和菓子『白玉小豆』とスキンケア
その日 万次郎茶屋では、兎族で父親のアルフや長男のルクチ達家族と一緒に風呂屋松乃の売店で働いているアルフ家8女ビィーナとビィーナの友人で、猫族のミィナ、ミィナの双子の弟のムムナ、熊族のカリンの4人が、愛満を訪ねて茶屋へとある事を相談しに来ていた。
◇◇◇◇◇
「それでね。私とミィナやムムナは王都に住んでたんだけど、ビィーナに呼ばれて朝倉村に遊びに来てみたら、あんまりに美しくて住みやすい村じゃない!
だからビィーナにも相談したんだけど、私達も朝倉村に住ませてほしいと思って、村長でもある愛満の所に相談しに来たって訳なのよ。」
体は男性、心は女性の熊族特有の高身長に筋肉質のガタイの良い自称カリンが愛満に説明する。
「そうなのニャ!王都もいろいろそろっていて便利で住みやすい所なのニャけど、街並みの美しさや住んでる人達の人情味溢れる優しさ、豊富な種類の食べ物は美味しさは朝倉村が一番なのニャ!
さすが最近美食家達の間で話題の『食の街』と言われてるだけあるニャ♪だから!絶対朝倉村に住みたいのニャ!」
「……コクコク……」
カリンの隣に座っているニィナとムムナも強く同意する。
「そうなんだ。僕としては朝倉村に住んでもらうのは大歓迎だけど、朝倉村に移住して何の仕事をして生活するか決めてる?
それで建ててあげる自宅の造りが変わるから、決まってるなら前もって教えてほしいんだけど。」
「えっ!建ててあげる?どう言う事なの?」
「あれ?ビィーナから聞いてなかった。この村の家やお店は全部僕が建ててるんだよ。
街の美化をたもつ目的もあるし。自宅やお店を無料でプレゼントするかわりに、新しく朝倉村に仲間入りする村人達や村を訪れた人が困っていたら見て見ぬふりするんじゃなく、僕に教えてくれるなり。
手をさしのべ、無理しない範囲で良いから、力になってあげてほしいんだ。
例えば迷子への道案内とか落とし物して困ってるとか………あっ、もちろん!お金やいじめ、人の命がかかわるような大変な事案は悩まず直ぐに僕に相談してね。」
「えっ!そんな事でタダで家が手に入るの!?」
「うん、そうだよ。それにね、一番大切な約束事なんだけど。
うちの村では、世間一般では種族や外見等のいろいろな訳の解らない理由の偏見があるかも知らないけど。
どんな種族やどこで生まれたか、肌の色や瞳の色、姿形が違っても差別や仲間外れなどしないで村人みんなで助け合い。
せっかく同じ村の村人同士になったんだから、仲良くしてねってお願いしてるんだ。
けどまぁ、性格があわないなどの性格の不一致等ならしょうがないとは言ってるけどね。
それも人前では大人な対応してねともお願いしちゃてるんだけど………………エヘヘ、僕 結構ワガママな村長なんだ。
で、それで、どんな家建てる?」
愛満が改めてカリン達に問いかける。
すると自宅が無料で建てて貰えると知らなかったカリン達は、驚きのあまり口をパカッと開け、固まっていた。
そして、そんな3人の驚く姿を見たくて自宅を無料で貰える事を内緒にしていたビィーナは、3人の少々マヌケな姿に腹を抱えて大笑いする。
「アハハハハ~。……ヒッ……フ~…アハハ~……
あ…フッ…あ、あのね、愛満。
カリンもニィナもムムナも、王都で王族や貴族のご夫人、商人の奥方達用に高級化粧品を作って販売までするギルドの調合師として働いていたのよ。
それで前々からギルドが推す高級な素材をふんだんに使った買う人を選ぶような、高価格の化粧品に疑問をもっていてね。
出来れば朝倉村でシンプルでいて、誰でも気がねなく買える肌に優しい化粧品を作りたいと考えてるみたいなのよ。……ブッホ…ヒッ………どう、大丈夫かしら?」
普段見せない3人の姿がツボにはいったらしいビィーナが、何とか笑いをこらえながら愛満に3人のこれからの事を話す。
すると話を聞いた愛満が何やら考えだし、隣の席に座る愛之助にコッソリある事を耳打ちして相談する。
「ねぇ愛之助、こっちの化粧品てあっちで言うところの化粧水とか乳液、顔パック、ボディウォーターも含まれるのかなぁ?」
固まっていたカリンがピクリと動き、すばやい動きで愛満の隣に移動して来て
「それ何!?化粧水に乳液、顔パック、ボディウォーターて何なの!?教えて!!」
詰め寄り、問いただし、質問する。そんなカリンの迫力に若干怯えながらも
「え、えっと、僕は詳しく解らないけど、化粧水と乳液、顔パック、ボディウォーターは、肌を保湿したり整える働きをする化粧品なんだと思うよ。
僕の姉が肌が弱くてプラス乾燥肌な事とかもあったりしてね。
既製品の化粧品なんかを使うと、見てるこっちが可哀想に思うくらい。肌が直ぐに真っ赤になったりしてあばけちゃうんだ。
けど、そんな姉ちゃんの肌に合う、安心安全に使える化粧品も有る事は有るんだけど。
やっぱり、そういった化粧品てお値段が結構高価格らしくて、毎日使うと毎月それなりのお金もかかちゃうみたいで…。
それにその化粧品のシリーズを買うにしても、田舎の山奥に住んでたから買いに行くだけで一苦労で大変そうだったから
それを心配した婆ちゃんが、いろいろ調べて姉ちゃん用にって、口にしても安全な緑茶の葉や米ぬかを使い。
一緒に作ってるのを手伝ってただけだから詳しくは知らないんだ、ゴメンね。」
愛満がカリンに話すと目をキラキラして話を聞いていたカリンが興奮した様子で
「そ、それって、作り方を知ってるって事よね!」
「うん。何度も姉ちゃんから手伝わされたから覚えてるけど、どうかした?」
横で愛之助がカリン達にバレないように必死に合図してるのを気づかずかなかった愛満は、言ってはいけない最後の言葉を言ってしまい。
「やったわ~!さすが愛満ね!じゃあ早速作り方を教えてちょうだい♪行くわよ!」
ニィナとムムナもガッツポーズするなか、カリンが愛満をガシッと掴み、何処かに連れて行こうとする。
すると話を聞いていたビィーナが、カリンの行動に驚き慌てて
「カリン、ちょっと落ち着きなさいって!
作り方を教えてもらうにしても、朝倉村にはカリン達が仕事できる作業場も作業道具も無いでしょう?少し落ち着いて!
この愛満がおもてなししてくれた美味しそうなお茶菓子を食べましょうよ、ねっ!」
「あら、そうよね!いっけない~!私ったら新しいレシピが教われると思って舞い上がっちゃったわ。ダメね、私ったら。ウフフフフ~♪」
「そうだったニャ!私も忘れてたニャ。」
「…コクコク……」
ビィーナの一言で我に返った3人は、反省した様子で照れ笑いする。
一方、強力な力で何処かに拉致されかけ、驚きや恐怖で顔を真っ青にしながら小刻みに震える様子の愛満と
そんな愛満を連れて行かせまいと愛満に必死にしがみついていた半泣きの愛之助は、お互いの無事を確かめ合い、抱き締めあいながら喜ぶ。
そして話の邪魔になってはと離れた所に座り。大人しくしていたタリサ、マヤラ、山背達3人が愛満や愛之助の様子にカリン達にカンカンに激怒し。更にビィーナも加わり。
こってりと怒られたカリン達が、愛満と愛之助に謝ったり。
一悶着もあったりしながら、まったりしたお茶の時間が始まる。
◇◇◇◇◇
「みんなお待たせ。次のお茶菓子は『白玉小豆』だよ。
久しぶりに最高の粒あんが作れたから、シンプルに小豆の美味しさを味わってもらおうと白玉を作って、たっぷりのせてみたんだ。」
愛満が毎朝作る『粒あん』が、久しぶりに味も見た目も自分の思い描くとおりの完璧なものが出来た事を嬉しそうに説明し。
それぞれの前に新しいお茶とお茶菓子の『白玉小豆』を振る舞う。
「まぁ、美味しそうねぇ!」
小花が描かれた可愛らしいガラス深皿に入ったお茶菓子の白玉小豆を見たビィーナが話し。隣で食べ始めていたカリンとニィナも
「………やだ!何コレ、美味しいじゃない!
食べやすい一口サイズの白玉に食べる人への優しさを感じるし。粒あんも甘さがくどくなくて、さっぱりした甘味がやみつきになるわね。」
「本当に美味しいニャ!白玉がモチッリしていて、白玉に絡み合う甘い粒あんが最高だニャー♪」
初めて食べる『白玉小豆』の感想をカリンとニィナが話していると一緒のテーブルで食べてたタリサ達も
「あーぁ美味しい!やっぱり、いつ食べても愛満の作る粒あんは美味しいねぇ♪餡子大好き!」
「本当に美味しいでござるねぇ!
この愛満お手製のモチッとした食感に仕上がった白玉も良いでござるし。見た目は華やかさはないでござるが、噛み締めるごとに甘さや旨さが、口じゅうにふっくらむでござるよ。」
「モチモチちて、おいちいねぇ♪」
「うんうん。旨いのう~♪」
感想を言うと『白玉小豆』を無言で黙々と食べていたルルナがピタリと食べる手を止め。
「………………ぉぃ…ぃ……………粒あんの甘さが軽やかなのに深く舌に染み込む美味しさニャ……。」
「えっ!ルルナが喋った!?」
「う、う、嘘!ルルナの声 久しぶりに聞いたわ!」
「ルルナが喋ったニャ!スゴいニャ!普段頷きと3文字だけで生活するルルナを喋らせるとは、この『白玉小豆』侮れないニャ!」
久しぶりに聞くらしいルルナの声にカリン達が驚いたりと『白玉小豆』を心行くままに味わう。
◇◇◇◇◇
その後、カリン達が住む自宅兼作業場、店舗を建ててあげた愛満は、自分の知ってるモチモチ肌になる『緑茶酒化粧品』や肌の老化やシミを予防する『豆乳ローション』、『緑茶ボディーウォーター』、『米ぬかパック、緑茶パック』等の作り方等を教えてあげ。
こうして、朝倉村の村の女性達や日中外仕事で日焼けに苦しむ肌の弱い男性や村を訪れる人達に喜ばれる。
『化粧品店』と熊族のカリン、猫族のニィナ、ムムナ達が朝倉村に仲間入りするのであった。




