冷やし中華と袋屋の夏季限定・新メニュー
その日 万次郎茶屋には、キツネ族の青那が愛満達を訪ねて遊びに来ていた。
◇◇◇◇◇
「お店の方はどう?青那1人だとお客さん増えて大変じゃない? 」
青那が1人で切り盛りするインスタントの袋ラーメンを調理して提供する『袋屋』の事を愛満が心配して聞く。
「そうなんだコン。お客さんが沢山来てくれるのは嬉しいコンが、1人では大変だったコン。
それで朱冴兄さんに相談したら、他の兄弟の上の兄さん達に声をかけてくれ。
黄輔兄さんの息子と緑朗兄さんの息子で、今年成人した将黄と美緑の2人がお店を手伝ってくれる事になったコン!
それに朱冴兄さんのお店の方も白李兄さん家族が村に移住して来てくれて、朱冴兄さんのお店を手伝ってくれる事になったらしいコン。」
「へぇ~そうなんだ。それは良かった。
これからますます天気が良くなって気温も上がってきて、暑くなってくるから、調理台の前で1日中働く青那の体調面とか心配だったんだ。
だからお店に人が増えると聞いて、ひと安心したよ。本当に良かった。」
青那1人で調理から接客まで頑張っている事を心配していた愛満は、従業員が増える話を聞き。
ひと安心した様子で『良かった、良かった』と話ながら、青那のコップにお代わりの『カルピスソーダ』を注いであげる。
そうして、しばらく愛満と青那の2人が何気無い話をしていた所、突然何やら考えだし。
「……うーん………あっ、そっか!?さっきの話、何か聞いた事有るような気がしてたら、この前いなり寿司を作った時に朱冴がフラッとやって来てね。
その話を話してくれていたんだった、ごめんごめん。けど、何でこんな大切な事忘れてたんだろう?」
不思議がっていると側に座り話を聞いていた山背が、小声でコッソリ
「それはのう。あの日愛満が作っては消えていく『いなり寿司』を作るのに必至でコロッと忘れしまっておるのじゃよ。
あれは作っておるもんの方としてみれば、軽い悪夢のようなものじゃったからのう~。」
呟き、一人ほふく笑む。しかしそんな事覚えていない愛満や山背の呟きが聞こえていない青那の2人は楽しげに話を続け。
「けど『袋屋』に2人も働いてくれる人が増えたなら、青那も休みが増えて、今日みたいにゆっくりできるね。良かった、良かった!」
ひと安心した愛満は更に続けて、最近ポカポカした陽気の日もどんどん増えてきて、たまに少しムッとするような蒸し暑さの日もでてきた事もあり。
ここいらで夏季限定になる、蒸し暑い日にピッタリな冷たい麺料理の新レシピを伝授する事を青那に持ち掛ける。
そうして青那からの承諾を受けた愛満は、早速 万次郎茶屋の台所に移動し。青那が店長になる『袋屋』の夏季限定になるツルツルしこしこの麺が美味しい、冷たい麺料理作りを始めるのであった。
◇◇◇◇◇
「そうそう、胡瓜は千切りに。レタスは太めの千切りで大丈夫だよ。それからトマトはくし切りにね。」
「解ったコン。しかし冷たい麺料理があるなんて驚きコン!冷たい麺料理美味しいコン?」
冷たい麺料理を食べた事のない青那は、不安そうに愛満に聞いてくる。
「うん!冷やし中華美味しいんだよ。今日は僕の好きな生麺タイプのラ◯さんの醤油ダレとゴマダレの二種類を作るから青那も美味しさに驚くはずだよ。楽しみに待っててね。」
青那と2人で和気あいあいと楽しそうに調理していた所、食べた事のない美味しい食べ物が食べれるとの話しを聞きつけた愛之助達がお手伝いすると言ってやって来て、袋屋の夏季限定メニュー作りに参加する事になる。
「なら愛之助は湯がいたささみをほぐしてもらおうかなぁ。タリサとマヤラと光貴の3人には茹で卵と茹でた海老の殻をむいてくれる?」
「「は~い!」」
「はいでござるよ!」
「はいへけっ!」
愛満のお願いに、途中参加組の愛之助達4人は元気良く返事をして、初めて食べる事になる美味しい食べ物への期待感でワクワクしながらニコニコと嬉しそうにお手伝いしていき。
インスタント袋麺を使った『冷やし中華』作りは順調に進んでいき。
「愛満~、焼けたコン!しかし錦糸玉子難しいコン。」
愛満指導のもと、冷やし中華の具材の中で一番めんどくさい作業になる『金糸玉子』を悪戦苦闘しながら何とか焼き終え。青那は嬉しそうに愛満へと焼き終えた金糸玉子を見せる。
「うんうん、錦糸玉子難しいよね。僕も上手く焼けるようになるまで錦糸玉子作るの苦手だったよ。
けど青那の焼いた錦糸玉子破れたり、焦げたりしてなくて綺麗に焼けてるよ。」
「本当コン!ありがと~うコン!」
「うん、バッチリだよ。
今度お店で作る時も今日教えたように片栗粉を加えたり。1度ザルで濾したら薄焼きにしても途中で破けないし。白身の目立たない黄色い綺麗な錦糸玉子が焼けるよ。」
「本当コンか!?愛満、教えてくれてありがとうコン!頑張るコン!」
「そうそう、その調子だよ!
じゃあ茹でた冷やし中華の麺も冷水でしめた事だし。醤油タレとゴマタレ用の2種類の具材も準備できたから、皆で盛り付けしょうか!」
盛り付ける人のセンスが密かに解ってしまう『冷やし中華』の盛り付けを皆で楽しく盛り付け始め。
「出来たでござるよ!」
「僕も出来たへけっ!しかしいろんな具材がのって美味しそうへけっね。」
「出来た!う~~~~ん♪美味しそう。僕もうお腹ペコペコだよ。愛満、早く食べたい~!」
「マヤラもおにゃかちゅいた!」
自分で盛り付けさせてもらって完成した2種類の味の冷やし中華を前に、お腹ペコペコのタリサ達が早く食べたいと騒ぎだし
「そうだね。みんな完成した事だし、店番をしてくれている山背を交えて皆で試食会しょうか。」
「あい!」
「やったへけっ!」
「試食♪試食♪」
完成したばかりの2種類の冷やし中華を茶屋内へと運び移動し。1人店番をしてくれていた山背へと声をかけ。
「山背1人で店番ありがとう。冷やし中華出来たから山背も一緒に試食しょう。」
「山背、早く早く!ココに座って、冷やし中華美味しそうだよ。」
「こっちよ~♪」
「山背の分も皆で盛り付けてあげたへけっよ!」
タリサ達が待ちに待った2種類の『冷やし中華』の試食会が始まるのであった。
◇◇◇◇◇
「う~~~~ん♪何コレ!?この冷やし中華 美味し~い!」
「本当に美味しいでござるね!
ハムや錦糸玉子、トマト、むき海老、レタスなどの具沢山の具材が沢山乗ってるのも嬉しいでござるし。麺がモチモチシコシコで美味しいでござるよ!」
「美味しいへけっ♪醤油ダレもゴマダレもどっちの冷やし中華も美味しいへけっど、どちらかと言うと醤油ダレの冷やし中華の方が程よい酸味を感じられて、シコシコした麺と具材にもあっていて好きへけっ!」
「ひやちちゅうか おいちいね~♪マヤラこれちゅきよ♪」
「…チュルチュルル~♪…モグモグ……モグモグ…………うんうん。この透き通るようなシコシコした麺は歯応えも有り、喉ごしが良く旨いのじゃ!
それに甘い物好きのワシには、濃厚で深みのある甘めのゴマダレの方が合っており。どちらかと言うとゴマダレの方が好きなのじゃ♪」
いつもの万次郎茶屋メンバーが初めて食べる『冷やし中華』の感想をのべるなか、黙々と2種類の冷やし中華を食べ比べていた青那が
「本当に『冷やし中華』美味しいコン!
酸味のきいた醤油ダレと胡麻の風味豊な甘めのゴマダレを選べるのも楽しく美味しいコンし!
愛満から習ってガラスの器や具材も盛り付けるギリギリまで冷やしたコンから、ほどよい冷たさのまま最後まで食べれて、食べる人の事を考えられた優しさコンね。
それに茹でた麺も冷水でさらして良く冷やして水気を切ってあるコンから、全体が良く冷えていて、これからの暑い日にはピッタリコン!」
『袋屋』主人の青那も大満足のなか、醤油ダレとゴマダレの2種類のタレから選べる『冷やし中華』が『夏季限定』であるが袋屋の新メニューとして登場するのであった。
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