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レアチーズケーキ・柑橘ソースと大吉村のエアリス



その日 万次郎茶屋では、はるばる大吉村から朝倉村の愛満を訪ねてやって来たお客さんおもてなししていた。



◇◇◇◇◇



「へぇー!ならその髪色はお母さん譲りで、エアリスのお母さんは人魚族なんだ。

それにしてもこっちの世界には人魚姫いるんだね。少し驚いちゃったよ!」


愛満がこの世界に来てから初めて出会う、綺麗な水色の髪色をした。犬族とエルフ族の両親の間に産まれた大吉村出身の父親と人魚族の母親から産まれた、3つの種族の特徴を持つエアリスと話をしていた。


「うん。普通、陸の人が海の中に住む人魚族と結婚する事は珍しいんだけど、大吉村で生まれ育って漁師の仕事をしていた父ちゃんが、仕事中に仕掛けの編みに絡まって困っていた母ちゃんを見つけ。網を切って助けてあげたらしいんだ。」


「なんか少女漫画とかに有るようなロマンチックな出会いだね。」


「その時助けられた母ちゃんは、生まれ初めて里から遠く離れ、1人で遊びに来た不安や、編みに絡まり身動きとれない恐怖に加え。初めて見る筋肉ムキムキの陸の人間にビックリして怖かったらしいんだ。」


「そりゃあ、怖かったろうね。海で働く人はこう言うと誤解されるかもしれないけど、海焼けした肌と漁仕事で鍛え抜かれた筋肉質のガッシリした体格で、パッと見、圧倒されちゃうもんね。」


エアリスの話に愛満が相槌を打つ。するとエアリスも母親似の自分の顔や体格を嘆きながら


「そうだよな。俺もたまに暗闇のなか、夜中にトイレで父ちゃんとばったり会うとビックリする時があるよ。

あっ、それで母ちゃんと父ちゃんの馴れ初めの話なんだけど、恐怖で震える母ちゃんに何も言わずテキパキと体に絡まった網を父ちゃんが取ってくれ。

その後も『気をつけろよ』って頭を1度優しく撫でるだけで、そのまま立ち去る父ちゃんの姿に海の男を感じた母ちゃんが一目惚れしたらしく。」


「そりゃあ、エアリスのお母さんも一目惚れする気持ち解るよ。エアリスのお父さんカッコいいね!」


「そうだろ!父ちゃんカッコいいだぜ!

それで母ちゃんは、その日から毎日父ちゃんをかん……見てたらしく。

ある日海の上の姿だけじゃ、どうしても我慢できなくなった母ちゃんが人魚族の里に住んでる。魔女のお姉さんの家に厳重に保管された、陸でも生活出来る魔女のお姉さん一族秘伝の薬をりゃくだ………貰って。

その日のうちにお父さんの所に押しかけ女房したんだって。」


「スゴいでござる!エアリス殿のお母上は、お父上のためにそこまでするなんて、情熱家でござるね。」


愛満と一緒に話を聞いていた愛之助がエアリス母のエアリス父への情熱に何故か感動していると、その横では一緒に話を聞いていたタリサと山背が愛満にコッソリ。


「…………愛満、さっきの話じゃが、ワシの聞き間違えじゃなかったら毎日監視しておるや、薬を略奪したと聞こえたんじゃが、間違いじゃろうか?」


「愛満、タリサ知ってる。ああいうのストーカーて言うんだよね?」


「……………そうだね。けどタリサも山背も聞き流すのも大人の優しさだよ。」


タリサ達がエアリスに聞こえないように愛満とコソコソと話すなか、遠い大吉村からエアリスが愛満をわざわざ訪ねて来た訳は、愛満が母の日にと『巨大植物園』を建設したがいいが、園を管理する者がおらず。

誰か管理してくれる人がいないかと愛満達が知り合いに声をかけた所、エアリスが名乗り出てくれたのだ。


そうしていると最初に出したお茶やお茶菓子が無くなった事に気付いた愛満は、お代わりを取りに行くのであった。



◇◇◇◇◇



「みんな待たせたのじゃ。次のお茶菓子は、ワシが愛満にリクエストして作ってもらった柑橘ソースがかかった『レアチーズケーキ』なのじゃ!ワシに感謝して食すのじゃ!」


チーズ大好きの山背が昨日の夜に愛満にリクエストして作ってもらった。マーマレードジャムを使って作った柑橘ソースがかかり、美味しそうに盛り付けられた『レアチーズケーキ』が乗ったお皿を持って戻って来て、少々偉そうに話ながら皆に配ってあげる。


「えっと、山背ありがとう?」


「あいがとう?」


「山背ありがとうへけっ?」


チビっ子組だけが素直にお礼を言うなか、愛之助は山背の言葉を華麗に無視して


「美味しいでござるよ!レアチーズケーキの濃厚な味わいに柑橘ソースの甘酸っぱい味と風味が良くあってるでござるよ!

エアリス殿も食べてみるでござる。美味しいでござるよ。」


食べ始め、愛満に感想を伝え。愛之助の隣で食べていいのか戸惑っているエアリスに進め。

それを見ていたタリサ達も山背からの返事を待ちきれずに食べ始めてしまう。


「本当だー!このケーキ美味しい~♪

レアチーズケーキが濃厚なんだけど柑橘ソースと一緒に食べるからサッパリ食べられるね!」


「おいちいね~♪マヤラ こにょチージュケーキしゅきよ。」


「う~ん♪レアチーズケーキ美味しいへけっ!」


「レアチーズケーキ初めて食べるけど、皆の言う通り本当に美味しいね。

この白いレアチーズケーキの部分がしっとり濃厚な舌触りに柑橘ソースの爽やかな風味の組み合わせが僕は好きだなぁ♪」


リクエストした山背の言葉も聞かずに皆が食べる進めるという暴挙に山背がプリプリ怒りながらも、気をきかせた愛満が皆よりも2倍の大きさのレアチーズケーキを手渡し。

気を良くした山背は、自分がリクエストしたレアチーズケーキを一口食べ機嫌を良くした。



◇◇◇◇◇



こうして、大吉村のエアリスが朝倉村に移住してきて『巨大植物園』の初代植物園・園長にと就任するのであった。






◆◆◆オマケ◆◆◆



「ねぇねぇ、前から不思議だったんだけど。どうして愛之助達は、そんなにことこまやかに料理の感想を言ってくれるの?

料理を作った僕として嬉しいけど。」


前々から不思議に思っていた事を愛満が愛之助達に質問する。

すると何を言っているのか解らないとばかりなキョトンとした表情をする愛之助達が


「えっ!愛満、何を言ってるでござるか?

味の感想をことこまやかに言うのは当たり前でござるよ。

某漫画に書いてあったのでは、口から炎やビームが飛び出していたり、後ろに花が咲き乱れたり。あまりの美味しさに突然宇宙を漂っていたでござるよ。

申し訳ないでござるが拙者達には、そんなスゴい技は出来ないでごさる。

だから拙者達は、毎日美味しい料理や和菓子を作ってくれる愛満に感謝を込め、自分達の言葉で勝負してるでごさるよ!」


「そうだよ!愛満。

料理の感想はね、まず香り、見た目、味の感想を自分の持てる言葉をフルに使って言うんだよね。そうじゃなくちゃ、作ってくれた人に失礼にあたるんだから!」


「ちょうちょう!ちょうにゃんだよ、よしみちゅ!」


「その通りなのじゃ!ワシも某漫画を愛之助から読ませてもらったのじゃが、料理の感想をあのように表現するとは知らんかったのじゃ。

まるで自分の知らない新しい世界と出会えたようで、ワシはまた1つ成長したのじゃよ。

じゃが、愛満すまんのう~。修行中のワシの言葉では、まだまだ愛満の旨い料理を表現しきれないのじゃ。」


「愛満、僕まだまだ修行中で、あの本の師匠クラスみたいに後ろに花を咲き乱れさせれないへけっど、いっぱい食べ、いっぱい練習して頑張るへけっよ!」


「…………へ、へ、へぇー。そ、そうだったんだ。みんな頑張ってね。」


愛満宅にある書庫室の某料理の漫画のせいで、変な知識をインプットした様子の愛之助達からの驚愕の答えをもらい。苦笑いし言葉を濁すしかない愛満なのであった。



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