唐揚げ金平と兎族のタオ・再び
その日 万次郎茶屋には、兎族のタオが手土産に実家の唐揚げ店の売れ残りの鶏もも肉の唐揚げを大量に持って遊びに来ていた。
「いやー、助かったよ。愛満、ありがとう!
今月から弟のルクが揚げ場に入ってるんだけど、まだ1日の唐揚げの揚げる量がつかめてないらしく。不安でついつい多目に揚げすぎて、毎日ちょこちょこと余っちゃてたんだ。
揚げ色や揚げ方はマスターしてるから、あとは1日の唐揚げの売れる量をつかむだけなんだけどね~。
あれだけは口で言っても解らないし、本人が感覚をつかまなきゃいけないからね。
それにお客さんに前日の唐揚げをそのまま販売するのは心苦しいし。
勿体ないから愛満が作ってくれた魔法の袋に保存して、家族皆でちょこちょこと食べてるんだけど………………やっぱり連日の唐揚げは胃にも気持ち的にも辛く……それをルクに言うのも可哀想だし。
誰かにあげるにしても後々その事が問題になったら困るし、家族で頭を悩ませてたんだ。
だから愛満が貰ってくれると言ってくれて、本当に助かったよ。ありがとうね!」
時の止まる魔法の袋に大量詰められた唐揚げを渡しながら、タオは愛満に感謝の言葉をのべる。
「ううん。こっちこそ、こんなにいっぱいの唐揚げありがとう。僕も含めて大食いが何人もいるから本当に助かるよ。
けどそうだよねぇ~、いくら美味しくても連日の唐揚げは年と共に胃にも気持ち的にも辛いよね。」
「うん。下の弟や妹達は『美味しい、美味しい』と平気そうなんだけど、僕や両親は日に日に胃にも気持ち的にも辛くなってきて……………アレ?僕まだ10代なのに、こんな事言ってて大丈夫なのか……なぁ………あれ……………おかしいなぁ、目から水が沸き出すぞ………」
「ち、違うよ、タオ!きっと、タオもライさん達も毎日のジューシーで食べごたえある唐揚げに飽きてるだけなんだよ!
だからそんなにショック受けなくても大丈夫だよ。ねぇ、ね!タオ、元気だして!」
同じ10代で2才下の弟のルクは平気なのに、兄弟のなか自分だけが連日の唐揚げがツラい事に気付き。タオがショックを受けるなか愛満が必死に励ます。
「そ、そうだ!余った唐揚げをそのまま食べるんじゃなく、ひと手間加えて食べたら連日の唐揚げでも、タオも平気になるんじゃないかなぁ?
そうだよ!きっとそしたら平気だよ!だから元気だしてタオ、ね!
………そうだ!そしたら今からこの唐揚げを使ってアレンジ料理を作ってみょうよ!
そしたらお店の新メニューも増えるかも知れないし、タオやライさん達も唐揚げを粗末にしないですむよ。
それに美味しい物が食べれて幸せな気持ちになるでしょう。まさに一石二鳥だよ!いや、一石三鳥かもしれないよ!そうしょうよ、タオ。」
少々テンパりすぎた愛満が少々ぶっ飛んだ事を言いながら、タオが持参した鶏もも肉の唐揚げを使って、アレンジ料理を作り始めるのであった。
◇◇◇◇◇
「そうそう、フライパンにごま油を多めにひいて。輪切りの鷹の爪を炒めたら、今が旬の新ゴボウと春人参の千切りを加え、少ししんなりするまで炒めてね。」
愛満がタオに『唐揚げ金平』の作り方を教えながら、隣で唐揚げにかけるだけのニラソースや合えるだけのレモンチリソースの下ごしらえをしている。
「愛満、少ししんなりしてきたけど、次はどうするの?」
「次はね、そのフライパンに鶏の唐揚げを加え。普段のきんぴらごぼうの味付けのように砂糖や醤油、味醂を加え。
汁気が無くなるまで甘辛く炒めたら、白ごまをふり混ぜ『唐揚げ金平』の完成だよ。」
楽しげに話ながら、その日のお昼ご飯になる唐揚げのアレンジ料理を作っていった。
そして、お腹ペコペコで帰って来た愛之助や美樹達とのお昼ご飯の時間が始まり。
「うわー!今日のお昼ご飯も美味しそうだね♪何これ?」
「このりょうりにゃに?」
初めて見る唐揚げ料理の数々にタリサとマヤラの2人が愛満に質問する。
「この料理はね、タオの家の人気の鶏の唐揚げを使って作った料理になるんだよ。
こっちの深緑のお皿のゴボウが入ってるのが『唐揚げ金平』になって、そっちの白いお皿のアボカドとトマトが入ってるのが『唐揚げのレモンチリソースあえ』
黄色いお皿のが刻んだニラをたっぷり使った『唐揚げのニラソースがけ』、赤いお皿のが、旬の筍や新玉ねぎ等の野菜を使った『酢豚風』になるよ。
全部初めて作った料理になるから、みんな味の感想聞かせてね。」
愛満が説明するなか美樹達は初めて見る新メニューに興味津々で食べ始める。
「このトマトやアボカド、スライスされた玉ねぎの入った『唐揚げのレモンチリソースあえ』
どことなくメキシカン料理な見た目で、味わいもにんにくや一味唐辛子、レモン汁がきいててスパイシーな味わいで旨いなぁ!
きっとビールと一緒に食べたらもっと旨いんだろうなぁ~!
あ~~~ぁ!昼から仕事じゃなきゃ、今すぐにでもビールと食うんだけどなぁ。惜しかった!」
美樹がビールと良く合うピリ辛の『唐揚げのレモンチリソースあえ』の感想を言えば、愛之助達も
「う~~ん♪この『唐揚げ金平』初めて食べたでござるが、唐揚げや金平の甘辛い味付けに時々くるピリピリとした鷹の爪や白ごまの味わいが美味しいでござるね。甘辛い味付けにご飯が進むでござるよ♪」
「おいちい、おいちい♪」
「こっちの『唐揚げのニラソースがけ』も美味しいのう~♪
ニラがドッサリ入った酢醤油風のソースが、外はサクサク、中はジューシーな唐揚げをサッパリと食べさせてくれるのじゃ!」
「本当に美味しいアルね!黛藍が食べた『酢豚風』は、新玉ねぎや筍、春人参なんかの旬の野菜がたっぷり入ってて、栄養満点アルし。とろみがついた甘酢ダレとも良く合ってサッパリして美味しかったアルよ。」
「どれもこれも美味しいね♪」
愛之助達が初めて食べるタオ家の鶏唐揚げを使った何種類かのアレンジ料理の味や見た目等の感想を口々に言うなか。
タオは、お店への新メニューにもなるかも知れないと皆の感想などをメモ帳に書き込んでいく。
◇◇◇◇◇
こうして、万次郎茶屋のとある1日のお昼ご飯の時間が進んでいくのであった。




