フィフスグラウンド・オンライン14
「そもそも、あんな無茶苦茶な機動だと、遠距離から狙うのは厳しいだろうな。
あまりにも動きが速すぎる」
「確かに。
だが、かと言って、近づきすぎるのは自殺行為としか思えんしな。
なぁ【RINA】もそう思うだろ?」
「え?
うーん。
と、言うかきっと近づく前に狙撃され兼ねないし」
僕が撃墜されてから24時間が経ち、再び「ヘッジホッグ」を訪れた時、既に【KOM】率いる一同が店の中央の円卓の机に集まり、影狼対策について話が行われていた。
「いらっしゃいま……って【MUTO】さん、丁度良い所へ」
ウェイトレスの服装を着込んだ【RINA】が声を掛けてくる。
「まぁ、立ち話もなんですから」
と席を促されるが、僕の後ろにいる人物を見やって、小首を傾げつつ椅子を用意する。
「【MUTO】さん、そこの可愛い子は新たな仲間ですか?」
【RINA】の問い掛けを切っ掛けに、一同の視線が向けられる。
「お、実に俺好みだぜ!」「まぁまぁ、どうぞ、俺の横に座んなよ」「名前は?なんて言うんだい?」「あ、出来れば連絡先を交換して貰えたり?」
等と、ふざけているのか、或は本気なのか次々と声を掛けて来るが、僕の背後にいる彼女【
SAE】は顔を赤くして、顔を伏せた。
「照れてるし!【RINA】と比べると数倍…いや、数十倍可愛いねぇ!」
「全くだ!【RINA】には絶対無い清潔感っていう感じ。まさに俺好みだぜ!」
「って、そこのおじさん達!静かにして貰えますか?」
【RINA】の珍しく鋭い口調に、【MAGI】と【KIRIE】が顔を顰める。
「いやいや!まだ20代ですから!若いですから!!」
「って【RINA】と歳、全然離れていないだろ?酷くね?」
「酷くありません!」
ぴしゃりと言い放つ【RINA】。
恐らく、無意識の内に言ってしまった【MAGI】と【KIRIE】の言葉に苛ついているのだろう。
「だから、そう言う所がだな」
「あーそうですか。
それは失礼しました。
所でお客様、そろそろお会計を宜しいでしょうか?
これまでにツケで飲んでいた飲み物や料理の数々。
延滞料金含めまして、11万1400リエットとなっております」
売られた喧嘩は買う。
しかも数倍にして返す。
それが彼女の流儀であるかの様に。
「げ!
高ぇよ!どんだけボッタくりする気だよ!」
「いえいえ、お客様。
当店は笑顔でにっこり格安価格で御座います」
と、とても綺麗な笑顔を見せる【RINA】。
「わ、悪かったよ」
【KIRIE】が言うと、【RINA】が、分れば宜しいと、言わんばかりに鼻を鳴らした。
「ま、とにかく、どうぞ」
用意した椅子を再び促す【RINA】。
僕と【SAE】は静かに席に着いた。