フィフスグラウンド・オンライン8
「あれ?」
と、疑問形の言葉が通信機を通じて聞こえた。
一体、何が起こったのか、考える時間すら与えられる事無くして、白銀色に輝く閃華の機体が、操縦者諸共、爆砕する。
機体とパイロットの体は火炎と熱波に飲み込まれて、周囲の空域を赤黒く染め、破片となって海上へと墜ちて行く。
「下だ!」
【KOM】が告げるより早くして、下空から上空へと、空を切り裂くように機体が飛翔する。
白銀の機体。
機体全体が鋭さをかもし出すデザイン。
まるでそれは狩りをする猛禽を思わせる。
「影狼――。」
呟く声を嘲笑うかのように、上空の雲の中へと消える。
「くそ!【REN】が堕ちた!
各自自由戦闘!
但し、離れすぎるな。
それぞれが視界に入る距離に保て!」
「了解!」
【KOM】の指示に【RINA】が鋭く答える。
「こちら【DOT】!
レーダーに反応あり!俺から見て2時の上空!」
と、一番先行していた機体から通信が入る。
「よし!目視、見つけた!」
「【DOT】!とにかく留まれ!
単機で行動するな!」
「了解した!
っと奴は再び雲の中に入り込んだ模様。
こちらの様子見って所か。
案外、臆病な」
【DOT】からの通信が途絶える。
直後、爆発と、粉々になった白銀の機体が墜ちて行くのが見えた。
「【DOT】の墜落を確認。
【RINA】下がれ!
隊長の近くに移動し」
上空から落雷の様に降り注ぐ閃光。
それは白銀の機体と操縦者を貫く。
容赦無い、狙撃。
影狼――。
名前の通り、何処にいるのか分からない影のような機体。
そして、狙われるのは羊たち。
一匹の狼を相手にするように、狩りとられていく。
「あぁ!【SATO】が墜落!」
【RINA】が叫ぶ。
「こちら【MAGI】、影狼を見付けた!」
「俺も目視!!」
「【KIRIE】!やるぞ!」
「おう!三人の仇だ!」
「お前ら!
行くな、一旦、建て直す!
後退だ!」
【MAGI】と、【KIRIE】の2機が突っ込んでいくのを【KOM】が止めようとする。
だが、2機の白銀の閃華は止まる事無く、影狼を追う。
残った【KOM】と【RINA】そして僕は彼らを追うような形で飛翔していく。
そして、一気に加速し、目の前の壁のような雲を突き抜ける。
次に視界に入ってきたのは海上に点在している無人島。
上空は蒼穹と言う戦うには絶好の空域。
視界は一気に広がる。
先行していた2機は更にその先にいる影狼を追っている。
今や、影狼の背後を完全に取った形となっており、有利な位置だ。
そして影狼に向かって2機はレーザーの閃光を浴びせるが、寸前の所で躱される。
なるほど、第7世代ヴューレ影狼と言う機体だけあって、飛翔に鋭さがある。
更に言えば、影狼の操縦者の飛空技量も高い事がひしひしと感じられた。