フィフスグラウンド・オンライン6
「良ければ僕が代わろうか?」
【RINA】に提案してみるも、彼女は、両手をひらひらさせて断る素振りを見せた。
「いえいえ、今回【MUTO】さんはVIPですからね。
戦闘に関しては私達にお任せ下さい」
「と、言う割にさっきのは何だよ」
【KOM】のツッコミは無視する形で、こほん。と前置きして【RINA】が仕切りなおすように口を開く。
「例え、第7世代ヴューレでも、私達にかかればちょちょいのちょい!ですよね!
隊長!」
「ちょちょいのちょいか、どうかは分からんが、単純に遠距離で5機、中距離で2機に狙われる訳だ。
俺たちが簡単には墜ちるとは思えんがね」
と、【KOM】は自信を込めた笑みを一堂に返す。
彼らしいリーダーシップの取り方とでも言うのだろうか。
仕草や表情からは、不安は一切感じられず、頼もしい。
流石は『スカイコンバット・オンライン』で高ランクプレイヤーであったと感じさせた。
一同は絶対な信頼を【KOM】に寄せている。
それは勿論、【KOM】の技量もあるが、話を聞いてみれば彼らは『スカイコンバット・オンライン』をはじめ、数々のオンラインゲームで一丸となって戦ってきた面々であった。
しかも、いづれもが高ランクの成績を残している実力者ばかりでそれぞれの高い能力が窺い知れた。
それによって、空戦においては無言の内に意思疎通が行え、瞬時に敵を葬り去る事が容易なのではないかと、思えるほどに。
「そう言えば、聞いていなかったな。
その敵の機体性能は?」
ついでにと言わんばかりに【KOM】が問いかけてくる。
「噂の機体は、一般プレイヤーにはまだ入手出来ない第7世代ヴューレ。
通称、影狼。
機体性能はブースターを装備している。
これによって、一気に至近距離に近付かれる可能性が高い。
レーダーも強化されて、機体自体の隠密性能も高く、下手をすればこちらのレーダーに見えない事もあり得る。
それと、武装に関しては、超遠距離射撃が可能なレーザーを装備している。
但し、超遠距離仕様の為にそうそう連射は得意では無い機体だね」
「その超遠距離射撃と、言う事は、私達が影狼を見付けるよりも前に、向こうから攻撃をしてくる可能性が高いと言う事ですよね?」
【RINA】は一瞬、表情を硬くして言う。
「そう言う事もあり得るだろうね。
何処から狙っているのか分からないからシールドは全体に展開した方が良いと思うよ」
「な、なるほど、つまりは先行している私が一番に狙われるって、そういう事です……ね?」
肩をがっくしと下げるように【RINA】はため息をつく。
「大丈夫だ。
お前はすぐに撃墜されねぇよ」
「本当ですか?
でしたら、その理由は?」
「いや、ただの俺の勘だ」
【KOM】の言葉を聞いて、やっぱりと、【RINA】は項垂れる。
「【RINA】はいつも心配し過ぎなんだよな。
まぁ、あれだ。
いつかのように、弾切れになって逃げ惑うよりかはマシじゃねぇの?」
メンバーの一人がからかう様に言う。
「あ、そう言えばそんな事もあったな。
確か『スカイコンバット・オンライン』で……。」
「もう!
やめて下さいよ!
あれは、私の唯一の汚点なんですから!」
「いや、随一の間違えじゃね?」
一同は朗らかに笑う。
「さて、そろそろ行こうか」
【KOM】が言うと、それぞれ席を立ちあがった。