静かな部屋で
締め切った窓でしょう
それを象徴するのは
大空に怯え
換気をやめてしまった
視線に怯え
人の声に怯え
雑音に怯え
花の匂いさえ不愉快になってしまった
空気清浄機だけが
しんしんと稼働する静かな部屋で
それは流れない水を
必死に柄杓で掬っているだけ
やがて濁ってしまう
だからあなたは窒息してしまう
鳥が羽ばたく
あなたは羽音に耳を塞ぐ
鳥を羨み
蝶を蔑み
隣人を呪いながら
「隣人を愛せない愚か者は死ね」と
ひたすらに怨嗟を呻き続ける
ただ一言
「俺を愛してくれ」と言えなかったばっかりに
「善い人間なら俺を愛するべきだ」
としか
言えなかったばっかりに
ネットの小窓の向こう側の住人は
「そう、善い人間ならあなたを愛するべきだ」と
正しさを振りかざして同意を示してくれる
そしてあなたを愛さない