フィフスグラウンド・オンライン1
白銀に輝く機体が空中を飛び交う。
重力をも凌駕した機動。
一瞬のうちに機体を反転させて、敵機の背後へと滑り込む機体。
重力粒子と反重力粒子を制御可能とする動力の為し得る動き。
すかさずレーザー掃射ボタンに指を掛ける。
鋭い閃光が、敵のパイロットと機体を貫く。
百年戦争時の中世の、芸術的価値のある建造物然とした中に最先端の科学技術とを融合させて独特の世界観を醸し出している。
そして、自由に空中を飛翔可能とする現実世界には無い技術がここにはある。
フィフスグラウンド・オンライン。
「フィフスグラウンド戦記」と言うネット小説を元として世界観を作り、作中に登場する人物や乗り物を駆使して、各国の所属し、敵国の領域に攻め込んだり、守ったり、時には作中と同じ内容のイベントが発生したりと幅広く楽しめるゲームとなっている。
今では珍しくも無いフルダイブ式オンラインゲームとなっており戦術戦略リアルタイムシミュレーションゲームを目的とした以外で、精密な視聴覚グラフィック、世界有数の観光地に似た地形や建造物などによって、普段忙しく、休みの取れない会社員や、体の不自由な年配者でも楽しめるとあって、発売前の評判は非常に期待できる。
また、小型戦闘機、通称ヴューレや空中都市を思わせる全長500メートルの飛空戦艦。
他にも飛空艇などによって自分の思うが儘、空を駆け巡る爽快感は地上に縛られない移動空間によってその自由度は計り知れない。
レベルと言う概念は無く、獲得した経験値や金銭、クリアしたイベントによって自分の地位を向上させたり、所有の機体を強化させたり、傭兵を雇ったりと現実世界で考えうる限りの自由度がウリでもあるのだ。
つまりは作中の登場人物と同じように、大艦隊を編成して敵国に戦争を挑むことも可能と言う訳である。
但し、機体の操縦は反射神経や、空中の順応力などによって自分の手足を駆使して行う為に、例えばヴューレと言う乗り物に関しては個々の能力によって左右されている。
もしも、卓越した能力を持っているとするならば、たった1機で5機のヴューレを撃墜する事も可能なのだ。
そんなフィフスグラウンド・オンラインだが、ゲームのシステムやバグの精査を行い、抽選で選ばれた国内5000人のプレイヤーをテスターとして行ったアルファテストを無事に終え、次に言語の異なった世界中のプレイヤーによって行うベータテストを行う予定となっている。
世界中のありとあらゆる言語を訳す機能を搭載し、例え自分が他の国の言語を知らないとしても直後に訳され、ゲーム内の対象となる人物の上に文字が表示される。
募集規模は50000人となり、それを上手く運用できれば、細部を最終調整し、発売となる訳だ。
今現在は、国内枠を上限20000人として、5000人から徐々に増やしている段階にあり14000人ほど。
勿論、その間にもシステムに異常はないか、バグが無いか、他にも実際戦ってみて違和感はないかなど常に情報を集めて、よりプレイヤーが楽しめる環境を整えている状態なのだ。
作中と同じくこの世界には国家が7つある。
ファーストグラウンドの帝国。
セカンドグラウンドの皇王国。
サードグラウンドの中立共和国、同盟国、自由連合国。
フォースグラウンドの独立国、連邦国。
また、ある一定の条件を満たせば、フィフスグラウンドの英豪共和国に所属できるのだ。
そんな中、ある一つの情報が注目され始めた。
連邦国首都オーリエットから南方向には都市カリストロがあるのだが、更にそこより南の海上には小さな島々が広がっている。
特に、都市建造物や、基地施設がある訳では無いこの場所で、ヴューレの墜落が後を絶たず、その被害者も増えていく一方となった。
ただ、目撃者によれば、今はまだ入手が出来ない筈の機体。
発売と同時に解禁となる筈の第7世代ヴューレ『影狼』では無いかと、言うものだったのだ。