フィフスグラウンド・オンライン7
都市カリストロを出発して更に南に向かう。
程なくして、小さな無人島が点在する海域に差し掛かった。
将来的には、ここを開発してリゾート地にする計画も持ち上がってはいるが、未だ実行に移せてはいない。
未開の島が大小400程あるものの、雲が発生しやすい為に視界は悪く、島も平地が少ない事からその計画も容易ではない事が窺えた。
そんな海域で影狼の目撃情報が増え始め、更に撃墜される事件も多発しており、時折この空域に立ち寄っていたプレイヤーも遠のき、今では余程の物好きか、腕に自信のあるプレイヤーしか飛ぶ事は無い。
故に、この空域では僕ら以外の機体を見かける事は無く、寂しげな印象を拭えなかった。
ただ、【KOM】率いる一団に関しては、その雰囲気に飲まれる処か、逆にここが自分たちの庭であるかのように、緊張感を何処かに忘れてしまったように編隊飛行が崩れるのも何のその、縦横無尽に飛翔し始めていた。
と、突然【RINA】が声を上げる。
「あ!」
「何だ!?機影が見えたか?」
【KOM】は言う。
一同は無言の内に元の編隊飛行に移る。
瞬時に、元の編隊、【KOM】を取り囲むように4機の閃華が台形を形作り、その前方に零羅が飛翔する。
僕の煉華は後方のやや高い位置を飛翔している。
全体を見渡せる場所だ。
が、唯一、先ほど、声を上げた【RINA】だけがそのまま飛び続けている。
「あそこ、プライベートビーチに丁度良さそうですよね!
隊長!
一つ提案なんですけれど私、水着を持って来ているんで泳いでも良いですか?」
その一言に【RINA】を除く一同は苦笑する。
「お前は、観光地にでも来たつもりのようだな。おい」
「失礼ですね!
勿論これが単なる遊びではない事は、片時も忘れた事はありませんよ。
ですが、考えても見て下さい。
蒼い空、白い雲、そして綺麗な砂浜。
そして、美少女。
とても絵になると思うんですよね」
「いや、美少女なのかは兎も角として、それがあるから何だと言うんだ?」
また【RINA】の我儘発言が始まったと、でも言わんばかりに【KOM】は言う。
「そもそも【RINA】って美少女じゃないよな!
どちらかと言うと、幼児体型だし、俺は逆にこうボンキュッボンの方が……。」
「いやいや、少し肋骨が浮き出ているのが見えるぐらいのが良いじゃんよ!
性格はあれだけど【RINA】ぐらいのが理想的じゃね!?」
「別にお前の趣味が特殊なだけで……。」
「ふっ、お前とはどうやら一度決闘をしなければならんようだな。
何だったら今からでも」
「ってお前ら。
何の話をしているんだよ!」
話が変な方向に向かい始めたのを【KOM】が修正しようと声を荒げる。
「そうですよ!
それに立派なセクハラです!
私だって好きでなった訳ではないんですから!
べ、別に、全っ然、気にしていませんけれど……ね」
と、【RINA】が言う割には、若干落ち込んでいる様にも聞こえてくる。
「ちなみに【MUTO】氏はどちらが好みで?」
「ええと、それは、大きさよりかはどちらかと言うと……。」
「おおい!
【MUTO】、真面目に答えるなっての!」
【KOM】が言った刹那。
下空から青白い閃光が迸り、それが閃華の1機を貫いた。