マーブル豆乳ゼリーと相乗り馬車と孤児院
「今日は忙しいところ、時間を作ってもらいすいませんね。
こちら、私が古くから付き合いのある冒険団の『赤い稲妻団』のリーダーで狼族のショウ、サブリーダーで虎族のコウ。
犬族のサツキ、猫族のリッカ、翼族のメイ、熊族のマショ、羊族で双子のマイとラムの8人になります。」
ギルド長の琴柏谷が種族や年齢がバラバラになる8人を愛満へと紹介する。
「それでこの前愛満に相談した、隣町から朝倉村の間を往復する乗り合い馬車の馬車の運転と護衛を請け負ってくれる人達になります。
サツキ達とは古くからの付き合いになりまして、個人個人のレベルも高いですし。一番に人柄も良く、責任感も強く、仕事も真面目にしてくれます。
なので乗り合い馬車の件を相談するのショウ達しかいないと思い。
この前相談させてもらった所、快く引き受けてくれると返事も貰えましたので、善は急げと今日紹介させてもらう事にしました。」
その日の万次郎茶屋には、ギルド長の琴柏谷と元冒険者の『赤い稲妻団』のメンバー8人が愛満を訪ねてやって来ていた。
「そうなんですか、どうなる事かと心配してましたが、良い人が見つかって良かったです!」
琴柏谷の話を聞きながら、9人におもてなしのお茶とお茶菓子を振る舞っていた愛満が答え。
「どうぞ、家で作ったお茶菓子なんですが、良かったら食べて下さいね。
あっ、おかわりもたくさんありますから、遠慮せずにたくさん食べて下さいね。」
緊張した表情で愛満の方を見ている『赤い稲妻団』のメンバーにお茶やお茶菓子を進める。
すると最初はなかなか手を出そうとしなかったのであるが、メンバー内の甘い物好きの3人が恐る恐る食べ始め。
「ありがとう。……えっ!何コレ!スゴく美味しいわ!」
「ほ、本当に美味しい!何コレ!?
白いプルプルした優しい甘さの部分と、赤い色したフルーティーでいて、少し固さのある2種類プルプルした物がスゴく美味しい!
それぞれでも十分美味しいんだけど、一緒に食べても美味しいわ♪本当に何コレ!?初めて食べる食感のお菓子だわ!」
「ショウ達も食べてみてよ!王都のお菓子と違って、甘さ控えめだからショウ達でも普通に食べれる甘さだよ。
それに初めて食べる冷たくてプルプルした食感のお菓子で、面白いよ!」
メンバーの1人に進められるまま甘いものが苦手で、お茶ばかり飲んでいたショウ達も半信半疑で食べ始める。
「…………ほ、本当だ!王都で売られている菓子と違い甘さ控えめだから、俺でもペロリと食えるぜ!」
「本当に旨いなぁ~!それに今日は暑かったから、冷たくてスルスル入るぜ。」
「でしょ!プルプルしていて、喉ごしも抜群だからペロリと食べれちゃうよね。」
サツキ達の言う通り、プルプルしていて、甘さ控えめの『マーブル豆乳ゼリー』の美味しさにショウ達は驚き。
その食べやすさから『マーブル豆乳ゼリー』を食べ進めていると、おかわりを持った愛満がやって来て、空の器と取り替えてくれ。何やら嬉しそうに
「皆さんの口に合ったようで良かったです。
この『マーブル豆乳ゼリー』と言うお菓子 実は、琴柏谷さんから皆さんのチーム名『赤い稲妻団』と事前に聞いていたので、赤い稲妻をイメージして作てみた菓子なんですよ。
甘い物が苦手な方もいると聞いたので、甘さ控えめにして、白い部分が豆乳ゼリーになり。
赤い稲妻に見立てたベリージュースで作ったゼリーを縦長の器に豆乳ゼリーと交互に流し入れたんです。
まぁ、いくつかは赤い稲妻に見えない物もありますけどね。
あっ、まだまだおかわり有りますから、遠慮せずに食べて下さいね。」
今日のお茶菓子の『マーブル豆乳ゼリー』が赤い稲妻団をモチーフにして作られたと話してくれ。
何やら照れ笑いを浮かべた愛満は、お代わりもあるからと話し、足早に空の器を茶屋の奥へと片付けに行った。
そんな愛満の何気ない心遣いにショウ達は言葉を失い。
メンバーで顔を見合わせ照れそうに笑い合うと、自分達のパーティーの名前がモチーフになった『マーブル豆乳ゼリー』を夢中でおかわりを繰り返し。『美味しい、美味しい』と食べ進めていった。
そうしてお茶とお茶菓子の『マーブル豆乳ゼリー』をたらふく食べ。愛満とも打ち解けたショウ達は、また緊張した表情に戻り。
ある隠していた真実を正直に話し始め、今回の仕事を引き受けた訳などを話す。
◇◇◇◇◇
ショウ達は、王都にある冒険者の夫婦が開いた孤児院出身の者達が集まり出来たチームらしく。
王都を中心に稼ぎながら、自分達が育った孤児院を支援していた所。ある日突然、貴族から孤児院の立ち退きを迫られ。
ギルドや関係各所に相談しても相手が貴族と言う事もあり。素直に立ち退くしか道はなく。
歯痒い思いをしながらも、孤児院を経営している高齢のお父さん先生とお母さん先生を交え。
これからどうするかなど話し合ったのだが、まだまた幼い子供達がいる事も有り、なかなか良い解決案もでず。
立ち退き日も一刻一刻と迫るなか、日々頭を悩ませていた所、琴柏谷から今回の仕事の誘いを持ちかけられ。
琴柏谷から仕事内容や詳しい話を聞くと、毎日の賃金も貰え。
住む家もあちらで用意してくれるとの好条件の話になり。
馬車の運転や警護の仕事は、ゆくゆくは孤児院の子供達が大きくなると働け。
孤児院出身者だと差別され、良い職につけない現実になか、将来孤児院の子供達が職に困らないと考えたショウ達は、高齢のお父さん先生とお母さん先生に心配かけたくないと簡単な説明だけをして、この話を受けたらしい。
そして隣町には、同じ孤児院出身者の夫婦が経営している宿があり。仕事で帰れなくなり隣町に泊まる際には、その宿を格安で利用出来き。
乗り合い馬車を利用する客も、その宿を利用してくれるかも知れないと考えなどの話を8人は、正直にしてくれたのであった。
◇◇◇◇◇
そして話し終えたショウ達8人は、目に涙を浮かべながら申し訳なさそうに
「こんなに自分本意の邪な考えを持つ俺達だけど、今回の仕事の話を引き受けても本当に良いでしょうか?」
「俺達には、またとないありがたい話だけど…………」
「初めはメンバーで話し合って、この事は黙っていようと話してたんだけど…………琴柏谷や愛満に、こんなに良くしてもらって、黙っているのが心苦しくなってきて…………。」
「ごめんなさい。自分が黙っていようと言ったんです。
ただでさえ孤児院出身者と言うだけで、王都では理不尽なめに合う事がたくさんあったし。
自分達だけじゃない、孤児院のみんなも連れてくると話したら、この話し事態が無くなるんじゃないかと心配で……。」
「サツキだけじゃないんです!私も黙っていようって言ったんです!
ショウ達は、最後まで騙すみたいで嫌だって言ってたのをこんな好条件の仕事が私達に巡ってくる事なんて滅多に無いんだから、ショウ達の思いだけで私達のチャンスも潰すのかって、脅すような事言っちゃたりして……。
他にもお父さん先生もお母さん先生も高齢なんだから、1日でも早く立ち退きの件で悩んでいるのを楽にしてあげようとか……孤児院の子供達の生活や、これからの事もかかってるんだからって、なかば脅すように無理矢理黙らせたんです。
………ごめんなさい、本当にごめんなさい。」
「………自分も黙っていた時点で同罪なんです。本当にすいませんでした。」
「………騙すみたいな事して、本当にごめんなさい。」
「………すみません。」
ショウ達『赤い稲妻団』の涙ながらの話と謝罪を聞き終えた愛満は、少しおどけて優しく微笑みかけながら
「だからみんな緊張した顔してたんだね。
てっきり僕の作ったお茶菓子が美味しくないのかと心配しちゃったよ。
それから正直に話してくれて、ありがとう。
けど、家を建てる前に話してくれて本当に良かったよ。
8人用の家と子供達も住む家じゃ、造りも大きさも違うからね。それにしても、その貴族頭に来るね!普通、子供達の住む孤児院を取り上げようなんて頭おかしいんじゃない!」
「本当ですよ!私がそんな小さな事で一度持ちかけた話を無かった事にする薄情な人間に見えますか!?
それに孤児院の子供達や先生夫婦は、どちらにいらっしゃるんですか?そんな強欲者の住む王都より、1日も早く朝倉村に呼んであげなさい。」
「そうだ!それに孤児院の子供達も1日も早く朝倉村に呼んであげなくちゃ、せっかくのたのしい夏休みが始まっちゃうよ!」
愛満も琴柏谷も孤児院の土地を取り上げようとする貴族に怒り心頭で、愛満などすでに孤児院の子供達の学校生活を心配しており。
ショウ達の心配していた最悪の事態にはならず。
逆に8人の泣いてる姿を見た、万次郎茶屋奥でタリサやマヤラと話の邪魔をしてはいけないと大人しく遊んでいた。愛之助達が心配した様子で寄って来て、ティッシュやハンカチ、おしぼり等を手渡し。
「正直に話して偉いでござるよ!男らしかったでござる!」
「そうだよ!良く頑張ったね!」
「ちょうだよ!みんなちゅごいがんばちゃね!」
涙がこぼれるたびに慌てた様子で、慰めてくれる。
◇◇◇◇◇
こうして朝倉村に隣町を行き来する乗り合い馬車や、朝倉村内を巡回する乗り合い馬車。
観光客相手の力自慢の獣人達の雇用にも繋がる人力車等のショウ達の会社が設立され。
会社近くには、社員寮と共にお父さん先生とお母さん先生を含めた子供達が、自給自足の生活が出来る孤児院を愛満の力を使い建てられ。
ショウ達や孤児院の皆は、朝倉村の一員に仲間入りするのであった。
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誤字、脱字の多い作者ですが、これからもよろしくお願いします。




