肉巻きみたらし団子と琴柏谷
その日 万次郎茶屋には、朝倉村にあるギルドのギルド長である琴柏谷が、忙しい仕事の合間に光貴の様子を見に来てくれていた。
「愛満、光貴の様子はどうですか?変わった所などありませんか?夜うなされたりなどしていませんか?」
「うん。僕も光貴の事が心配で気を配って見ているんだけど、今のところ変わった様子もなくて愛之助やタリサ達と楽しく生活しくれているから少し安心してる。」
「そうですか、なら良けど……自分も何度か奴隷狩りの被害にあった子供達を助け出した事があるんですが、体の傷はある程度の時間がたてば治りますが、心の傷だけは…………目に見えないですから……………
幼い子供なら尚更本人が自覚できない事もあり。周りが気付いた時には手遅れになってしまっている時が多々あるんです。
だから愛満も忙しいと思いますが、これからも光貴の事をそれとなく気にかけておいて下さい。
自分も1日でも早く光貴が家族と再会できるよう、光貴の家族と連絡がとれるように範囲を広げ、他のギルドに声をかけて探してみます。」
愛之助達と楽しそうに勉強する光貴を見ながら琴柏谷が愛満に頭を下げお願いする。
「うんうん。こちらこそよろしくお願いします。
それに琴柏谷も新ギルドを立ち上げたばかりで忙しいのにいつもありがとう。
僕達も光貴の事が心配だから本人のストレスにならない範囲で、光貴を不安な思いをさせないようにと考え。いつも誰かが側にいるように心がけてるんだけど……やっぱり家族が恋しいのか、たまにボッーと遠くの空を見てる時があって………………」
「そうですよね。考えたらまだまだ親に甘えたい盛りの年ですもの……」
「本当だよね……………そうだ、琴柏谷!みたらし団子の進化版が出来たんだけど食べてみない?」
ついついしんみりした雰囲気になるのを払拭するように、愛満は元気良く琴柏谷に問いかけるのであった。
◇◇◇◇◇
「お待たせ。コレがみたらし団子の進化版『肉巻きみたらし団子』だよ!
まぁただ単に、みたらし団子に豚バラスライス肉を巻いて、塩コショウして焼いただけなんだけどね。」
愛満は琴柏谷に説明しながら、ガラスコップに入った色鮮やかで冷たい『緑茶』と『肉巻きみたらし団子』を琴柏谷に差し出す。
「うゎっ!本当にみたらし団子にお肉が巻かれて焼かれてますね。話を聞いた時は邪道かと思いましたが、何やら美味しそうに見えてきました。
…………そ、それじゃあ、早速食べてさせてもらいますね。…モグモグ……モグモグ……こ、コレは!なんですか、この美味しさ!
醤油ベースの甘じょっぱいみたらしのタレと豚バラ肉の旨味や、焼いたことで柔らかくなった団子の食感が口の中で一体感になり、美味し過ぎます!
それにほど良く効いた塩コショウが、たまにピリッと刺激して食べ進めるうちに、どんどん食欲が沸いてきますよ!」
大好物のみたらし団子が、豚バラ肉や塩コショウで惣菜系に進化した姿に驚きながらも一口食べるとその美味しさに虜になり。琴柏谷は夢中で愛満に味の感想を伝えながら食べ進めていく。
すると何か美味しそうな食べ物を琴柏谷が食べてる事に気付いたタリサ達がやって来て
「あぁ!琴柏谷兄ちゃん、何食べてるの?僕も食べたい!」
「いいにゃー!マヤラもちゃべる!」
「僕も食べたいへけっ!」
「愛満~拙者達も食べたいでござるよ。」
「そんなに美味しいなら、ワシも食ってみたいのう~♪」
愛満におねだりをしたタリサ達は、愛満に出してもらった山盛りに積まれた肉巻きみたらし団子を見て、飛び上がらんばかりに喜び。
『美味しい、美味しい』と頬をパンパンにふくらませながら食べるのであった。




