フィフスグラウンド・オンライン15
と、【KIRIE】が声を掛けてくる。
「改めて【MUTO】氏、そちらの方は?」
「順を追ってそれから紹介しようと思っていたんだけれど。
とりあえず簡単に紹介しておこうか」
再び一同の視線が集まる。
「こちらは【SAE】」
【SAE】が席を立ち、何処か小動物染みた動きで席を立つ。
「あの、はじめまして。
【SAE】と言います。
この度は……その、すみませんでした」
そう言って黒髪のボブカットを揺らしながら深々と頭を垂れる。
「いやいや、別に謝られるような事をされた覚えは無いけれど。
そんな事より、趣味とか、特技とか、何だったら連絡先を」
「【MAGI】お・じ・さ・ん」
【RINA】の不機嫌な視線が【MAGI】に注がれる。
いらん事を言わない様にと、念押ししている様子だ。
「まぁ、とにかく座んなよ、お嬢ちゃん。
【MUTO】、とにかくその、順を追って説明して貰えるか?」
【KOM】がそう言うと、【SAE】はおずおずと席に座りなおした。
「じゃあ説明しようか。
影狼の正体について」
その途端、一同に小さな波が起こったように、冗談や毒舌が飛び交う和やかなものから、緊張した硬い空気へと場の雰囲気が一気に塗り替えられた。
「ほう」
と、【KOM】が呟く。
「最初に、僕があの影狼を見た時、既視感があったんだ。
以前、何処かで見たかも知れないとそう思った。
でも、正直、それが勘違いかも知れない事もあって、誰にも言えなかった。
けれど、僕が影狼に狙撃されて、撃墜される時、その証拠を見付ける事が出来たんだ。
機体に描かれた黒い狼と、操縦者のヘルメットに描かれた片翼のノーズアート、それと影狼と言う機体」
食い入るように一同は聞いている。
「確かに、俺も見た。
ヘルメットの横に羽のマークがあったな」
【KOM】は腕を組みながら言う。
「この影狼の機体とヘルメットのデザインはある人物がよく使っていた物だった。
名前は【NAMI】。
この影狼と言う機体の設計をした運営の人間だったんだ」
「じゃあ、その【NAMI】が犯人だったと言う事だな」
「なるほどな。
どうりで勝てない訳だ。相手が運営の、しかも機体の設計をした人物な訳だから」
「つまりは、【NAMI】を捕まえれば問題解決って事か」
【DOT】と【SATO】、【REN】の言葉に【SAE】の表情が一際翳りを増した様に見えた。
それを見て取って、【RINA】は宥める様に言う。
「もしかしたらその、【NAMI】って言う人は何か理由があって、こういう事をしているのかも知れないかもよ。
ですよね?【MUTO】さん」
「うん。
そうかも知れない。
それに、これは少し複雑な状況なんだ」