手巻き寿司と母への感謝日
その日、朝倉村にあった元空き地には愛満の力を使い建てた。
『母の日』のイベントのための巨大な建物が建ち、沢山の人達で賑わいながら、母の日のイベントが行われていた。
◇◇◇◇◇
「うわ~~スゴい!いろんな花が沢山咲いてるよ、綺麗~~!」
「きれいにぇ~♪マヤラここちゅきよ!」
「本当に綺麗だわねぇ!見たこと無い綺麗な花が沢山咲き乱れていて、時々聞こえる水の流れる音が心地好く癒されるわ。まるで夢のような空間ね♪」
せっかくの『母の日』だったのだが、家族をもつ息子や娘達を休ませるため。
風呂屋・松乃に勤める番頭の父アルフは今日のこの場には参加できなかったが、アルフ家末っ子のマヤラやタリサ、2人の母親のアコラの3人は、愛満が建てた母の日のイベント会場を楽しげに回りながら、美しい光景にうっとりと見とれていた。
ちなみにその少し後ろをタリサやアコラから誘われた愛満達が家族団らんの時間だからと遠慮して、少し離れてのんびりと歩き、咲き乱れる草花を愛でている。
「本当に心が洗われるような美しい光景なのじゃ♪」
「本当でござるね。………あっ、ほら!あそこに拙者の好きな藤の花が咲き乱れてるでござるよ。綺麗でござるねぇ~♪」
「愛之助、あそこには露草の青い花が咲いてるよ。」
山背や愛之助、愛満達3人が話しているとアコラやタリサ達が興奮した様子で近付いて来て
「愛満も愛之助も本当にスゴいね!僕、あんまり綺麗だから気に入ったし、ビックリしちゃった!」
「マヤラもビチュッリしちゃった!」
「本当に綺麗な場所よね!こんな素敵な場所、どこを探してもきっと無いわよ。
それに一度にこんな沢山の花を咲かせるなんて、どうなってるの!?
あっちには愛満が教えてくれた夏の花の向日葵が咲いてるし、コッチでは秋の花の桔梗が咲いてるし、季節感めちゃくちゃでビックリしちゃったわ、ウフフ~~♪
それで愛満、この素敵な場所は何と言う場所になるの?」
嬉しそうに愛満へと話しかけ、質問する。
そんなアコラ達の様子に、この施設を造り、皆の反応を気にしていた愛満が
「気に入ってもらえたようで本当に良かった~!
この場所はですね。四季折々の咲き乱れる草花や、園内の泉から涌き出ている透明度の高い綺麗な水の流れる美しい川、滝を視覚や聴覚、嗅覚、身体全てで楽しめ。日頃忙しい人達への癒しがテーマの『植物園』になるんです。」
「植物園?」
「はい。昨日夜に母の日のイベントに何か出来ないかと考えていたら、このアイデアが突然フッと降ってきてですね。
日頃、仕事に家事に育児にと頑張ってるお母さん達を癒せる空間が造れないかと頭を働かせ。アレもコレもと欲張ってたら、かなり大規模になったけど無事、この『植物園』が完成出来たんですよ!」
愛満がアコラ達に植物園の出来た訳を熱く説明すると隣で話を聞いていた愛之助も我が事のように、何やら誇らしげに話し始め。
「そうでござるよ!昨日の夜の暗闇なか、わざわざ愛満が村の皆の事を考えてくれ。建設してくれた素晴らしすぎる『植物園』になるでござるよ。」
「その通りよね!本当に、こんなスゴい美しくて癒される植物園を建設してくれて、愛満あなた最高よ♪」
「やっぱり、アコラ殿は良く解ってるでござるよ!
あっ、そうでござる!もう少し進んだ場所に、大きな滝があるでござるよ。そこはマイナスイオンが沢山溢れていてスゴく癒されるでござるよ。さぁさぁ、皆でマイナスイオンを浴びに行こうでござる!」
植物園の目玉の一つ、5階建ての高さから流れ落ちる滝をタリサ達に見せたい愛之助が提案して、アコラと熱く話ながら楽しそうに移動するのであった。
◇◇◇◇◇
そして、お昼ご飯には愛満お手製の持参したお弁当をモリモリ食べたり。
一日かけ、のんびりと本日オープンした『巨大植物園』を満喫した愛満達は、皆で植物園の感想などを話しながら、6人で万次郎茶屋へと帰り道を歩いていた。
するといつもの祭り後(イベント後)には、村の皆で集まって『ごちそう』を食べるのだが、今日はいつもと違う事を不思議に思っていたタリサが愛満へと質問する。
「愛満、今日はコレで終わりなの?村の皆で集まって美味しい食べ物とか食べたりしないの?」
「うん、今日はコレで終わりだよ。
本当はいつもみたいに皆で集まってごちそう食べようかと考えたんだけどね。
せっかくの『母の日』だから、家族みんなでゆっくり美味しい物を食べ、家族団らんするのが良いかなぁと思って……。
それに昨日村の皆に母の日の説明をしたら、日頃の感謝を込めて、お母さんにご飯作ってあげると話してる子達も沢山いたからね。
そう言うタリサ達も今日は、アコラさんのために愛之助と一緒に美味しい晩ご飯を作ってくれるんでしょう?」
「あっ、そうだ!僕、今日はお母さんや愛満のためにマヤラや愛之助達と一緒に美味しい晩ご飯作ってあげるんだった。頑張らなくちゃ!」
「マヤラもがんばりょ!」
「フッフフ~♪楽しみに待ってるわね!」
アコラが嬉しそうに微笑み、タリサやマヤラ達がヤル気を見せるなか、最初はタリサやアコラ達家族で母の日を楽しんで下さいと愛満達はお断りしたのだが、母の日の主役でもあるアコラから強く誘われた。
せっかくの『母の日』でもあるのだが、アルフ家と一緒晩ご飯を食べる事になったのだ。
そして母の日には関係無いはずの愛満も、実は昨日の夜に愛之助から
『明日の母の日の晩ご飯は、拙者やタリサ、マヤラ達と日頃の感謝を込めて作るでござるから、愛満も楽しみにしてるでござるよ!』
と満面の笑みで教えてもらってから、密かに楽しみにしているのだ。
◇◇◇◇◇
そうしてその後、6人は万次郎茶屋へと帰りつき。
愛之助達の作業する台所から閉め出された愛満やアコラの2人は、台所から物音がするたび、タリサやマヤラ、愛之助達が怪我や火傷をしたんじゃないかなどハラハラドキドキする。とても長く感じる時間を過ごしながら、母の日の晩ご飯料理が出来上がるのを待っていた。
すると頬っぺにご飯粒をつけた愛之助達が、木桶に入った酢飯や様々な種類の海鮮が沢山乗ったお皿などをテーブルいっぱいに並べ始め。
「まぁ、綺麗で美味しそうねぇ!タリサもマヤラも愛之助も大変だったでしょう、ありがとうねぇ!」
「うわー!本当に彩りも綺麗で美味しそうだね。3人とも頑張ったね、ありがとう!」
料理を見たアコラや愛満が『スゴい、スゴい』と誉めると何やら得意そうに照れ笑いし。
「ヘヘヘ~♪うん!僕、酢飯作る時に団扇をパタパタ扇ぐの頑張ったんだよ!」
「マヤラもパチャパチャがんばちゃ!」
「拙者も酢飯を切るように混ぜて頑張ったでござるよ!」
「そっか、3人が頑張ったから、今日の酢飯はこんなにツヤツヤして美味しそうなんだね!それに手巻き寿司の具材も美味しそうに盛り付けてあって上手だよ。」
「本当ねぇ、タリサもマヤラもお母さんより酢飯作るの上手かも、頑張ったね!」
「あい!マヤラがんばちゃんじゃよ!」
「そうでしょう!本当はお魚も自分達で切りたかったんだけど、まだ上手に切れないから、切ってあるお刺身とかをお皿一杯に綺麗に並べ替えたんだよ!
ねぇ愛之助、だから今日の晩ご飯『手巻き寿司』にしたんだもんね!」
タリサが取り皿をテーブルへと置いていた愛之助に話しかけ。愛之助が何故『母の日』の晩ご飯を『手巻き寿司』にしたのかを話し始める。
「拙者もタリサもマヤラも、まだまだ上手に料理出来ないでござるよ。
だから、せめて愛情を沢山込めた『母の日』の晩ご飯を作ってあげたいと考えたでござる。
けど、そう言っても何を作ればよいか良いアイデアが思い浮かばず、どうしょうかと3人で頭を悩ませたでござるよ。」
「そうそう!全然良いアイデアが浮かばなかったんだ!」
「ちょうちょう!マヤラもこまちゃ!」
「そしたらフッと前に愛満が『無理して背伸びせずに自分の身の丈にあった範囲で頑張れば良い』と茶屋を訪ねて来た誰かに言っていたでござるのを思い出したでござるから、拙者達も自分達が出来る範囲で作れる料理をと、タリサとマヤラと相談し合い。
『手巻き寿司』なら酢飯作りを頑張れば良いと思って、皆で作ったでござるよ!」
3人が教えてくれるのであった。
◇◇◇◇◇
そうして、仕事終わりのアルフや美樹、黛藍達が万次郎茶屋へと帰宅して、アルフ家と愛満家の合同の母の日の晩ご飯の時間が始まった。




