和菓子『みたらし団子』とギルド長の琴柏谷
「ほぉー、ここが朝倉村ですか、………それにしても最近出来たと考えられないくらいの美しい街並みで立派な村ですね。」
元冒険者で月熊族の琴柏谷は、初めて訪れた朝倉村の見た事もない美しい造りの街並みに驚き感動して、しばしその場に立ち尽くし見良いっていた。
「お兄ちゃん、どうしたの?道に迷ったの?」
「おにたん、どうちたの?ぽんぽんいたいた?」
「大丈夫でござるか?先ほどから見ていたら、その場に立ち尽くして動かなくなったでござるから迷惑かと思ったでござるが、心配で声をかけさせてもらったでござる。何かお困りでござるか?」
たまたま夜花宅から万次郎茶屋への帰宅中の愛之助とタリサ、マヤラ達3人に声をかけられる。
突然声をかけられ驚いた琴柏谷であったが、愛之助達からの誤解を解くため
「3人とも心配して声をかけてくれて、ありがとう。
自分は月熊族の琴柏谷と言う者なんだけど、初めて朝倉村を訪れてね。
この美しい街並みや建物を目にしたら、ついつい時間を忘れて見良いってしまってね。だからどこも悪くないんだよ。心配かけたね、ありがとう。」
「そうだったんだ、良かった!お兄ちゃん急に動かなくなちゃったから、どうかしたのかと心配しちゃった。
けど朝倉村の街並みを見いちゃうのも解るよ。この村王都にも負けないぐらいに綺麗でしょう♪僕も大好きな村なんだ!
あっ!それから僕は朝倉村に住む兎族のタリサだよ。隣にいるのが弟のマヤラ、よろしくね!」
「あい!マヤラでしゅう。しょれからにいたんにゃんともにゃくて、よかちゃね♪」
「そうであったでござるか!何ともなくて良かったでござるよ。それから拙者は愛之助と言うでござる。よろしくでござるよ!
しかし自分達の住む朝倉村を誉めてもらえるのは嬉しいでござるね♪
この朝倉村は拙者の兄じゃが造ったでござるから、こうして村の事を誉めてもらえると何だか嬉しくもあり、誇らしい気持ちになるでござるよ♪」
その後 仲良くなった4人は、しばらくその場で立ち話し、琴柏谷が愛満を訪ねて来た事が知り。愛之助達案内のもと4人で万次郎茶屋へと移動するのであった。
◇◇◇◇◇
チリーン、チリーン♪
「愛満、ただいま~!タリサが帰って来たよ♪」
「よしみちゅ、たらいま~!マヤラもかえちゅてきちゃよ♪」
「ただいまでござる!愛満、お客さんを連れて来たでござるよ。」
万次郎茶屋へと帰って来た愛之助達は、愛満へとお客さん連れて来た事を伝える。
「愛之助、タリサ、マヤラお帰り。僕にお客さん、誰だろう?」
愛之助達を出迎えた愛満は、予定にない自分へのお客さんが誰だろうと不思議そうにしながら、愛之助の後ろに立つ琴柏谷へと会釈して、愛之助やタリサ達から紹介してもらう。
「愛満あのね!このお兄ちゃん、月熊族の琴柏谷兄ちゃんになるだよ!」
「そうでござるよ!それで琴柏谷殿、こちらが拙者の兄者になる愛満でござるよ!」
愛満が見上げるほどの高い身長と筋肉質な体格の琴柏谷に、普段小さい者達に囲まれている愛満は、少し驚きながらもお互いに自己紹介をして、琴柏谷が愛満を訪ねて来た訳を聞く。
◇◇◇◇◇
そうして琴柏谷の話を聞いた所。
前々から朝倉村を訪ねる冒険者達から朝倉村にギルドの支店を建てて欲しいと要望が有り。
朝倉村の村長からの要望書や証明書も有る事から、王都にあるギルド本部の話し合いの中で、朝倉村にギルドの支店を建てる事がすんなりと満場一致で決まったらしい。
そして一番大変な(面倒とも言う)ギルド長を誰にするかとの難しい話し合いのなか、王都ギルドで冒険者業のかたわらギルド職員として長い間ギルド長の手伝いをしていた。
高レベル冒険者の琴柏谷が朝倉村のギルド長に決まったそうだ。
そしてここだけの話。そのギルド長を決めるさいに怪我人が出るほどの派閥争いのゴタゴタがあったらしく。
ある日突然、ギルド長候補にも上がってもいなかった琴柏谷が朝倉村のギルド長に選ばれたらしく。
琴柏谷自身も、何故自分が朝倉村のギルド長に選ばれたのかも今だに解らないと不思議がっていた。
ちなみに琴柏谷は知らないのであるが、今回の支店のギルド長決めの派閥争いでは、ギルド長の押し付けあいでゴタゴタになり。
普通であれば、これからドンドン栄える事が予想出来る朝倉村のギルド長へと、どの派閥の者達もなりたがるはずなのだが
派閥のトップや側近達が、まだまだ誕生したばかりの朝倉村の内情を詳しく知らなかった事や愛満の力で、朝倉村に害になる人物が弾かれ。
特に出世欲や物欲も無く、金銭感覚も庶民的で、曲がった事が大嫌いの平和主義の琴柏谷が引き寄せられ。何かに導かれるように朝倉村のギルド長へと決まったのだ。
◇◇◇◇◇
琴柏谷の話を聞き終えた愛満は、確か前に村を訪れる冒険者達に朝倉村にギルドの支店を建てても大丈夫かと聞かれていた事を思い出し。
琴柏谷の話に納得していると愛之助達が冷たく冷えた『緑茶』と愛之助が最近ハマっている茶菓子の『みたらし団子』を持ってきてくれた。
そして話が終わったと思ったタリサ達がやって来て、琴柏谷の隣の席にちょこんと座り。一緒に『みたらし団子』を食べ始める。
「あ~ぁ!みたらし団子いつ食べても美味しいね♪モチモチのお団子に甘じょっぱいタレが合わさって、何本でも食べられるよ!」
「みちゃらしじゃんご おいちいね。マヤラ みちゃらしじゃんご じゃいしちゅき♪」
「本当に美味しいでござるね!甘じょっぱい砂糖醤油の匂いがお腹をくすぐり。焼きめの付いた真ん丸のお団子にとろみのついたみたらしタレが絡まって、見た目もグーで美味しいでござるよ♪」
タリサ達が『美味しい、美味しい』とみたらし団子を食べていた所、初めて目にする『みたらし団子』に琴柏谷が驚いた様子で見ているだけで、手をつけていない事に気づいたタリサやマヤラが
「あれ?琴柏谷兄ちゃん食べないの?みたらし団子美味しいよ、食べてみて♪」
「こちょにいたん、みちゃらしじゃんご おいちいよ♪」
進め、琴柏谷も恐る恐ると初めて食べる『みたらし団子』を一口食べ。あまりの美味しさに夢中で一本ペロリと食べ終え。
「な、何ですかコレ!スゴく美味しいです!
初めて食べるモチモチした食感に甘じょっぱい 黄金色したタレと良く絡まり、ついつい食べてしまう美味しさです。…………うんうん、病みつきになる美味しさです!」
感激して、目の前にある『みたらし団子』をどんどん食べ進めていく。
◇◇◇◇◇
こうして愛満お手製の『みたらし団子』の虜になった琴柏谷は、ギルドを建てるさい街並みを統一させるためにと愛満の強い希望から、愛満の力を使い。
王都にも負けない立派なギルドの建物やギルド近くに琴柏谷用の自宅やギルド職員用の職員寮を建ててもらい。
朝倉村を訪ねる冒険者達から大歓迎されるなか、朝倉村のギルド支店が稼働するのであった。




