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生姜ミルクと眠れない日の夜の過ごし方



その日も1日の仕事を終え、我が家自慢の桧風呂に入った愛満は、毎日の日課のでもある台所の火の気の確認や家の戸締まりを確認して回っていた。


すると愛満以外の住人達は自室でくつろいでいたり、就寝してるはずなのに、少しヒヤリとする暗闇のなか誰かが廊下を歩く足音が聞こえてくる。

顔の見えぬ誰かの足音に一瞬驚き。飛び上がりそうになった怖がりな愛満であったが、恐る恐ると握り締めた懐中電灯を足音のする方に向けながら、勇気を振り絞り声をかける。


「だ、誰?誰いるの?」


するとそこには、愛之助がプレゼントしたお気に入りのキリンのぬいぐるみを握り締め。

今にも泣きだしそうな顔をした光貴が懐中電灯の明かりに照らされながら立っていた。


「光貴、どうしたの!?寝てたんじゃなかったの、それとも怖い夢でも見た。」


「よ、愛満~………ぅ、う、ぅ……愛満~……ぅ、う……」


暗闇の中に1人たたずむ光貴を心配した愛満が声をかけるのだが、光貴は愛満の顔を見て安心したのか、愛満の名前を呼ぶだけでポロポロと涙を流す。


「ほら、おいで、抱っこしてあげね。」


愛満はそんな光貴を優しく抱き上げ、ダイニングルームに戻ると光貴が泣き止むまで優しく抱っこしてあげる。


そしてしばらくすると光貴の涙も止まり。涙でぐちゃぐちゃになった顔をタオルで優しく吹いてあげながら、どうしたのかと話を聞く。


すると眠っていたら怖い夢を見て、あまりの怖さに目が覚めてしまい。愛満の部屋に行くも誰もおらず。そのまま愛満を探して家中歩いていたらしい。


「………で、でね、ヒック、こ、怖い夢見たへけっ。…………ヒック……ヒック」


「そうだったんだ。ゴメンね、光貴。怖かったね。

けどもう大丈夫だよ。今度怖い夢見たら僕がそんな夢食べてあげるから」


「ほ、本当へけっ?怖い夢見たら愛満が食べてくれるへけっか?」


「うん。光貴が怖い夢見たら僕がモグモグと食べてあげるよ。それに光貴の枕元に鼻が少し長くて、白と黒のぬいぐるみが置いてあるでしょう?」


「うん、置いてあるへけっ。」


「あのぬいぐるみはね。『バグ』と言って、光貴が怖い夢を見たら食べてくれる優しい動物なんだよ。

だからもし僕が見つからない今日みたいな時は、枕元のバグさんにお願いして、怖い夢を食べてもらうと良いんだよ。」


光貴と愛満が話していると、光貴が部屋にいない事に気付いた愛之助が慌てた様子で2階から降りてくる。


「愛満!大変でござるよ!光貴がいないでござる!

光貴の部屋の扉が開いていて、部屋の中を見たらいないでござるよ。どうしょうでござる!

トイレも見たけどいなかったでござる、どこに行ったでござるか!心配でござるよ!愛満知らないでござるか!?

あーぁ、どうしょうでござる、どうしょうでござる……………………………………………………………………あっ!いた。」


慌てた様子の愛之助が愛満に訴えながら、不安と心配でその場を行ったり来たりとうろうろしていると愛満にダッコされて隠れて見えなかった光貴がヒョコリと顔を出し。


「愛之助、心配してくれてありがとうへけっ。僕ならココにいるへけっ。」


お礼を言いながら自分がここにいることを伝える。

するとその騒ぎで自室でくつろいでいた美樹や黛藍も何事かと部屋から飛び出しきて、ダイニングルームが一気に騒がしくなる。


「何かあったのか、大声が聞こえたんだけど?」


「どうかしたアルか?」



そうして、なんだかんだとこの騒ぎでみんな眠気がふっ飛んでしまい。愛満は皆がぐっすり眠れるある飲み物を作ってあげる事にするのであった。



◇◇◇◇◇



「お待たせ。スィーツ風の『生姜ミルク』だよ。

5月とは言え、まだまだ夜は肌寒い時があるから、温かい生姜ミルクを食べるか飲んでぐっすり眠ってね。」


何故かスプーン付きのマグカップを皆に渡しながら、愛満が説明する。


「愛満 あいがとうへけっ。」


「ありがとう、愛満。」


「愛満、ありがとうでござるよ。」


「愛満、ありがとうアルヨ!」


愛満からマグカップを受け取った愛之助達は、いつもと違うホットミルクをジッーと見ながら恐る恐るスプーンで食べ始める。


「えっ!なんだこれ!?牛乳なのにゆる~く固まってるぞ!それに生姜の風味がほんのりして旨いなぁ。」


「本当でござる!けど、ゆる~くフルフルと固まっていて美味しいでござるよ♪」


「美味しいへけっ。」


「うん、うん。黛藍も好きな味アルね。………う~ん、そうアルね。前に愛満が作ってくれて食べたアレと似てるアルよ。

アレ、アレ、アレアルよ!えーっと、あ、あ、杏仁豆腐アルよ!」


「どう?美味しい?」


美樹達が騒ぐなか、台所で片付けをしていた愛満が戻って来て『生姜ミルク』を楽しんでいる愛之助達に愛満が問いかける。


「おぅ、美味しいぜ!」


「ゆる~い杏仁豆腐みたいで美味しいアルよ!」


「美味しいでござるよ♪」


「美味しいへけっ!けど、なんでこの『生姜ミルク』はフルフルしてるへけっ?」


光貴が「生姜ミルク』を食べてる間中、ずっと不思議だった疑問を愛満に訪ねる。

すると今だ甘えて、戻って来た愛満の膝の上に座っている光貴の頭を優しく撫でながら


「あぁ、それはね。僕も眠れない時にお父さんが作ってくれていたから、作り方くらいしか詳しくは解らないんだ。ゴメンね。

けど本当に不思議だよね。ただ温めただけの牛乳に生姜のしぼり汁を入れ、軽く混ぜるだけで5分後には不思議とゆる~く、フルフルと固まるんだもん!」


「えっ!そんな簡単に作れるのか!」


「本当に不思議へけっね。」


「へぇ~~~不思議でござるね。」


「そんなに簡単に作れるアルか!」



◇◇◇◇◇



その後、愛満達5人は『生姜ミルク』を楽しみながらのんびりと話して、体の芯からポカポカと温まった光貴は、愛満と愛之助の3人で一緒に眠り。怖い夢を見る事も無く、ぐっすりと眠れるのであった。




◆◆◆オマケ◆◆◆



ちなみにその頃、愛満宅に有る山背城で爆睡している山背はと言うと


「………zzzzz……zzzzz………ハッ!何やら愛満宅の方から旨い物を食べ……てる…zz…気配が……zzz……するの…z…じゃ……zzz……zz……zzzzz」


美味しい食べ物の気配を敏感に察知して、布団の上に仁王立ちするのだが眠気に負けてしまい。力無く布団の上に倒れこんでしまった。




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