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米粉蒸しパンとキリン族の光貴



「ふぅー出来た、出来た!しかし、あれもこれもと欲張って作ってたら大量に作ちゃったなぁー。」


その日万次郎茶屋では、山背が店番をしてくれるなか愛満が一人アルモノを大量に作っていた。

すると何やら店内で争う声が聞こえ。気になった愛満が見に行ってみると、山背がタリサくらいの男の子と争っていた。


「ど、どうしたの山背!?そんな小さな子供に何してるの!?」


「あぁ、愛満か!何、この少年が先ほどから何度も店内を覗きこんでおったのじゃよ。

じゃから、ついつい気になり声をかけてみたらのう~。腹を空かせた様子じゃったから、気をきかせてワシが店内へと招いてやったのじゃよ!

じゃが、何やら恥ずかしがって暴れるもんじゃから、こうして暴れんように押さえておるのじゃ!ふぅ~~~大変じゃったのじゃ!」


うつ伏せになりながらも手足をバタつかせ、逃げようとする男の子の背中にドンと座り。動きを封じている山背が愛満に説明してくれる。


しかし愛満から見たら、少年は顔を真っ赤にして涙目にもなっており。まるで山背が苛めてるようにも見え。可哀想に思った愛満は、少年の背中から山背をどかし、少年を抱き上げる。


「ごめんね、大丈夫?どこか痛いところは無い?」


少年を抱き上げたまま優しく問いかける。

すると少年は頭に生えた小ぶりの耳や角、しっぽをピコピコと動かしながら小さな声で話


「……だ、大丈夫へけっ。お兄ちゃん、助けてくれてありがとうへけっ。」


「ううん、気にしなくて大丈夫だよ。それよりお腹空いてない?僕達今からお茶菓子でも食べて休憩しょうと思ってるんだけど君も一緒に食べようよ、ね。」


抱っこしたままの少年に優しく問いかける。


「…………い、良いへけっ?…僕、お金持ってないへけっ…」


「そんなこと気にしなくても大丈夫だよ。僕が誘ったんだから、お腹いっぱい食べてよ。」


「…………あ、ありがとうへけっ。…」


薄汚れた服装や顔色の悪い男の子の様子に、何やら訳ありと考えた愛満は、男の子が興奮し恐怖で震えてる今、無理に聞き出すのは良くないと考え。

気分転換にと、先ほどまで大量に作っていたアルモノをお茶菓子がわりにお茶を飲まないかと誘うのであった。



◇◇◇◇◇



光貴(みつき)に山背、お待たせ!お代わりもいっぱい有るから沢山食べてね。」


あの後3人で話し、自己紹介等をしたりして、山背とも仲直りし。愛満から魔法で体や服の汚れ、怪我などを治してもらい。

だいぶ打ち解けて元気になった男の子こと、キリン族の光貴(みつき)や山背は、愛満が持ってきた米粉を使った様々な種類の『蒸しパン』を見て歓喜の声をあげる。


「へけっー!美味しそうへけっ。いろんな種類があるへけっ!ねぇ愛満、このお菓子なんなのへけっか?」


「本当に沢山の種類があって美味しそうなのじゃ♪」


「光貴も山背も誉めてくれてありがとう。

このお菓子はね、マリアさんから産婦人科を訪れる小さい子供や妊婦さん、授乳中のお母さん達が安心して食べれるお菓子のレシピが無いかと相談されてね。

試行錯誤して、シャルさん家のお米を粉にした米粉や村で採取した牛乳の実を使って作った『蒸しパン』になるんだよ。

だから今日のおやつも兼ねて、家の大食い達を満足させるために甘味系から惣菜系まで幅広く作ったから、遠慮せずに沢山食べてね。」


『蒸しパン』の説明をしながら、蒸しパンのお供になる。愛満家で採れた苺とグラニュー糖、お酢を瓶に1週間漬け込んで手作りした苺サワードリンクと牛乳の実を1対4で割った『苺サワーミルク』と共に進める。


「うんうん♪何も入ってないシンプルな蒸しパンは、ほんのり米の味や風味がして実に良いのう~♪

愛満、この米粉の蒸しパン当りじゃ、美味しいのじゃ!」


「本当に、良かった~!自分でも味見して大丈夫だと思ったんだけど、他の人の感想を聞くまで不安で、不安で。はぁ~安心した。光貴はどう?口にあう?」


「うんへけっ!美味しいへけっよ!

僕は山背が教えてくれた、このほうれん草とチーズが入った蒸しパンが美味しいかったへけっ!」


「ワシは惣菜系ならベーコンとコーンがオススメなのじゃ!ベーコンの塩気と米粉の甘味が良く合っておったのじゃ。

甘味系なら、今が旬のすりおろした春人参の入った蒸しパンが、色鮮やかで見た目も良く、美味しかったのじゃ!

それからこの『苺サワーミルク』もヨーグルトドリンクのような味わいで、ほのかに苺の風味がして美味しいのう~♪」


「本当に美味しいへけっ!」


光貴と山背大満足のなか、沢山の種類の蒸しパンを食べ、苺サワーミルクを満喫して、楽しいお茶の時間は過ぎていく。



◇◇◇◇◇



そしてその後、光貴から万次郎茶屋を覗いていた訳などを聞いた所。


ある日1人、家の近くの空き地で光貴が遊んでいた所、見たことも無い2人組の男達が近付いて来て、光貴を無理矢理連れ去ったらしく。


光貴は必死に抵抗しのだが大人の力には敵わず、最後はズダ袋に入れられてしまい。その後、途中何度か寝起きをしたりして、荷馬車で長い時間運ばれてたらしい。


しかし、ある山に近づくにつれ突然男達が苦しむ声が聞こえ。気がつけば固く結ばれていた袋の口が何故か開いており。

光貴は不思議に思いながらも、そのすきに必死に逃げ出したとの事。


その後、山のなかを歩き回っていたら朝倉村にたどり着き、美味しそうな匂いに釣られ、万次郎茶屋へとたどり着いたらしい。



◇◇◇◇◇



まだ幼く、たどたどしい説明であったが光貴が愛満達に話してくれた。


そんな光貴の話を聞き。その男達が奴隷商人の手先ではないかと考えた愛満は、光貴が無事逃げ出せて良かったと心の底から安堵する。

すると一緒に話を聞いていた山背が、ギルド長に光貴の話を伝える事と共に光貴の家族が光貴の事を探していないか等を聞いてくると、光貴を拐った者への怒りに体を震わせ出掛けていく。



そうしてギルド長の琴柏谷とも話し合った結果。

光貴の家族が見付かるまでの間、光貴は万次郎茶屋で預かる事になるのであった。



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