フィフスグラウンド・オンライン17
暫く誰も何も言えなかった。
そして、漸く口を開いたのは【KIRIE】だった。
「って事は、何だ。
俺達が戦ったのは、【NAMI】の幽霊だったと言う事か」
「いや、それは違う。
実は、以前、【RINA】が教えてくれた噂が関わっていて」
と、途端に一同の視線が【RINA】に集まる。
「え?
噂って……。
もしかして、調べておいてって言われたヤツですよね。
でもまだちゃんと確かめれていなくて……。」
「【RINA】、何だよ。
お前、何をやらかしたんだ?」
【MAGI】が冷かすように言う。
「別に何もしてません!
ただ、噂があって……。」
と、【RINA】は以前聞いたと言う噂を説明する。
3週間ほど前、ある人物が今回の問題が起こっている空域でアイテムを使った途端に、『影狼』が現れ始めたと言う噂だ。
「それ、わたしがしました。
わたしがアイテムを使ったんです」
【SAE】が申し訳なさそうに答えた。
「で、そのアイテムと言うのが、『情報収集型自立学習プログラム』と言う物だったんだ」
「展開が急すぎて、驚いているんだが、その情報なんとかかんとかって言うのは、どう言った物なんだい?」
【REN】が問いかける。
「『情報収集型自立学習プログラム』。
運営で言うと通称I-TAPと略しているプログラムで、オンラインゲームの中のプログラムによってのみ限られた場所で会話したり動くNPCをより現実に近い会話や動きが出来る様になる補助プログラムとして活用していたんだ。
そして、そのプログラムを【NAMI】は応用して、設計した影狼をテストしていた訳なんだけれど、テストをするI-TAPの人格原型に、自らの思考や行動原理、更には記憶までもを組み込んで使っていた。
これによって、わざわざプレイヤーが実際に機体を操縦してプログラムのバグや性能を確認するよりも非常に効率的に行えるし、24時間休み無しに、それこそ永遠に作業を行えるんだ。
しかも、その時収集した情報が蓄積されて、機体の改良も可能だった」
「不老不死みたいなモンだな」
【KOM】は鼻を鳴らす。
「で、そのプログラムを消去する事は出来るんだろう?
例えば、修正プログラムで更新するとか」
「勿論、既に行った。
けれど、【NAMI】は消えなかったんだ。
恐らく、彼女自身の記憶を組み込んだ際に修正プログラムの事や、その他ゲームシステム等、知っていたんだと思う。
そしてそれに対する対策法も」
「要するに、消えないプログラムみたいなものって事か」
【REN】は頭を掻きながら言う。
「そうだね。
しかも、対象は恐らく自由に移動出来るから、時には隠れる事も可能だったり」
「で、つまり俺達に出来る事と言えば」
【KOM】が人の悪い笑みを浮かべて席を立つ。
「対処法としては、この『ゲームそのものの完全消去』、或はもう一つ」
一同は息を飲む。
無理もない。ほんの小さな問題であった事がこのゲームの完全消去に繋がるとは思いもしなかったのだから。
「『【NAMI】の撃墜、アバターの破壊』と言う事になる」