「カレーうどん」と隣村の克海と悲しい歴史
「えっと、この道までやったら大丈夫だよね。
愛之助もタリサもマヤラも警備ありがとう。皆が周りを見張ってくれていたから安心して作業ができたよ。ご苦労様。」
愛満の力を使って生み出した荷馬車風のキャンピングカーに乗り。
ドライブ気分で、とある作業をしながら移動している愛満達は、自称警備担当の愛之助、タリサ、マヤラ達の3人とぎっしり詰まったお弁当等を持ち。
とある作業事。村の皆や村を訪れる人達が安心安全に山道を馬車や徒歩で移動出来るよう。
平らで歩きやすく。周囲の自然をむやみやたらに自然破壊しない等を合言葉に!
周りの樹木との美観を損なわないように考えられながら整備していった石畳の道。
防犯の為、間隔を開けて設置した。特殊な火魔法が施されたモダンな造りの街灯。
簡易的な造りながら雨風がしのべ。寒い季節等には、ちょっとした暖がとれ煮炊きも出来る。
暖炉付きの大人5~6人が悠々と休憩出来。
解りやすく言うならば、『かまくら』の形をした簡易休憩所等を愛満達が暮らす朝倉村が在る大山から黙々と整備していったのであった。
◇◇◇◇◇
そうして一生懸命働いていた愛満達がふと気が付くと、少し前までは風呂屋の屋根がかすかに見えていたのだが、今では全く見えなくなり。
だいぶ遠くまで道を整備してきた事に気付いた4人は、ちょっとひと休みしょうと荷馬車から持ち運び用の椅子を4つ取り出し。
愛之助達が2週間前に飲んで以来、ドハマりしている。
マシュマロを浮かべた甘いココアを愛之助がテキパキと作ってくれ。5人でのんびり、一休みがてら甘いココアを飲み始め。
「プハ~~~~ァ!、はたにゃいたあとのいっにゃいはうまいにぁ~!」
マヤラが急に、まるで仕事終わりのおじさんのよう。
マシュマロ入りのココアがまだ少し熱いので、『フーフー!』と可愛らしく息を吹き掛けながら『マシュマロココア』を冷まし。ちょびちょびカップの中身を飲んでいたはずが
何やら風呂上がりにビールを呑んで至福のため息をつくおじさんのう。『プハ~ァ!』との至福のため息込みで、突然話し。
一瞬、何事かとビックリした3人であったのだが、次の瞬間には何やらピンときた様子で、タリサが可笑しそうにケタケタ笑い始め。
「マ、マヤラ、それ仕事終わりにフルーツ牛乳飲んでるお父さんの真似してるの?」
タリサが父親アルフの真似をしているだろう。弟マヤラに面白おかしそうにケタケタ笑いながら聞くと
「うん。とうたんにょまね。
マヤラきょうはにぇ、たくちゃんはたにゃいた!
じゃから、つかれちゃつかれちゃ。ふふふ~~♪」
いつも家族を守る為。自分達の為に一生懸命働いてくれている父親と同じよう。幼い自分でも愛満の為に働け。役に立てた事が嬉しかったのか誇らしそうに胸を張り。
「じゃってね。こにょまえ、とうたん、ちごとがおわちぇいちょにおふろにはいっちぇあがちゃちょき
おふろあがりににょむこののいっぴゃいは、しごちょをがんばちゃひちょのごほうびなんじゃよって、おちえてくれたんじゃ。
じゃからきょう、おちごとがんばちゃマヤラは、とうたんといちょなの!」
いつも仕事終わりに自宅の風呂に入り。風呂上がりに好物の『フルーツ牛乳』を美味しそうに飲む父親の真似をした事を話し。
「そうだね。今日のマヤラはたくさん警備の仕事を頑張ってくれたから、いつもマヤラやタリサ達の為に頑張って風呂屋・松乃で働いてくれているアルフさん達とお揃いだね。ありがとう。」
「うんうん、マヤラもタリサも今日は疲れたでござろう。お疲れ様でござるよ。
さぁさぁ、拙者イチオシの『マシュマロココア』のお代わりも有るでござるし。拙者秘蔵の『鈴カステラ』も持って来ておるでござるよ!」
少々言葉足らずながらもマヤラの話す意味を汲み取った愛満や愛之助の2人が、マヤラやタリサに労いの言葉をかけながら和やかな空気のなか一息ついていた所。
朝倉村とは反対の山道から一台の荷馬車が砂埃を上げながら凄いスピードでやって来るのが見え。
見た事もない荷馬車の早いスピードや砂埃に何事かと愛満達が驚き。まさに思考が追い付かず、何事かと固まっていると
荷馬車が愛満達が休憩している少し離れた場所に急ブレーキで『キキキッーー!』との摩擦音を上げながら止まり。
先程までのスピードが嘘のよう。
何やらバックでゆっくりと愛満達が居る。かまくら形の休憩場前、正面に戻って来。
荷馬車を引いていた。真っ黒に日焼けし、二メートル近くある大柄でいて、真っ赤な髪色の30代前半位の男性が
「なんねんこりゃ!こげな場所に綺麗な道ができとうばい!
それん、見たこつなか綺麗なもんが建とうばい!
な、なんとしたこつね!?」
愛満達が整備して来た石畳や街灯、休憩場になるかまくらを見つめながら、少々方言がきつい話し方の男性が腰を抜かさんばかりに驚いた様子で声を上げ。
山道の脇の方でお茶休憩していた愛満達に気づくとハッとした様子で、自身が引いていた荷馬車をその場に置き。
「こ、こんちは。ワイはこん先に在る大吉村の漁師で、克海て言うもんやけど
あんたさん達、こん道やそん建物なんかんこつなんか知っとしゃんね?」
先程の自身の大きな独り言を聞かれた事に恥ずかしそうにしつつも驚きを隠せない様子で、少々興奮気味に質問してきて
そんな大吉村の克海なる人物からの質問に
「こんにちは。自分はこの先に新しく出来た朝倉村の愛満と言います。隣に居るのが弟の愛之助と、友人のタリサとマヤラになります。
それで、………この道は自分達の村に続く山道と言うか、歩道だったので、少しでも村の皆が使用しやすいよう。綺麗に整備して来たのですが、………だ、駄目でしたか?」
愛満の紹介で挨拶した3人と共に、勝手に道の整備等をした事が駄目だったのかと心配になりながら愛満が質問すると
「ほんなこっね!そんはスゴかこつな!
あっ、心配せんでもよかよ!あんまりにも綺麗な道やけん。どげんかしたとかと心配しただけたい。」
不安そうに克海を見ている4人を安心させるように豪快に歯を見せながら笑って話し。
「けど、兄ちゃん達がこん道造しゃたとは、ほんにスゴかねえ~。
………だけんど、兄ちゃん達はほんに珍しか!
普通の者はワイみたいな者を見たら顔をしかめる者ばっかりで、口もようけ聞いてくれんのよ。
だけん、こうして兄ちゃん達がワシみたいな者に名前を教えてくれ。普通に話してくれて嬉しかったばい。ほんにありがとな。」
少し悲しそうな顔で苦笑いを浮かべながら克海はお礼を言い。その場を立ち去ろうとするのだが
突然の克海からのお礼の言葉やその悲しそうな表情に、何の事か解らなかった愛満は、失礼かと思いながらも克海を呼び止め。何かあったのですかと質問すると
「あぁ、気にせんでよかよ、よかよか。
それに子供が聞いて気持ちいい話でもなかけんね。子供はのびのびと健やかに育つのが一番たい!」
愛満の問い掛けに子供にする話ではないと苦笑いを浮かべながら克海は遠慮するのだが、何やら野生の感が働いた愛満は自分は成人した大人であり。克海さえ良ければ、自分達に教えてほしいと強く懇願した所。
そんな愛満達の熱意に負け。苦笑いを浮かべた克海が耳汚しになるかもしれないのだがと前置きを置きつつ。
「ワイは鬼族と竜人族の間の子たい。だけん、異種の結婚や出産を嫌う人族のグルワ教が昔は多かったけん。
その教えがまだ根深く残とって、人族が多か町の方さぁ行くと間の子言うて差別や迫害、石を投げられたり、暴力振るわれたりされよったんよ。
しかも人族だけじゃなく。頭の固い年寄りが多くのこっちょう種族でも間の子は種族の者じゃなか言うて、差別や迫害。最悪の場合は処分されたり。悲しいけど、今だにあるんよ。
ワイも昔は、よく知らん鬼族や竜人族の年寄りからお前は鬼族の者じゃなか、竜人族の者じゃなか言うて馬鹿にされたり、こずかれたりしょったんよ。」
何でもないような顔をして、時にはその場の空気を和ませるよう茶化すように笑みを浮かべながら話してくれ。
「あぁ、ほらほら、そげん悲しそうな顔せんと!
俺も両親も今は俺たちみたいな者に優しいしてくれる。同じ苦しみを味わった仲間と言うか、友人達と楽園のような終の住みかに出会え、住めちょるし。
昔のように腹を空かせて餓えもせず。毎日新鮮な魚が食える漁師ちゅう、立派な仕事にもつけとるとよ。」
克海の話を聞き。幼い克海やその家族が受けた。全く意味の無いと言うか、愛満達には意味の解らない。理解したくもない理由の迫害や差別、暴力を思い浮かべ。
涙を浮かべる愛満達を慰めてくれる克海なのであったが、その目は悲しみの色で染まっていて
そんな克海の姿に、克海に悪いと思いながらも愛満達は悲しみの色を濃くする。
そうして、そんな辺りを重い空気が包むなか。
いち早く気を取り直した愛之助が気をきかせて克海をお茶に誘い。
場の空気を和ませるように克海の住む大吉村の事や朝倉村の事等、お互いの村の様々な事を話をし始めるのであった。
◇◇◇◇◇
それからお互いに打ち解け。詳しい話を聞いて解った事が、克海達が住む村は、朝倉村から荷馬車で1~2日かかる海に面した所に在り。
漁業が主な総勢57人の小さな村で、月に一度の商人が来る以外、外部との交流が全く無い。自給自足の田舎村になるらしく。
元は、昔ある王国が勇者を召喚する際に巻き込まれて来てしまった。異世界の福岡と言う県に住む男性が興した村になり。
巻き込まれて召喚された王国で、様々な嫌な思いや出来事に多々巻き込まれ。元の世界にも帰れないと解り。
自己中でワガママな王族や貴族連中にもほとほと嫌気がさし。
同じ日本人なのに勇者と言うだけで自分を見下し。馬鹿にして命令してくる勇者達との人間関係にも疲れ果て
ある日その王国を運良く逃げ出し、様々な国を旅して周り。
その途中に父親とよく釣りに行った故郷の海に似ていた場所に懐かしさを覚え。
旅の途中で知り合った様々な異種の両親の間に産まれ。迫害や差別等を受けていた者達と力を合わせて、ひっそりと誰にも気付かれないよう。
また心ない者達から苦しめられないようにと、人知れず小さな村を作ったらしい。
少しでも皆で幸せに暮らせるようにと自身が持つ様々な異世界の知識をフル活用し。
漁業や塩作り、干物、食用の昆布や海藻を干したり。
村人の何人かが大吉村に住む前に食用の為に育てていた。
日本で言う所の『豚肉』のようなお肉がとれる魔獣の『別名:養豚』と男性が教えた『ハム』や『ベーコン』、『ウィンナー』等の加工品を作り上げ。皆で仲良く暮らしてきたらしい。
【ちなみに異世界人を勝手に召喚していたその王国は、他の国々からあまりの傍若無人ぶりに反感をもたれ。
その後、あっさり滅ばされたらしい。】
と、昔ヒドイ迫害なり差別を受け。基本、大吉村から出たがらない村人の多い。大吉村育ちの克海が何故ココにいるかと言うと
一ヶ月に一度は必ず訪れてくれていた。先代から馴染みの商人が、先の戦争が影響で村に来れなくなり。
その為、様々な生活物質が少しずつ無くなっていき。不安と共に不便していた所。
町に行く為に通らなくてはならない。隣の隣の山で幅をきかせていた凶悪な山賊が高レベルな賞金首狩りのチームに全滅させられたとの。
お喋り好きの風の妖精達の間で最近噂されていた話を村に住む妖精使いが好意にしている風の妖精から教わり。
これ幸いと、村一番の足の速さと力持ちの克海が、村で作った『干物』や『海藻』、『鰹節』
義豚の肉を使用した『ハム』や『ベーコン』等の加工品
海で採れる『貝殻』や『珊瑚』を使用した。ちょっとした『アクセサリー』類等を荷馬車に詰め込み。遠く離れた別の町まで売りに行く途中だったとの事。
【ちなみに、またまた!
1話で登場した朝倉村に比較的に近い。領民達と力を合わせて頑張っている領主が治めている町と言うか、生活規模で言えば村に近い町では、大吉村と負けず劣らずの生活レベルで………………いや、海の幸や『義豚』が気軽に食べれる大吉村より貧しく。
そんな事を昔、村にやって来ていた商人から聞いていた克海は、見知らぬ町ながら自分達のせいで苦労かけられないと
少し無理して、遠く離れた大きな町へと行商に行っていた訳なのである。】
しかし昔、大吉村の別の村人が町に村生産の商品を売りに行った際、間の子だからと馬鹿にされ。かなり安く買い叩かれた事があり。
出来る事ならば、長い付き合いがあり。
不正を働かない馴染みの商人がまた来てくれるのが有難いとの話を聞いた愛満は
「今はお金と言うか、こちらの金銭は払えないのだが、調味料や食材、石鹸、布等の大吉村が求めている品との物々交換なら出来るので、是非とも僕達が住む朝倉村と取引してくれませんか?」
との取引を克海に持ちかけ。
魚好きの祖父母に育てられた爺ちゃん子、婆ちゃん子になる。魚好きの愛満が、少々前のめりになりながら克海に相談した所。
基本、大吉村で村人同士の物々交換が主になり。
またお金を使う場所があまり無く。
国に属しているかもどうかな、あやふやな村では、お金自体が村では価値があまりなく。
逆に物々交換の方が助かると克海の話から答えを聞き。
大吉村と朝倉村との取引がトントン拍子に纏まり。
大吉村の欲しい物リストを書き出してもらいながら、これから1ヶ月に1度。克海が朝倉村へ大吉村の生産品を納品しに来てもらう事等が決まり。
更に話を纏める為。5人は朝倉村へと移動する事にするのであった。
◇◇◇◇◇
その後、朝倉村に着いた克海は、またまた腰を抜かさんばかりに驚き。その場に立ち尽くしていた。
何故ならば、村までの山道が荷馬車が走りやすく。平らでいて、綺麗な石畳の道が整備されて続いていたり。
道脇に先程見た美しい造りの街灯と言う。夜道を照らし出す。
とても便利でいて、画期的な物がバランス良く間隔を開けられ。アチラこちらに何本も立っていたからなのだ。
他にも朝倉村の中に入ると見た事もない。巨大で色鮮やかな建物等がアチラこちらに建ち並んでおり。
そのあまりの美しさに驚きと共に目を奪われつつ。
克海はどこか夢見心地のまま。愛満に招かれるままに万次郎茶屋へと足を踏み入れた所。
本日何度目かになる驚きと共に声を上げ。いよいよ腰を抜かしそうになる。
「な、なんねんこりゃー!店ん中が明るかばい!
そんに外とは違こうて、とても温かばいよ!
ど、どけんなちょうとな!?どれもこれも目にする物、全てが見たこつなか物ばかりで不思議かよ!」
店内全体が程よい明るさに照らされている事。
まだまだ寒い外と違い。不愉快に感じさせない。心地よい温かさに店内全体が保たれてる事に気付いた克海は、手をワナワナさせながら、初めて目にする物達を不思議そうに見つめ話し。
更に落ち着いた色合いの見た事もない立派な家具等に気付くと
「なんねぇ、こん家具は!見たこつなか立派な椅子やテーブルばっかりやねぇ。
そんに見た目も触り心地も良かし。こりゃあ~高いちゃろうか!?
あ~~ぁ、こげん立派な物達に囲まれちょると、よぉ~お袋から『あんたは母ちゃんの腹ん中に繊細さを忘れてきたかもしれんね』って言われちょるけん。
なんか壊すちゃなかと心配して、ほんに緊張してドキドキするばい!
あぁ~、怖か怖か、…………って、うん?ありゃあ」
何やら緊張した様子でブツブツ独り言を呟きながら、自分の村とのあまりの違いに若干腰が引けた克海であったが、店内のある一角を見て。
緊張の糸がほどけた様子で、茶屋内を歩いて行き。
「やっぱ畳ばい!こげんお洒落な店でも畳の部屋が有るとたいね!知らんかったばい!
けど、やっぱお洒落な店やけん。俺ん家の畳部屋とは様子がちごかね!
ハァ~~~!しかしやっぱ畳があるだけで田舎者の俺には心落ち着く場所ばい!ほんに助かるばいねぇ~。
ハァ~~~落ち着くばい!」
茶屋内小上がりコーナーになる。畳が敷き詰められたスペースにゴロリと寝転ぶとホッとした様子で頬を緩め呟く。
と言うのも、実は大吉村の殆んどの家々は、旅の間に結構凄いチートに成長していた。
勉強家でいて、村の創設者の巻き込まれ男性が教えた。自己流の建築技術や魔法を使った村人総出で建てた昔ながらの木材の日本家屋になり。
そのほとんどが男性の好きだった。土足禁止の畳部屋の和室になっており。
大吉村で畳生活に慣れ親しんだ克海は、万次郎茶屋にある小上がりの畳を見て、知らず知らずに緊張していた緊張の糸がほどけたのであった。
【ちなみに大吉村は、昔ながらの木材建築の日本家屋が並んでいて、どことなく昭和レトロ風な懐かしい町並みになっている。】
◇◇◇◇◇
緊張の糸がほどけた様子の克海は、台所でお茶やお茶菓子を準備してくれていた。
愛満と愛之助の2人から温かい『ほうじ茶』や、お茶菓子の『饅頭』等を振る舞われ。心ばかりのおもてなしをされていた所。
風呂屋の前で降りたタリサとマヤラ達の2人が、父親のアルフと料理場担当の責任者・アルフ家次男のユグドを連れ。元気良く茶屋へと戻って来る。
「愛満~、愛之助~、克海さん、だだいま!
タリサとマヤラが戻って来たよ!それにちゃんと愛満のお願い通り。お父さんとユグト兄ちゃん連れて来たよ!」
「マヤラもかえってきちゃよ~~~!」
「あっ、タリサ、マヤラ。2人ともアルフさんとユグドさん連れて来てくれてありがとうね。
寒かったでしょう。今、愛之助がお茶とお饅頭を持ってくるから、ちょっと待っててね。」
愛満がタリサとマヤラの2人にお使いのお礼を言っていると
ちょうど愛之助が人数分のお茶とお茶菓子のお饅頭を持って戻って来て、風呂屋責任者兼番頭のアルフと料理場責任者のユグドを交えた。
大吉村との物々交換する物等の話し合い。
大吉村の交換した食材、商品を風呂屋の食堂や売店で売る為の新しい食材の調理法等をユグトに教えたり。
貝殻や珊瑚を使ったアクセサリー等の販売方法などをアルフに説明。
他にも克海には、大吉村の者達は男性(巻き込まれ)の教えで村に小さいながらも学校が在り。
みんな文字の読み書きが出来るとの話なので、朝倉村から交換した食材の調理や保存のしかた等を書いたノートを作成し。
更には、愛満が知っている『寒天』を使った甘味の作り方等をメモして渡したりと、お互い情報交換しながら和やかな時間が過ぎていく。
それから暫くして、克海がアルフやユグド達3人と楽しげに雑談していると、何やらお腹を刺激する美味しそうな匂いが店内に漂ってきて
「皆さん、お待たせしました。お腹空いたでしょう?お昼ご飯作ってきたので食べましょう。」
台所に移動していた愛満と愛之助、タリサ、マヤラ達4人が、ほのかにだし汁香り。刺激的でスパイシーな、心とお腹を踊らせる。
白い湯気と共にカレーの匂いを漂わせた『カレーうどん』と共に、本日のお昼ご飯にとお弁当に準備していた。
『昆布』に始まり『梅』、『鮭』等の3種類のお握りの他に
お重一杯に詰め込まれた。タリサ達大好きな『甘い卵焼き』や『唐揚げ』等のおかず、お漬け物を持ち。克海達が座るテーブル席へと戻って来た。
ちなみにマヤラも『お箸』と『レンゲ』がのったお盆を運んでくれており。絶賛、お手伝い中であり。
「よいちょ、よいちょ、よいちょ……………ふぅ~、おちごとかんりょう!
きょうもマヤラ、おちゅとめごくろうちゃまでしゅ。」
自分自身を労いながら、今日もお手伝いを頑張るマヤラなのであった。
◇◇◇◇◇
あの後、愛満達の薦めで『風呂屋・松乃』に一泊し。
『風呂屋・松乃』の自慢のお風呂にゆっくりと浸かり。日頃の疲れをとった克海なのであったが
1日でも早く、大吉村の皆に交換した品や、昨日決まった話を届けたいと無理言い。
早朝からユグド達が持たせてくれた朝・昼・晩の三食分の弁当と共に、愛満達からの村の皆への土産品
大吉村への帰り道の途中に食べてと手渡された『和菓子』や『果実』等をどっさり貰い。
行きと比べ物にならないほどの砂埃を上げながら、もうスピードで大吉村への帰り道を走る克海は、ご機嫌に鼻唄を歌っていた。
♪~~~♪~♪~~♪~~~♪~~♪♪~♪~~~♪
「ハァ~~~!それにしても風呂屋・松乃の風呂は最高やったし。
愛満にしてもユグトにしても、2人が作ってくれた料理も和菓子もみん~な旨かったばいね!
それに初めて飲んだ『ほうじ茶』や『黒糖饅頭』なる饅頭にしても、甘もうて格別の旨さやったばい!
あっ、そうそう!初めて食うた『カレーうどん』なるもんにしても、初代村長様が教えて下さった『うろん』に麺が何処と無く似ちょって旨かったし。
あの腹をくすぐるような香り、匂い、味わいが口の中で合わさり。まさに至福のひとときで最高やったばい!
うんうん、あれはほんに旨かったばいね!
あ~~~ぁ!何で『カレーうどん』は、あげん旨かちゃろうなぁー。
こぉ~麺に絡む濃厚なカレー汁と共に麺と一緒に汁の中で踊ちょる『義豚』によう似た『豚肉』!
そこにほんのり歯応えがのこった『白菜』なる野菜達の『白葱』、『しめじ』達が口の中で合わさり………………ほんに旨かったばい!
あ~~~ぁ、思い出したらまた食いたかなってきたばい!」
口の中にヨダレを溢れさせ。初めて食べた『カレーうどん』の美味しさをしみじみ思い出したりしながら
その反面、克海は改めて今回あの場所で愛満達に出会えた奇跡に感謝の気持ちで心がいっぱいになりつつ。
抑えきれない興奮で、ついつい大きな独り言を呟いてしまう。
「しかし一時はどうなるかと思ちょったばってん。あそこで愛満達に会えて、ほんに良かったばい!
見たこっつなか真っ白な砂糖を始め。ベーコン、ウィンナーなんかを作る時、料理する時に使うと旨なる調味料の数々を沢山くれしゃったし。
時が止まちょるちゅう。高価な魔法箱に入いっとう。新鮮な野菜や果実、卵なんかの高価な食べ物を交換してくれ。
更には嗅いだこっつなか、よか匂いの石鹸と共に、見たこっつなか色とりどりの布やタオル等。
こん荷馬車一杯に乗り切れんくらい交換してくれたばいね!」
ズッシリした重さを主張する荷馬車いっぱいの荷物を嬉しそうに思い出し。
克海が大きな独り言を呟いていると、更に何やら思い出した様子でニヤニヤと嬉しそうに笑みを浮かべ。
「しかもたい!風呂屋が起動にのったら、お金と物々交換を日によって自分達で選んで良か言うて、交換出来るようにしてくれるちゃもん。ほんに信じられんくらいの良か話しばい!
あっ、話し言うたら万次郎茶屋の饅頭たい!
ワイがあんまりにも饅頭が美味しい言うけん。
愛満が気をきかせて村に残ちょう人達に言うて、大量の同じ『黒糖饅頭』と『お茶の葉』をお土産に持たしてくれたたいね。
あ~~~ぁ!村に帰っても、あの『黒糖饅頭』がまた食えるげな、ほんに楽しみばい!
父ちゃんも母ちゃんもチビ達も絶対気に入るはずやけんが、絶対ワイも一緒に食わしてもらおう!」
行きは暗く。あまり元気の無かった克海の顔が、今は真っ直ぐ大吉村への帰り道を見据え。
ニコニコと満面の笑みで、村人達への満杯の荷馬車の戦利品と共に
これからきっとなにかしらの良い方へ変わっていく村への未来にむけ。一歩一歩前に足を進めながら確信を深めていく克海の新しい一日が、今、始まったのであった。