和柑橘チーズの誕生日ケーキと黛藍の誕生日
その日 万次郎茶屋では、愛之助やタリサ達が手作りしたフラワーペーパーや風船、輪つなぎ、オーナメントを飾り、店内をパーティー使用に飾り付けしていた。
◇◇◇◇◇
「タリサ、ここの飾りは赤い風船のお花にするでござるか?それとも白風船のお花の方がいいでござるか?」
「う~ん………赤も可愛いけど、こっちは白にしょうか。マヤラと光貴は赤がいい?それとも白?」
「マヤラもにいにとおにゃじでしろがいい!」
「僕も黛藍の色の白が良いへけっ!」
4人で話し合いながら最後の飾り付けをしていると、台所で誕生日料理を作っている愛満の手伝いをしている山背がやって来て、3人に話しかける。
「どうじゃ?飾り付け終わりそうかのう?
こっちも料理が完成したから、そろそろテーブルの飾り付けに入りたいのじゃが大丈夫かのう?」
「オッケー!こっちもバッチリだよ。」
「茶屋内の飾り付け終わったへけっよ!」
「ちょうじゅにかじゃりづけしたよ♪」
「拙者達担当の飾り付けは終わったでござるから、テーブルセッティングいつでも大丈夫でござるよ。
あっ!そうでござる。拙者達もテーブルセッティングお手伝いするでござるよ!」
最後の飾り付けを終えた愛之助達が、自分達もテーブルの飾り付けをお手伝いしてくれると話。1時間後に開催される黛藍の誕生日会の準備が急ピッチに完成するのであった。
◇◇◇◇◇
愛之助達が朝早くから何を飾り付けしているかと言うと、今日5月23日は黛藍の誕生日になり。
2週間前に美樹が教えてくれた時から、黛藍に内緒で愛満達が密かに計画して、今日のために飾り付けを作ったり。誕生日会用の献立を考えたり、プレゼントを用意したりと誕生日会の準備をしていたのだ。
そして今日のためにお店を休みにした愛満達は、愛満と山背が誕生日会用の料理を作り。
愛之助やタリサ、マヤラ、光貴達4人が茶屋内を飾り付けするため、黛藍に気付かれないように美樹が黛藍を全身の毛の手入れのためと美容室に連れ出してくれ。
短い時間の中、急ピッチで会場作り等を頑張っていたのだ。
◇◇◇◇◇
そうして美樹と話し合って決めていた約束時間に何も知らない黛藍達2人が万次郎茶屋へと帰って来て
パーン♪ パーン♪パーン♪
「「「「「「黛藍!誕生日おめでとう~~♪」」」」」」
「おめでとうでござるよ♪」
「おめでとうなのじゃ!」
「おめでとうアルね♪」
「おめでとうへけっ!」
「おめでとうニャ~♪」
「「「「黛藍おじちゃん、おめでとうアルよ♪」」」」
あちらこちらから鳴るクラッカーや沢山のお祝いの言葉に黛藍が出迎えられるなか、黛藍の姉光紅家族やケットシーのモカも加わった『黛藍の誕生日会』は盛大に始まり。
「うわ~♪ラザニアに揚げ出し豆腐、ポテトサラダ、ネギ塩豚、卯の花、どれも黛藍の大好きな料理ばかりアルよ!嬉しいアル!
愛満、こんなに沢山の料理作るの大変だったアルよね、ありがとうアル。
それに店内の飾り付けも可愛いアル♪
愛之助、タリサ、マヤラ、光貴の4人が飾り付けしてくれたアルか?大変だったアルよね、本当にありがとうアル。」
「ううん。黛藍が喜んでくれるなら、これくらいの事たいしたことないよ。
それに山背も手伝ってくれたからスゴく楽で、あっという間に出来たんだ。」
「山背も作ってくれたアルか!山背、美味しそうな料理ありがとうアルね!」
テーブルいっぱいにところせましと並べられた自身の好物の料理の数々や所々折り紙で作られたマイ◯ロさんが散りばめられた可愛らしい茶屋内の飾り付けを見て、黛藍が感激してお礼を伝える。
「今日の主役がそんな事気にせんで良いのじゃぞ。
それより黛藍、せっかく作った料理が冷める前にドンドン食べるのじゃ。ワシや愛満が腕を振るった料理じゃから、ほっぺが落ちるほど旨いぞ!」
「そうアルね♪せっかくの美味しい料理でアルよ、温かく美味しいうちに食べようアル!」
黛藍が嬉しさのあまり泣き笑いしながら話し。
朝早くから準備していてお腹ペコペコのタリサ達5人の好物も愛満がこそっと作ってくれてあるなか、皆でボリュームある誕生日会使用のごちそうを『美味しい、美味しい』とモリモリと食べ進め。
「うわ~~~大きな海老フライだ!それにタルタルソースも有るよ。美味しそう~♪」
「…モグモグ……モグモグ……唐揚げ美味しいへけっ!」
「……フフーーーフー……アッチ!ハフハフ……うん!やっぱりラザニアは旨いのう~♪」
「…ハフハフ……う~~~ん♪いつ食べても愛満が作ってくれる揚げ出し豆腐は美味しいアルね♪」
「拙者も愛満がお祝い事に作ってくれる、この赤飯が大好きでござるよ♪」
「この鯛の塩焼き美味しいニャ♪大きな鯛が丸々一匹塩焼きで焼かれているニャンよ!業火で最高ニャ!」
ある程度料理をお腹にたっぷり納め。満足した様子の愛之助達は、次に各自が準備した思い思いの誕生日プレゼントを黛藍へと手渡ししていく。
◇◇◇◇◇
「黛藍、誕生日おめでとう!僕とマヤラからはパンダの刺繍がされた小物入れだよ。使ってね♪」
「黛藍、誕生日おめでとうへけっ。僕からは散歩好きの黛藍に散歩用の麦わら帽子へけっ。ちゃんと風で飛ばないように首紐付きへけっよ♪」
「黛藍、誕生日おめでとうでござるよ!
拙者からは、黛藍の『包子屋』のマスコットでもあるパンダタンの刺繍が入った新作のエプロンとシャツのセットでござるよ!
各自洗い替えように10着づつ作ったでござるから、遠慮せずに着てほしいでござるよ。」
「誕生日おめでとうなのじゃ。ワシからは丈山に作ってもらった竹製のランプなのじゃ。
前に黛藍が何やら竹を見ておると心が和むと言っておったのを思い出しての、気に入ってもらえたら幸いじゃ。」
「黛藍、誕生日おめでとう。俺からは手作りのブレスレットになるぜ。
前に俺がしてる皮を編み込んだブレスレット欲しいと言ってたろう。だから愛満にお願いして材料を揃えてもらって作ったんだ。良かったら使ってくれよ!」
「黛藍、誕生日おめでとう。僕からは黛藍が前から欲しがってたパンダ型の焼きゴテになるよ。
これで黛藍が作った包子に焼き印が押せるね。後で使い方や注意点も教えるから楽しみに待っててね。」
「黛藍、おめでとうアル!私と曙紅からはササ族専用の靴20足になるアルよ!
王都やササ族の里にしか売ってない特殊な靴アルから困ってると思い。沢山の種類の靴を取り寄せたアルよ。後で楽しみに見てアルね♪
あっ、それから王都の皆達(家族)から、今日来れなかった謝罪の手紙とプレゼントが山のように届いてるアルよ。
一応持ってこれる分だけリヤカー2台分、曙紅と2人で運んで来たアルが、後で家にも取り来てほしいアル。
まだまだ沢山プレゼントがあって家の1部屋がプレゼントで埋まってしまってるアルよ。」
「黛藍おじちゃん、誕生日おめでとうアル。
僕達からは皆で描いた黛藍おじちゃんの似顔絵とササ族の歌をプレゼントするアルね!」
「黛藍、誕生日おめでとうニャ♪
モカからは得意なギターの演奏をプレゼントするニャンね。」
タリサや愛之助達みんなから黛藍へと誕生日プレゼントが送られるなか。
黛藍の甥の桃紅、花紅、梅紅、竹紅達4人からは、皆で描いた黛藍の似顔絵とケットシーのモカとコラボした可愛い躍り付きのササ族の歌がプレゼントされる。
そして桃紅達の可愛い歌と躍り、モカのギターの演奏の余韻に癒されていると突然店内が暗くなり。
愛満がロウソクの灯った大きな誕生日ケーキをワゴンに乗せて運んで来て、美樹や愛之助達がバースデーソングを歌い出す。
「「「「「ハピバ~スデ~トゥ~ユ~♪ハピバ~スデ~トゥ~ユ~♪ハピバ~スデ~リア黛藍~♪ハ~ピバ~スデ~トゥ~ユ~♪」」」」」
「黛藍、誕生日おめでとう!!
願い事をしながらロウソクの火をフッーと息を吹きかけ消してね。」
「願い事しながら火を吹き消すアルカ?」
「うん。誕生日ケーキのロウソクの火は、願い事をしながら吹き消すと願いが叶うって僕の住んでた所では言われてるんだ。
だからほら、フッーと吹き消してみて」
初めて聞く誕生日ソングや初めて見る大きな誕生日ケーキ、ロウソクを吹き消す事に驚いている様子の黛藍であったが、愛満に言われたように何やらお願いすると、勢い良くロウソクの火を吹き消す。
「「「「「黛藍 誕生日おめでとう~~♪」」」」」
改めて皆からのお祝いの言葉や拍手が鳴り響くなか、お待ちかねの誕生日ケーキの時間になる。
◇◇◇◇◇
「美味しいアル~♪ふあふあしていてクリームが濃厚で、甘くてとっても美味しいアル。王都で食べてたケーキと全然違うアルよ!」
「本当アル!花紅お兄ちゃん、このケーキ歯が痛くならない甘さでスゴく美味しいアル!このケーキなら何個でも食べたいアルよ♪」
「おいしいアル~♪」
「本当に美味しいアル!王都のケーキは甘いだけで美味しくなかったがアルが、僕このケーキやケーキに飾られている黄色いフルーツ好きアルよ♪」
桃紅4兄弟も『美味しい、美味しい』と喜ぶなか、愛之助達もケーキをモリモリ頬張りながら楽しそうに桃紅達とお喋りしながら
「桃紅、本当に美味しいでござるね。コアントローの風味がほんのりして、チーズ独特の濃厚なクリームが柑橘のフルーツと合っていて美味しいでござるよ。」
「うん!本当に美味しいアルね。」
「…モグモグ……モグモグ……旨いのう~~~♪スポンジがふあふあで、この愛満が作ってくれたケーキも和菓子と同じで何個でも食べれるのじゃ~♪」
「おいちいよ!」
「花紅が言うとおりケーキもフルーツも美味しいへけっね。
それにケーキの中に黄色い果物がいっぱい入ってて、色鮮やかで見た目も綺麗で最高へけっ。」
「本当アル!見た目も綺麗で美味しいなんて最高のケーキアルよ♪」
誕生日ケーキを食べ進める。そして愛満の隣の席に座っているタリサも愛満へと話しかけ。
「う~~~~ん♪この誕生日ケーキもスゴく美味しいね、愛満。けど何のケーキなの?それに誕生日ケーキなのに苺じゃないんだね。前に愛之助と読んだ絵本では、誕生日ケーキには赤い苺が沢山のっていたんだけど……」
「あぁ、それはね。この誕生日ケーキは黛藍が柑橘とチーズが好きだから、いつもは愛之助達に合わせて苺を使うところを黛藍使用に夏みかんやオレンジ、いよかん、ポンカン等の和柑橘を沢山使用して作ったんだ。
それにクリームには、クリームチーズや風味付けのオレンジの香りが楽しめるコアントローを使ってチーズクリームにしたんだよ。」
「へぇ~この黄色いやオレンジ色の果物、何かと思ったら夏みかんやオレンジ、いよかん、ポンカンなんかを使ってるんだね。だからこんなに瑞々しくジューシーで美味しいかったんだ。
それにクリームチーズを使ってるクリームだからか、コクがあってどことなく濃厚で、苺ケーキと違った美味しさだね♪」
「本当に!それは良かった。なら明後日くらいのおやつにタリサ達が好きな苺を沢山使った『苺ケーキ』を作ってあげるね。」
愛満とタリサが話していると2人の話を聞いていた美樹が少し意地悪して
「おっ、それともまたこの『和柑橘のチーズケーキ』の方が良いんじゃねぇか、タリサ?」
「えっ!?ううん!このケーキも美味しいけど苺のケーキもスゴーく美味しいから、明後日のおやつは苺のケーキが良いよ。
それにこのケーキは黛藍のためのケーキになるんだから、黛藍と一緒におやつを食べれる時に作ってもらった方が良いと思うんだ。」
一生懸命、大好きな苺を使った苺ケーキを愛満に作ってもらうためタリサが話し。美樹や愛満達がその様子を微笑ましそうに見つめ、お喋りを楽しみに始める。
するとタリサとは逆の愛満の隣に座っているケットシーのモカが
「愛満、このケーキも美味しいニャンがこの海鮮巻きも美味しいニャね!」
あの後、鯛の塩焼きを丸々一匹1人でペロリと食べ。今はケーキと海鮮巻きを交互に食べるという、変な食べ方をしているモカが愛満に話しかけてくる。
「えぇー!モカ、ケーキと『海鮮巻き』交互に食べたら美味しくないよ。」
「そんニャことニャいニャンよ。
ケーキのふあふあスポンジと爽やか甘さが口の中に広がった後、海鮮巻きを食べると海鮮の旨さや巣飯、ワサビ醤油が口の中をリフレッシュさせてくれるニャ!」
「えぇ~そうかなぁ?」
「そうニャンよ!愛満やタリサ達も試してみるかニャン!」
「えっ!僕は良いよ、遠慮しとく。」
「そうかニャン?美味しいのに、この美味しさが解らニャいなんて、タリサの舌はまだまだお子様ニャね。もったいニャいニャ。」
タリサとモカの相容れない小さな攻防が有りながら、巨大な和柑橘やクリームチーズを使用したクリームを使った誕生日ケーキをみんなで堪能して、『黛藍の誕生日会』は変なアクシデントも無く、和気あいあいと楽しげに過ぎていくのであった。
ブックマーク、お気に入り、評価をしてくださった方、本当にありがとうございます。
誤字、脱字が多々ある作品ですが、これからもよろしくお願いします。