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和菓子『関東風桜餅』と花見祭


その日一年中桜が咲き誇る朝倉村では、新しく仲間入りした村人達の歓迎会がわりの大規模な花見祭が、愛満主催で桜の花が咲き乱れる神社の境内一角で開催されていた。



「愛満~!どうだったでござるか?拙者やタリサ達の歌や踊りは上達していたでござるか?」


「よしみちゅ、かえちゅてきちゃよ。マヤラのうたてるちょころみえた?うたちょうずだった?」


「愛満、ただいま!あ~~~~~ぁ、全力で歌ったから喉が乾いちゃった。」


自分達苺忍者隊の歌と踊りの出番を終えた愛之助達が愛満が座っているシートに元気良く戻って来る。


そんな3人を出迎えた愛満は、春のポカポカした陽気で汗を流す愛之助やタリサにタオルを渡し。マヤラの汗を吹いてあげたりしながら、保冷バックに入れて持参してきた冷たい緑茶を振る舞う。


「おかえり。みんなたくさん歌って踊ったから喉乾いたでしょう。はい、緑茶だよ。冷たいからゆっくり飲んでね。」


「本当だ!冷たい。愛満ありがとう。」


「ほんちょじゃ、ちゅめちゃい!よしみちゅ、ありがちょう♪」


「冷たくて美味しそうでござるね。歌って踊て喉がカラカラだったでござるから助かるでござるよ。愛満、ありがとうでござる。」


愛満の差し出す緑茶を受け取った愛之助達は、冷たく冷えた緑茶に感激しながら愛満にお礼を言うと愛満の注意も聞かずに勢いよく飲みだす。


「……ゴクゴク…ぷぅーはぁ~~!あぁ~~美味しい♪

本当にこの緑茶美味しいね!でも、なんかいつもの緑茶よりコクや甘味を感じるよ。どうして?」


幼いながら毎日のように万次郎茶屋で様々なお茶を飲み。すっかりお茶の違いを解る男になっているタリサが、何やら不思議そうな顔をして愛満に話しかける。


「凄い!タリサ、よく気づいたね。

今日から新しい茶葉を使ってて、水だしタイプで茶葉の中に抹茶が入っているんだ。

だから普段の緑茶より鮮やかなお茶の色で見た目も綺麗だし、コクや旨味を強く感じられるんだと思うよ。」


誰にも話していないのに、今朝から新しい茶葉に変えた事に気付いてくれたタリサを誉め。新しい茶葉の特徴を話す。


「新しい茶葉に変わったからお茶の味が違うんだ!…ゴクゴク…うん!美味しい♪」


「うん、そうなんだよ。それにしても皆、前に発表した時より歌も踊りも上手になってて驚いちゃったよ。練習頑張ったんだね。スゴく上手だったよ!」


愛満は美味しそうに緑茶を飲むタリサ達を微笑ましそうに見ながら、前のお祭りの時に発表した時より格段に上達した愛之助達苺忍者隊の歌や踊りを誉める。


「本当に!?ヤッター!実はね、愛満をビックリさせるために毎日外で練習してたんだ♪」


「マヤラもまいにちれんちゅうがんばちゃんじゃよ!」


「愛満、ビックリしたでござるか?」


「うん。みんなスゴく上達してたからビックリしたよ。」


「やったでござるよ!タリサ、マヤラ、作戦大成功でござるね!」


愛満をビックリさせるため、内緒で歌や踊りの練習を日々頑張っていた愛之助達は嬉しそうにハイタッチをする。

すると何かに気付いたタリサが不思議そうな顔をして


「うん!やったね、愛之助♪

あれ?…えっ!ねぇ、愛之助。山背と丈山が舞台に出てきたよ。何をするんだろう?知ってる?」


「えっ!?……本当でござるか!愛満、山背と丈山が舞台に出てきたでござるよ!」


「えっ!?山背も丈山も舞台に出演するなんて、そんなこと一言も言ってなかったよ!最近何かコソコソしてるとは思ってたんだけど、何を披露するんだろう……大丈夫かな。」


誰も聞いてなかった山背と丈山の舞台出演に、ああ見えて山背は少しおちょこちょいな所が有るので、愛満達は山背が何か失敗しないかとハラハラドキドキ心配しながら午前の部の花見祭が過ぎていくのであった。



◇◇◇◇◇



「それにしても愛之助やタリサ、マヤラ達、前回の時よりも歌も踊りも上達していて上手だったぜ。3人とも練習頑張ったんだな、俺も見ていて驚いたぜ!

あ、けど山背と丈山の2人が舞台に立った時は、一瞬どうなるのかと心配したぜ。けど演奏上手かったな!俺、司会しながらビックリしたぜ。」


「本当アルよ!黛藍も美樹の手伝いしながら山背と丈山の2人が舞台に出てきた時、どうなる事かとドキドキハラハラしたアルよ!」


前回の好評に終わった祭りから引き続き、今回も花見祭の司会進行の大役を頼まれた美樹とアシスタントの黛藍がお昼ご飯を食べに戻って、愛之助達の頑張りや山背の事を話す。


「本当でござるよ!拙者達も何も聞いてなかったでござるから、本当にビックリしたでござる!」


「僕もビックリしちゃった!ねぇ、マヤラ」


「あい、ビックリしちゃ!」


誰にも知らされていなかった山背と丈山の舞台出演で、みんなハラハラドキドキした事や演奏の上手さを話す。


そして、そんな話題の主役の山背と丈山の2人はと言うと愛満お手製の花見弁当のお重から2人の好物でもある『筍の炊き込みご飯のお握り』などを呑気に食べ。


「う~ん♪愛満が作る筍の炊き込みご飯のお握りは、いつ食べても旨いのう~。

それにこのアスパラやハム、スライスチーズを包んだ『春巻き』は、揚げられ皮がパリパリしておって、中のアスパラやハムの食感、ほんのり溶ろけたチーズが口の中で合わさり、実に旨いのじゃ!」


「本当に美味しいですね。しかし私が手入れしている竹が、こんなに美味しいとは知りませんでした。

こちらの鰹節をまぶした『土佐煮』もしっかり味が染み込んでいて、ついつい箸が進む美味しさですし………こんなに美味しいならば、これは作り方と共に里の家族にも教えてあげねばなりませんね。」


舌鼓をうっていた。そんな山背達に気付いたタリサや愛之助達は、愛満お手製の美味しいお弁当を食べ尽くされては大変と慌てた様子でお弁当を食べ始める。


「マヤラもちゃけのこごあんのおいぎり おいちい!

しょれからよしみちゅがちゅくる、『あみゃいたまごやき』もだいちゅきよ♪」


「う~~~ん♪本当にいつ食べても愛満お手製の『いなり寿司』は美味しいでやんすね!

それに今日のいなり寿司は、ヒジキや人参、絹さや、蒟蒻など具沢山の具材がご飯と混ぜられていて、上品な甘さに味付けされたお揚げと良く合ってるでやんす♪」


「僕はこの『春人参のザーサイあえ』が美味しいコン。

千切りされた春人参の鮮やかな色合いが目を引き、食べるとザーサイ独特の塩けや風味が、春人参の甘みを引き立てくれているコン!それにほんのり香るごま油もいい味だしてるコンね。

そうだコン!これならラーメンのトッピングにも良さそうだコンよ!愛満、どうやって作ったコン?良かったら作り方教えてほしいコン。」


いつの間にか愛満家のお昼ご飯に参加していた狐族のいなり寿司ラブの朱冴兄弟の弟・青那が『ザーサイあえ』の作り方を愛満に質問する。


「うん、大丈夫だよ。この『春人参のザーサイあえ』はスゴく簡単でね。

千切り用のスライサーで千切りした春人参を少量の塩をまぶして、少しおいて水けを絞り。

そこに千切りした味付きザーサイと白ゴマ、ごま油を加え、混ぜ合わせたら出来上がりなんだ。

ねぇ、火も使わず味付けいらずで簡単でしょう。」


いつものようにサラッと参加してた朱冴達に誰も驚く事もなく。愛満達のお昼ご飯タイムは、和やかに皆で仲良くモグモグとお重の中身を食べ進め、減らしていく。


途中、午後からの進行などの確認でついつい食べる手が止まりがちになる美樹や黛藍に、愛満がお重から取り分けたおかずやお握りの乗った紙皿を渡しながら声をかけ。


「はい、美樹も黛藍もこれ食べて午後からも頑張ってね。

けど確認はそのへんにして早く食べなきゃ、腹ペコ怪獣達がお重の中身をカラッポにしちゃってるよ。」


クスクスおかしそうに笑いながら教えてくれる。

そんな愛満の言葉に話を切り止めた美樹達は、口をパンパンにして、取り皿の上はてんこ盛りのモグモグしている愛之助達の姿や思いのほか早いお重の減りぐあいに驚き。慌てて自分の好物を取り皿に確保していくのであった。



◇◇◇◇◇



そうして各自が愛満お手製の花見弁当を楽しんだ後、まったりくつろいでいると愛満が空になったお重を片付け。何やらもう1つのお重を取り出す。


「みんなお腹にまだ余裕ある?

食後のデザートに果物と『関東風の桜餅』を作ってきたんだけど食べれる人はたくさん食べてね。」


練乳が添えられた程好い冷たさの苺や桃、キウイ、林檎などの村生産の果物達の詰め込まれたお重や、塩漬けされた桜の葉や花があしらわれた『関東風の桜餅』が沢山詰まったお重を並べ、愛之助達に進める。


「やった~~~!デザートだ!………う~~~ん♪前の粒々した桜餅も美味しかったけど、この関東風の桜餅も薄い桜色の皮が可愛くて美味しいね♪」


「本当に可愛いでござるね。それにもちっとした食感の生地と愛満お手製のこし餡が合っていて、美味しいでござるよ!」


「おいちい♪」


「いなり寿司ほどではないでやんすが、この桜餅も美味しいでやんす♪」


「初めて食べましたが、この関東風桜餅とは薄く焼かれた生地とこし餡の組み合わせが上品で食べやすいですね。」


「本当じゃのう。上品な甘さと塩漬けされた桜の葉や花の塩けが口の中に広がり、愛満が用意してくれた緑茶と良く合って旨いのじゃ!」


「コレコレ!やっぱり東京生まれ東京育ちの俺には『桜餅』と言ったら、このもちっとした生地にこし餡が巻かれた桜餅なんだよな………うんうん、やっぱり美味しいぜ!」


「ほのかな塩っけや塩漬けされた桜の花や葉から桜独特の風味がして美味しいアル!

それに桜の花が咲き乱れるこんな美しい風景のなか、桜の花や葉を使い作られた美味しい和菓子を食べれるなんて、風情があり、心が洗われるアルよ♪」



愛満お手製の関東風桜餅を味わい楽しみながら、午後からの花見祭も何のトラブルも無く。和気あいあいとした和やかな雰囲気のなか進んでいくのであった。




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