チキン南蛮と定食と兎族タオ
その日 万次郎茶屋には、朝倉村で養鶏場と鶏肉屋、持ち帰りの唐揚げ店を営む。兎族のライ家の長男のタオが友人の愛満を訪ねて遊びに来ていた。
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「それでさぁ、そのお客さん家の唐揚げが美味しかったからって村に滞在する3週間の間、毎日買いに来てくれたんだよ。」
ついこの間まで村へ滞在していて、毎日のように『黄金唐揚げ店』に買い物に来てくれていた冒険者のお客さんの話をする。
「えぇー3週間も!そりゃあタオ家の唐揚げ美味しいけど、3週間も毎日食べてたら飽きないのかなぁ?」
「僕もそう思ったからその冒険者のお客さんに聞いてみたんだ。
そしたらサナ叔父さん家のお店で売ってるマヨネーズや朱冴のお店で売ってるスパイスなんかをいろいろかけて食べてたから、飽きるどころかまだまだ食べたりないって言うんだよ。ビックリだよね!」
「そっか!マヨネーズにスパイスね。その冒険者のお客さんかなりグルメだね。」
「うん。その冒険者のお客さんも自分で言ってたよ。
『俺は旨い食い物を食べるために生きてるんだ!たがらどこかに旨い食い物があると聞くと、どんなに遠くてもついつい足をのばして食いに行くんだ!』ってね、本当にスゴいよね。」
愛満とタオが2人で世間話をしていると勉強を終えた愛之助やタリサ達が『お腹がすいた』と言いながらやって来る。
そこで愛満はお昼の時間も近い事もあり、タオを昼食に誘いお昼ご飯を作り始めるのであった。
◇◇◇◇◇
そうして手際良くお昼ご飯を作り終えた愛満が、愛之助達にお手伝いしてもらい。
テーブルセッティングを終えると美樹達が帰って来た事もあり。お腹ペコペコのタリサ達が待ちに待ったお昼ご飯の時間が始まる。
「うわー美味しそう!なにコレ?なんて料理なの?ライ兄ちゃん家の唐揚げに少し似てるけど違うし、何なんだろう………ねぇタオ兄ちゃん、解る?」
初めて見た主菜の鶏肉料理にタリサが目を輝かせながら隣の席に座る、叔父に当たるタオへと訪ねる。
「ごめんね、タリサ。僕にも解らないや、けど本当に美味しそうだね。ねぇ愛満、この料理はなんて言うの?」
自身も見た事の無い料理に愛満へと質問する。
「あぁ、この鶏料理はね、タリサが少し惜しかったんだけど、唐揚げと同じ鶏モモ肉と胸肉の2種類の鶏肉を使い作った『チキン南蛮』と言う料理なんだよ。
タオと唐揚げの話してたら、なんだか久しぶりに婆ちゃんから習った我が家直伝のチキン南蛮が食べたくなってね。
タオもいる事だし、今日のお昼ご飯に定食風に作ってみたんだ。」
愛満が説明するのだが、そんな愛満の説明を聞きながらも待ちきれず我慢できなかったタリサ達は、モグモグと口を動かしながら口々に初めて食べる『チキン南蛮』の感想を話し出す。
「美味しい♪鶏モモ肉のチキン南蛮を食べたけど、お肉がジューシーで、甘酸っぱい味わいとタルタルソースが良く合ってる!」
「本当に美味しいでござるね。拙者は鶏胸肉のチキン南蛮を食べたでござるが、揚げてサクサク感に南蛮酢と具沢山のタルタルソースが合っていて、何個でも食べれるでござるよ。」
「マヤラもあまじゅっぱくて、チャルチャルチョチュもおいちい!やましぇもおいちい?」
口のまわりにタルタルソースをつけながら、美味しそうにチキン南蛮を食べているマヤラが、隣に座る山背に話しかける。
「あぁ、美味しいのう~♪ワシやマヤラの事を考え、愛満が一口サイズに作ってくれておるから、食べやすくパクパク食べれるのじゃ。」
山背がチキン南蛮の感想を話す。するとそれを聞いた美樹も3杯目になる大盛りの白米を食べる手を止め。
「本当に食べやすくて旨いな。
それにいつもと違う定食スタイルで、なんだか昔を思い出して気分が変わってウキウキするぜ!
それに!それに!みじん切りされた具沢山の茹で卵や胡瓜、らっきょう、乾燥パセリなんかの具材とピリッとする粒マスタードの味わいや、マヨネーズのまろやかさと合わさって、このタルタルソースは百点満点で本当に旨い!」
「本当に美味しいアルね。黛藍はこの甘酸っぱい甘酢が好きアルよ。」
美樹達も口々に感想を言い合うなか、黙々とご飯を食べていたタオが愛満に矢継ぎ早に質問する。
「本当に美味しいね!このチキン南蛮とタルタルソースはどう作るの?難しい?
それにお肉にかかってる甘酸っぱい味わいの甘酢とは何?」
「ううん、そんなに難しくないよ。僕が婆ちゃんから習ったチキン南蛮の作り方はね。
まず『タルタルソース』が、みじん切りした胡瓜と茹で卵、らっきょう、乾燥パセリ、マヨネーズ、砂糖、塩コショウ、味の素、粒マスタードを混ぜ合わせだけの少し具沢山なタルタルソースになるんだ。
今回は『らっきょう』を使ったけどらっきょうじゃなく、みじん切りした『玉葱』でも良いんだよ。
けど家みたいに大人数分のタルタルソースを作る時は、玉葱だと水にさらしたり、水気をきったりと何かと大変だから、家では昔かららっきょうを使ってるんだって婆ちゃんが教えてくれたんだ。
それにこのタルタルソースは、他のフライなんかにつけて食べても美味しいからオススメだよ。」
愛満が自身の祖母から習った『タルタルソース』の作り方を教える。そして続けて『甘酢液』やチキン南蛮の作り方を話す。
「次に『甘酢』が、小鍋に醤油と酢、砂糖、輪切りレモンを加えて一度沸騰させておいて
下処理して一口大に切って片栗粉をつけて、しっかり中まで火が通るまで揚げた鶏肉に、更にさらに溶き卵にくぐらせ、もう一度サッと鶏肉を揚げ。
作っておいた甘酢にサッとくぐらせたらチキン南蛮の完成だよ。
付け合わせには千切りキャベツやトマトかミニトマトなんかを添えたら見映えも良くなるよ。」
「へぇー意外に簡単だね!もっと鶏肉に下味つけたり、衣にいろいろしなくちゃいけないかと思ってたよ。これなら家の店でも新商品として出せるや!
それにこのご飯と味噌汁に漬物、煮物のチキン南蛮の定食スタイルも良いねぇ。
チキン南蛮の変わりに唐揚げにしても大丈夫だと思うし。」
愛満からチキン南蛮の作り方やおぼんにのった定食風のお昼ご飯を見ていたタオは、しばらく考え込んだあと愛満に質問する。
「ねぇ愛満、家の唐揚げ店でこのチキン南蛮を売り出してもいい?
それから唐揚げ店の空きスペースで、愛満が作ってくれた今日のお昼ご飯みたいに唐揚げやチキン南蛮の定食を販売したいと思うんだけど、どう思う?」
「うん、良いんじゃない!タオ家の唐揚げ人気だし、唐揚げもチキン南蛮も定食で出したら人気が出ると思うよ。
それに元からタオ家の唐揚げ屋さんの新商品にどうかなぁと思って作ってみたんだ。
婆ちゃんに習ったチキン南蛮が、多くの人に食べられると思うのも嬉しいし、僕に出来る事なら力になるし応援するよ!
そうだ!それならいっそうの事、今販売してる唐揚げにも付属のスパイスも考えてみようよ?」
タオから聞いた冒険者の話を参考に唐揚げに合うスパイスを考え始める。
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こうして、朝倉村の『黄金唐揚げ店』がリニューアルオープンする事になり。
持ち帰り店では、新商品の『チキン南蛮』と選べる3種類のスパイスが加わり。
新たに増築され設けられた飲食スーペスでは、白米と味噌汁、漬物、千切りキャベツがお代わり自由で食べられる。
『唐揚げ』と『チキン南蛮』の定食セットが、村人や村を訪れる人達に喜ばれるなかオープンするのであった。




