表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/252

牛丼と秘密のプレゼント作り



その日朝倉村にある朝倉学園の隣に建つ巨大な総合体育館の一室では、学園に通う小中高の子供達や、同じ敷地に建つ幼稚園の園児達、愛満の話を聞いた村の男衆が妻に内緒で集まり、何やら作業していた。



◇◇◇◇◇



「みんなさ~~ん、良いですか!

このマグカップに目の前に置いてある色とりどりの色ペンを使って、自分のお母さんの似顔絵を直接描くのですよ。

そして描きあげた人から私の元に持ってきてくれたら、私が割れないように箱に入れ。この可愛らしい真っ赤なリボンで結び。カーネーションを付けてあげますからね。

じゃ、どうぞ描き始めても大丈夫ですよ。」


「「「「「は~~~い♪」」」」」


幼稚園組担当の亀族で、同じ亀族の山背からの頼みで助っ人に来てくれた丈山が園児達に説明する。


◇◇


その隣の低学年組では担当の愛之助がお気に入りのマイ○ロちゃんエプロンを着け。


「みんな、おはようでござるよ!

今日は明日開催される皆が大好きな母上に感謝する日の『母の日』の為のプレゼントを今から作るでござるよ。

低学年組の皆が作るのは『ゴムブレスレット』になるでござる。

目の前に置いてある輪ゴムで、ブレスレットが作れる道具を使い。このカラフルな色合いの輪ゴムを自分の好きなように組み合わせ、作っていくでござるよ。解ったでござるか?」


「「「「「はーーーい!」」」」」


説明して、瞳をキラキラ輝かせた子供達が元気良く返事する。


◇◇


そしてその隣の中学年組では、担当のパンダ姿のササ族黛藍が母の日のプレゼント製作の内容を説明していて


「みんなおはようアルね。今日みんなを担当する黛藍アルよ。

皆が今日作る明日の『母の日』のお母さんへのプレゼントは、皆の目の前に置いてある市販のフレームに、シールやボタン、ビーズ、貝殻などで自由にデコレーションする『デコフレーム』

そのデコフレームの中に入れるお母さんの『似顔絵』の2つになるアルよ。

2つ作らなきゃいけないアルから、今日はテキパキと皆で頑張ろうアルね!」


「「「「「は~~い!」」」」」


「ねぇねぇ、黛藍先生フアフアして可愛いよね。後で撫でさせてもらえないかなぁ~。」


「本当だよね。後で聞いてみようよ!」


説明する黛藍の可愛らしいパンダ姿に、可愛い物好きな女の子達がコソコソと話す。


◇◇


その隣の高学年組担当の山背は、小柄な体格のため高い台に乗り。


「おはようなのじゃ、今日みんなを担当する山背なのじゃ。

そして、今日みんなが作る明日の母君へのプレゼントは『エプロン』になるのじゃ。

ここに愛満が用意してくれた様々な色や柄の布が置いてあるから自分の好きな布を選び。怪我をしないように縫うのじゃよ。

縫い終わった者から、この3種類あるメッセージカードに母君への日頃の感謝の言葉を書き。

メッセージカードと一緒にラッピングするのじゃ。」


「「「「「はーい!」」」」」


まだまだ可愛さや素直さが残る高学年の子供達へと説明する。


◇◇


そして隣の中学生組を担当する美樹は、小学生組のように可愛いらしさが無くなり。すっかり大人の風貌に変化しつつある難しい年頃の子供達を前に


「良いか~。今日お前達が作る母の日のプレゼントは、造花を使って作る『フラワーリース』になるぞ。

花リースは壁に飾り付けても置物として置いていてもオシャレで可愛いから、母ちゃん達にも喜ばれると思うから、後々残る物だし真面目に頑張れよ!

で、ここに愛満が用意してくれたリング型やハート、星型等のリース台があるから各自好きなリース台を選び。

コッチに沢山置いてある造花や草系ガーランドなんかを使って、好きに飾り付けてくれ。」


「「「「「はい。」」」」」


説明を終える。すると美樹のオシャレでカッコいい大人の貫禄に、いつもの生意気さを引っ込めた中学生組が短く返事する。


◇◇


その隣の高校生組では、担当の愛満が顔見知りが多数いる事を苦笑いしながら、母の日のプレゼント製作の説明を始め。


「みんなおはよう。知ってる人も多数いると思うけど、今日みんなを担当する愛満です。

今日みんなに作ってもらう『母の日』のプレゼントは、このセットになっている皮小物を使って作る『バスケット形トートバッグ』になるよ。

裁断済みの皮に縫い穴が開いてるから、そこを糸を通していくだけで簡単に作れ、難しく考えなくても出来るから頑張ろう!」


「「「「「はい!」」」」」


普段から腹を空いたと言っては万次郎茶屋へとやって来て、おやつをねだる顔見知りが沢山いるため

愛満と同じように苦笑いしながら、大人しく話を聞いてくれていた高校生組が野太い声や女子達が小さく手を振りながら返事をしてくれる。


◇◇


そして妻や母親に内緒で集まりにやってくれた村の男性衆は、風呂屋・松乃の仕事を休み参加してくれた。

兎族で、タリサやマヤラの父親で有るアルフが担当してくれて


「いいかですか、この愛満が用意してくれた様々な形や色のビーズやパール風ビーズ、パーツなどを使い。

奥さんや母親への日頃の感謝を込め『ネックレス』を作るんですよ。

そこで一番大事な事は、チェーンは少し長めに調節出来るように作る事です!

プレゼントしてから、いざ奥さんや母親達が使おうとした時、チェーンが短すぎたりしたら取り返しのつかない事になります!

それに後でどんな怒りをかうかと考えるだけで恐ろしい事です。

私も若かった時に妻に指輪を送り。その時指輪のサイズを間違えてしまって…………………皆さん十分考えて作るんですよ。」


何やら思い出した様子で力説する中、それぞれの組で母の日のプレゼントを完成させ。

たいしたトラブルも無く、全ての参加者達が母の日のプレゼントを作り終えた頃、タイミング良く学園のお昼を知らせる鐘が鳴り。お昼ご飯の時間が始まるのであった。



◇◇◇◇◇



「は~~~い!ここの列が並盛りの人用だよ!

こっちが中盛りで!その隣が大盛りの人用!さらにその一番奥が特盛りとメガ盛りの人用だよ!

特盛りとメガ盛りの人は、丼を受けとる前に特盛りかメガ盛りかを言って注文してね。

それからお味噌汁とお漬け物の他に牛丼のトッピングで、生卵と温泉卵、葱、キムチ、チーズ、トロロ、オクラ、マヨネーズなんかもあるから、お好みで持っていってね。

お茶はテーブルにヤカンとコップと置いてるから各自で飲んで!」


大鍋いっぱいに、今が旬の新玉ねぎと作った『牛肉』たっぷりの牛丼を手際良く盛り付け。

愛満達はお昼ご飯を取りに来た子供達や村の男性衆に列の説明をして、行列ができる前にチャッチャッとさばいていき。


怒涛(どとう)の忙しい時間が過ぎ、母の日のプレゼント作りに参加した子供達や村の男性衆がお腹いっぱいに牛丼を堪能し食事を終え。

完成して綺麗にラッピングされたプレゼントを明日の『母の日』まで、母親や妻に見つからないように隠し持ち。満足げな様子で参加者達は帰っていった。


そうして愛満達は愛満の(チート)を使い、使用した部屋やお昼ご飯の掃除をあっという間に終わらせ。

別に取って置いた牛丼を愛之助達とのんびりと食べ始め。


「美味しい~!甘めの味付けの牛肉や新玉ねぎがご飯とマッチして美味しいねぇ。」


「本当に美味しいへけっ!僕、煮物とかの甘めの玉葱が好きだから、美樹に言われたように玉葱多目の『ねぎだく』で注文して良かったへけっ!」


煮物などの甘い玉葱が好きな光貴が、多目に乗せられた丼の玉葱を見つめ。美樹から習った『ねぎだく』と言って牛丼を頼んで良かったと嬉しそうに話す。

すると『ねぎだく』の意味を知らないタリサが不思議そうに『ねぎだく』の意味を質問して


「えっ!『ねぎだく』?光貴、ねぎだくて何?」


「あれ?タリサ聞いてなかったへけっか?

僕も詳しく解らないへけっが、美樹が言うには玉葱たっぷりの増し増しの事らしいへけっよ。」


「へぇー知らなかった!玉葱多目の時は『ねぎだく』て言う魔法の言葉を言えばいいんだ!」


「そうみたいへけっ!」


何やら『ねぎだく』の意味を関心深げに話し。マヤラを含めたチビッ子3人組はシンプルな『並盛り牛丼』を楽しみ。


「……モグモグ……モグモグ……あぁ~~牛丼美味しい!」


「おいちい、おいちい!ぎゅうじょん おいちいねぇ♪マヤラ、こにょあまめのあじちゅけ だいちゅき!」


「本当に美味しいへけっ!」



そんなチビッ子組の隣では『大盛り』や『特盛り』、果ては『メガ盛り』の牛丼にお好みのトッピングをして食べる大人組が


「本当に旨いなぁ~!久しぶりに牛丼食うけど、やっぱり俺は大盛りで『つゆだく』の温玉のせが一番好きだぜ。

けど3種のチーズと明太マヨの高カロリーで、禁断トッピングの濃厚牛丼も旨いんだよなぁ~………う~ん。けどやっぱり最初は昔から食ってたコレに限るかなぁ!

つゆたっぷりの汁を米が少し吸い込んでいて、それを温玉のほんのり半熟の黄身や牛肉と口いっぱいに詰め込んで食う時の幸せ!……あ~ぁ、たまんねぇぜ!

よし!次は3種のチーズと明太マヨの大盛りをお代わりするか!」


汁だくだくで、温玉をのせた牛丼をガツガツと幸せそうに食べる美樹の横では、牛丼の具材が見えなくなるくらい丼いっぱいにネギをこんもりトッピングして有り。さらに一味唐辛子とマヨネーズをかけた愛之助が


「拙者はこの葱をたっぷりのせ、一味唐辛子とマヨネーズをかけて食べる食べ方が好きでござるよ!

甘めの牛丼にシャキシャキした食感の葱と、ピリッと辛い一味唐辛子やマヨネーズのマイルドさがプラスされ。実に美味しいでござるよ♪」


見た目に似合わず、ガッツリ系のトッピングの特盛り牛丼をモリモリと頬っぺたにマヨネーズをつけながら食べる愛之助の横では、メガ盛りの牛丼で顔や体が隠れている山背が


「ワシは、紅しょうがをたっぷりのせて食べる牛丼が美味しいのじゃ~!甘めの味付けの牛丼をピリッと引き締めてくれる紅しょうがは本当に美味しいのう~♪」


「そうですか?私は紅しょうがでは無く、この生卵をたっぷり加えて食べる牛丼が、まるで黄色い玉子の海に包まれているようで、スルスル食べれて美味しいですよ。」


「そうかのう?ワシは紅しょうが入りの方が美味しいのじゃが……と言うかワシは『紅しょうが』が好きなのじゃ!」


「そんなに紅しょうががお好きなんですね。

なら山背は次に紅しょうがと葱を加えて一緒に食べてみたらどうですか?

牛丼や紅しょうがに、葱の食感と風味が加わり美味しいらしいですよ。

私も次は美樹が言ってた生卵の黄身だけを加えて、豪華に食べてみます。どうやら黄身だけだと白身が無い分、濃厚で美味しいらしいと教えてもらったので」


見た目、牛丼の卵かけご飯にしか見えない黄色いメガ盛り牛丼をスルスルと食べている丈山が、紅しょうの赤で真っ赤に覆い尽くされたメガ盛り牛丼を食べている山背と話す。


そんな2人を驚きの表情で見ている『中盛り牛丼』を食べている黛藍と兎族のアルフは


「ねぇ、黛藍さん。山背さんと丈山さんのあの小さな体のどこにメガ盛りの牛丼がおさまっていくんでしょうね。私不思議で目が離せません。」


「本当アルね。しかもさっき3杯目のメガ盛り牛丼のお代わりを愛満に頼んでたでアルよ!」


「まさか!?あの一杯だけでもかなりの量があるのんですよ!

それを3杯目だなんて、そんな事あるわけないじゃないですか、私を驚かせようたって信じませんからね…………………………ほ、本当ですか!」


黛藍の話にいくらなんでもメガ盛り3杯は食べられないだろうと信じられなかったアルフが苦笑いするのだが、あんまりにも黛藍が真面目な顔で言うので


「本当アルよ!黛藍嘘つかないね!

アルフさんがトイレに行ってる間に、山背も丈山も1杯目のメガ盛り牛丼はすでに完食してたアルよ。

だから今食べてるのが2杯目のメガ盛り牛丼で、次に来るのが3杯目のメガ盛り牛丼アルね。」


「……………た、黛藍さん。私2人のお腹が破裂するんじゃないかと、今さらながらでは有りますが心配でハラハラしてきました。」


「……そうアルよね、黛藍も2人のお腹が大丈夫かドキドキしてきたアル。」


他の人達が牛丼を食べるのに夢中のなか、運悪く山背と丈山と同じテーブルに座ったばっかりに黛藍とアルフの2人が、山背と丈山のお腹を心配して自分達の食事の手も止まり。ハラハラドキドキするなどの出来事があったりするのであった。



◇◇◇◇◇



こうして朝倉村で初めて開催される明日の『母の日』のプレゼント作りは、何のアクシデントや怪我人も無く、無事に終わった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ