フィフスグラウンド・オンライン5
すぐさま【RINA】は連絡を取り、僕と【KOM】、【RINA】合わせて8機のヴューレで向かう事が決定され一同は一旦、首都オーリエットから南の都市カリストロに立ち寄り、装備を整える事になった。
カリストロの海辺の街に降りたち、小さなカフェで軽く自己紹介を済ませる。
全員が【KOM】の知り合いと言う事もあり、ほぼ全員が別のオンラインゲーム、『スカイコンバット・オンライン』からこちらに移転してきたプレイヤーだ。
その為なのか、操る機体には各種ノーズアートが描かれ、一見しただけでもこだわりのある機体装備に見えた。
8機のうち5機は第4世代ヴューレの閃華を基本機体としている。
閃華は同世代ヴューレの煉華よりも遠距離攻撃に特化させており、レーザー射程が長くなっている。
但し、その分、僅かながらレーザー掃射に掛かる時間があり、また近距離戦闘時での連射性能は煉華よりも劣る。
その他、煉華に比べて、旋回性能などは同等になる為、煉華と閃華の違いと言えば遠距離対応かそうでないかと言う事になる。
【KOM】に言わせるならば、至近距離で会敵する前に敵機を撃墜するから、この機体で十分だと、『スカイコンバット・オンライン』で培ってきた空戦に対しての技量と自信とを感じさせる口調で言っていた。
残る3機のうち、僕を除いた2機は第4世代ヴューレ零羅と、言う機体だ。
攻撃性能に関しては煉華と同等ではあるが、こちらは加速性能に重点を置いており、例えば、空中で静止した状態からの加速が速いが反面、旋回性能が若干ながら劣っている為に、クセのある機体となっている。
そして僕はと言うと、第4世代ヴューレ煉華だ。
第4世代ヴューレのマルチロールと言う位置付けの機体で平均的な能力を兼ね備えている。
中にはアイテムや改造を加えて、若干性能を向上させているプレイヤーもいる。
実際に僕も、アイテムを使って、敵機に発見されにくい隠密性能を高めており、またシールドの耐久度も若干ながら向上させている。
攻撃用と言うよりかは自らの身を護る為の機体仕様だ。
戦い方としては【KOM】のように相手の攻撃が届く前に遠距離からの先制攻撃によって自らの危険性を無くすものや、旋回性能の高い機体を使って、相手の攻撃を避け、背後から敵に攻撃を仕掛けると言うものもある。
幅の広い戦いを繰り広げる事も出来るのだ。
勿論、機体や装備のヘルメットのノーズアートのデザインから、こうした性能を向上可能とするアイテムもある為に、自分の好きな味付けの機体に仕上げる事が出来る。
これも自由度の高いのだ。
「以上が、作戦だ。
何か質問は?」
【KOM】がテーブルの一同を見やる。
「マスター…じゃなかった隊長。
作戦と言っても、敵機を見つけて遠距離から狙撃ですよね」
【RINA】はやや不満げに言う。
そんな様子を見やりつつ【KOM】は口を開く。
「何だ?不満なのか?」
「いいえ、別に不満はありませんよ。
ただ、遠距離用の閃華5機が台形の陣形で、その先を私を含んだ零羅2機が先導すると言う事で、一番危険なのは恐らく私だって事なんか、気にしていませんよ」
と、あおる様にティーカップを掲げて飲み干した。
「万が一、撃墜でもされたら、笑えませんけれど、全然、気にしていませんからね」
【RINA】がそう言うのも無理はない。
例えば、撃墜や傷を負って死亡した場合、24時間はゲームに参加出来ないと言うペナルティーが科せられるからだ。
また、他にも例え復活したとは言え、機体そのものの耐久度が若干下がっていたりと、プレイヤーにとっては好ましくない事があるからだ。