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トマトすき焼きと突然の強風



ピュ~ ピュ~~ ピュ~~~


「う~~~~ぅ!今日は風が冷たくて寒いでござる。」


開店前の茶屋先の掃き掃除をしている愛之助が、あまりの寒さについつい独り言を呟き。急いで掃除を終えると温かな茶屋内へと戻って行く。



◇◇◇◇◇



「愛満、外の掃除終わったでござるよ。

しかし最近ポカポカ陽気で過ごしやすかったでござるのに、今日は風が冷たくて寒いでござるね。」


使用した掃除道具を直しながら、茶屋内で開店準備をしている愛満達に話しかける。


「本当だね、昨日の雨で冬が戻ってきたような寒さだよ。

それにしても急に寒さが逆戻りするから、皆が風邪を引かないか心配だよ。

あっ、愛之助も寒い中の外掃除いつもありがとうね。」


「本当に寒いのう~!ワシは寒さに弱いから愛満が着せてくれた、このモフモフのベストがなければ今日1日布団から出られんところじゃったわい!」


「僕も今日は朝起きて寒さにビックリしたへけっ!

僕の住んでいた所は1年中温かかったへけっから、寒いってこう言う事を言うへけっね。」


急に冷え込んだ寒さの話をしながら4人はテキパキと開店準備を終わらせる。



◇◇◇◇◇



「愛満、今日は寒いね。つい2~3日前までポカポカして気持ちいい天気だったのに何で寒くなちゃったんだろう!こんなに寒いと外で遊べないからヒマだよ。

それに朝、お母さんから『こんなに寒いと風邪を引いちゃうかもしれないから、今日はなるべく部屋の中で遊んでね』て、お願いされたんだよ。」


「マヤラもおかあたんにおねがいねちぇ、おねがいされちゃんじゃよ。」


今朝も元気良く万次郎茶屋に遊びに来たタリサとマヤラが、急に寒さくなった天候にプリプリと怒りながら愛満に話しかける。


「本当だね、急に寒くなったから困ちゃうね。…………………そうだ!どうせならこの寒さを逆手にとって、お昼は暖かい鍋にしちゃおうか?何の鍋が食べたい?」


最近のポカポカ陽気で、冬の間大活躍していたお鍋料理を作らなくなっていた愛満がタリサ達に聞く。


「本当に!?ヤッター!タリサ、前に食べたトマトが入った『トマトすき焼き』が良い!

トマトすき焼きも美味しいんだけど、その後の残った煮汁を使ったナポリタンも美味しいんだもん♪」


「おにゃべ?ヤチャー!マヤラおにゃべじゃいすき!」


お昼ご飯をお鍋にすると聞き。冬の間に食べた沢山の種類有る鍋料理にハマったタリサとマヤラの2人は、嬉しいとピョンピョン跳び跳ね、体全部を使って喜びを表す。

すると隣で聞いていた鍋料理を食べた事が無く、解らない様子の光貴や山背が


「鍋料理?それってどう言う料理へけっ?美味しいへけっ?」


「鍋料理とは何じゃ?ワシは食った事無いのう~。旨いのか?」


「うん!鍋料理すっーごく美味しいよ。お鍋の種類も沢山有るしね!お肉や魚介、野菜が沢山食べれるんだよ。

それに食べてる間に体の芯からポカポカしてくるんだ。ねぇー愛之助♪」


「そうでござるよ!鍋料理は大人数でワイワイと楽しく食べれて親睦を深めるでござるよ!それに拙者もすき焼きが食べたいでござる!」


今だ山背と光貴の2人が鍋料理の全貌なピンときてないなか、鍋料理の話は続き。

その日のお昼ご飯がタリサやマヤラ、オススメしの『トマトすき焼き』に決まるのであった。



◇◇◇◇◇



「う~~ぅ、寒い寒い!しかし早く帰らないと家の腹ペコ達がお腹を空かせてブーたれて待ってるからなぁ。」


珍しく最後のお客さんに時間がかかり。普段の昼に帰る時間より帰るのが遅くなった美樹が、背中を丸めて小走りに職場の美容室からお昼ご飯を食べに万次郎茶屋に帰って来る。


するといつもお昼ご飯を食べているテーブルの上には白い湯気をモクモクと上げ、グツグツと美味しそうな香りの鍋が2つ置いてあり。

鍋近くの席に座ったタリサ達が無言のまま、真剣な眼差しで鍋を見つめているという。なんとも言えない鬼気迫る光景がそこにはあり。


何事かと美樹が考えていると美樹が帰って来た事に気付いたタリサ達が


「あっ、美樹お帰り!遅かったね。美樹が帰ってくるのずっーーーと持ってたんだよ!」


「よしき、おかえりなちゃい!マヤラ、ポンポンペコペコね。」


「美樹、帰って来たでござるか!

愛満~!美樹が帰って来たでござるよ。お昼ご飯を始めようでござる!」


「美樹、お帰りアルね。」


「美樹お帰りへけっ。」


「お帰りなのじゃ。ワシは腹が減って腹が減って、背中とお腹がくっきそうなのじゃ。もう食べてもよいかのう?」


お腹を空かせたタリサ達から少々トゲのある声を美樹がかけられるなか、タリサ達おまちかねのお昼ご飯の時間が始まり。



「美味し~~~~い!普通のすき焼きも美味しいけど、トマトすき焼きの割り下とトマトの相性がバッチリで、絡まった溶き卵も美味しい!」


美樹を待ってる間に何度もお腹が鳴っていたタリサが、待ちに待った『トマトすき焼き』を食べながら、その美味しさを全身を使かって愛満に伝えようとする。


「そんなに美味しい。そっか、そんなに喜んでもらえると作った者として本当に嬉しいよ。ありがとう。」


タリサ達の食べる勢いに3つ目の鍋を作っていた愛満が嬉しそうに答える。すると愛満の隣に座る愛之助も負けじと


「本当に美味しいでござるよ!オリーブオイルでサッと炒められたニンニクの風味もほのかにしていて食欲をそそるでござるし。

前にも食べて気に入った、割り下の染み込んでクタクタになった玉葱が美味しいでござるよ。」


「おいちい!マヤラもおいちいよ!」


「本当に旨いのじゃ!生のトマトも好きなのじゃが、割り下で煮込まれたトマトが生で食べるより食べやすくなっておって、ワシ好みなのじゃ!」


「美味しいへけっ!愛満、鍋を料理とは皆で1つの鍋を食べれて楽しいへけっし、美味しいへけっね♪」


「うんうん!黛藍はやっぱり春菊が好きアルよ!愛満、コッチの鍋 春菊のお代わり加えて良いアルか?」



◇◇◇◇◇



こうして、〆のナポリタンまで『トマトすき焼き』を満喫して、体がポカポカと暖まった愛之助達は、午後からも元気良く過ごせたのであった。



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