フィフスグラウンド・オンライン30
「いやぁぁあああああああ!!!!!
死んだの!?
撃たれたの!?
いや!もう死にたくない!!」
【RINA】は悲鳴を上げるも、【NAMI】のレーザーは幸いながら彼女の身体を穿つ事は無かった。
代わりに、機体の機首を損傷されて煙があがり、継続的な戦闘は難しいと思われる。
更に言えば、【RINA】の戦意を奪うには十二分だったろう。
もう一度悲鳴を上げた後。
彼女は半ば黙り込んで、呆然としながら慣性に逆らうこと無く、機体が徐々に下がっていく。
「逃がすな!」
【KOM】は叱咤するように言い放ち、機体を加速させる。
【RINA】に、大丈夫だと声を掛けてやりたい所ではあるものの、この機会を逃す事は出来ない。
僕も【KOM】の左後方に機体を位置付けて、加速させ、先を飛翔する【NAMI】を追いかけた。
と、雲の切れ間に、輝く機体が見えた。
鋭利なデザインの機体。
【SAE】の操る影狼だ。
見るや【NAMI】が【SAE】目掛けて機体を加速させていくでは無いか。
「【SAE】!
気を付けろ、【NAMI】が近付いているぞ!」
【KOM】が叫ぶも、【SAE】は空に静止したまま動かない。
あるいは動けなくなったのか。
レーザーを撃ち続ける。
だが、しかし【NAMI】は機体を滑らせながら巧みに躱す。
その間にも【SAE】との距離は確実に詰まっていく。
「お姉ちゃん」
【SAE】の震えた声。
生前の姉に出会えたと言う嬉しさだとか、何故このような事になったのかと言う悲しさだとかそう言ったものをすべて綯い交ぜにした様なそんな声。
【SAE】は全身の力を振り絞る様に指を動かす。
レーザー掃射ボタンに添えられた指が震えた。
「お姉ちゃん……。」
レンズの焦点が合わない様に視界が歪む。
それでも向かってくる【NAMI】と、その白銀の機体へと、瞬きをしない様に瞳を開く。
これが永遠の別れになるかもと思いながら。
「奈美、お姉ちゃん。
ごめん、なさい」
ボタンを押し込む。
これが永遠の別れになるだろうと思いながら。
【SAE】の操る影狼から青白いレーザーが迸る。
鋭い閃光は、抱きかかえる様に【NAMI】の身体の中心を射抜いた。
刹那、ふぅ、と吊るされていた糸が切れたかのように【NAMI】の影狼の機首が下方へと向けられる。
そして、そのまま滑空するようにゆっくりと、しかし確実に海へと向かって墜落して行った。
終わったのか?
そう思いながらも、【NAMI】を追尾する。
【SAE】も【NAMI】を追いかける様に機体を滑られた。
【NAMI】の操る影狼は、ふわりと鳥の羽の様に、或は螺旋を描きながら舞い落ちる雪の様に滑空し、小さな島の浜辺へと不時着する。
浜辺の砂に機体の底が付く。
一瞬、弾んだその衝撃で、【NAMI】の身体は、とさり。と白い砂浜に投げ出された。