気力となり、困難に立ち向かう勇気を失ってしまう、一種の病。
『こころの病』と、人は言う。
ダイトは、この場にいる全員がそれに陥ってもらわないように、努めて明るく振る舞っていた。
「ええ、そうですね。確かに。ですが、認識をしてもらいたい。かつての私達は、そういった対策を含めて、多くの"聖遺物"や意執物"の魔剣を配置していたにも関わらず、ただの『魔王』ひとりによって、人類圏を滅ぼされたのです。
そういった最悪の可能性に配慮するのも、人の上に立つものとしての勤めでしょう。故に、今ここで言っておきたかったのです」
ダイトの振る舞いを切って捨てて、それでも尚、ブリューナクは強弁した。
それに同調するように、かたまっているように思えた、ガルフォードは、再びあごひげを撫でながら言った。
「そうじゃの。そういった最悪の事態を考え、備えるのは我ら貴族の勤めじゃて。ダイト殿のように、楽観的な内容を模索するのも大事じゃが、儂のようなものは、ブリューナク殿の意見を重く受け止める必要もあるじゃろう」
そして、ガルフォードは言う。
「よろしい。どの道、王から魔剣を集めろとのお達しじゃ。儂もダイト殿のちからとなろう。そして、ダイト殿。すまぬが、そこのライムとコリンズを含め、儂の兵逹を鍛えてやってほしい。来るべき『魔王』と、それ以上の『なにか』に対抗出来るように。そのあいだは、我が城を存分に使ってくれても構わんよ」
ガルフォードは、『魔王』という存在を、脅威を認めた。
その為に、ダイトとブリューナクを利用しようとする腹積もりも、決めた瞬間であった。
ガルフォードは、真摯な目でダイトに向くと、深く頭を下げた。
「承りました、ガルフォードさん。ぼくの拙い剣技ですが、皆様の一助となれば、これに勝る喜びはありません。どうか、よろしくお願いします」
そう言って、ダイトは胸に手を当てると、ガルフォードに向かって小さく会釈した。
ガルフォードはにんまりと微笑み、すこしでも騎士達がダイトの実力の片鱗でも、着けてもらえればと画策していた。
だが、ガルフォードは知らない。ダイトは、容赦をしない性格である事を。
故に、いくらかの騎士逹が出奔することとなる。
――後に、他国と比しても優秀となる、グレイハウンド城の兵らは語る。「剣の"鬼"が来た」と。




