「新玉葱の味噌汁」と「新玉葱サラダ」と兎族のコペイとコプリ族のタマネ
「と、お米を洗ってといたら、お米がかぶる程度のお水に約20分浸け。
その後ザルにあげ、15分置いてから炊くからね。ここまでの行程で解らないところはある?」
「ううん。愛満の教えかたが解りやすいから大丈夫だよ。」
「僕も大丈夫!」
「本当に、そう言ってもらえると嬉しいよ。2人ともありがとうね。じゃあ、お握り用のお米を浸してる間に、お味噌汁作りに移るね。」
愛満が兎族で米農家のシャル家7男のコペイとコプリ族のタマネの2人に料理を教えていた。
◇◇◇◇◇
実は愛満の友人でもあるコペイとタマネの2人から、前々から2人の大好物のお米やお味噌を使ったお店をやりたいと相談を受けていたのだ。
しかし幼い頃に熱や体調を崩す等を繰り返し、体が丈夫では無かったコペイの体調面などを心配したコペイの両親からお店をやる了解を貰えず。
なかなか店の話などが進まず。困り頭を悩ましていたのだが、連日の2人の説得から昨日やっと両親達から了解を貰い。
嬉しさのあまり張り切った2人は、今朝早くから万次郎茶屋を訪ね。コペイが持参した実家のお米や餅米を使った『お握り』や『炊き込みご飯』、『おこわ』に始まり。
タマネ達コプリ族が大好きなお味噌を使用した。旬の具材を使った『味噌汁』や、食べごたえある『豚汁』、『ダコ汁』等々のお味噌を使った汁物料理を習っているのだ。
◇◇◇◇◇
「じゃあ、次に2人に教える最初の味噌汁の具材は、今が旬の新玉葱を使った新玉葱とワカメのシンプルなお味噌汁にするね。
それで今日の味噌汁に使う『出汁』は『いりこ出汁』にして
タマネ達コプリ族の皆には、前に出汁の作り方教えてるから、タマネに出汁作りを頼んでも大丈夫かなぁ?」
その日の気分で『いりこ出汁』や『鰹出汁』、『昆布、鰹出汁』、『アゴ出汁』など何種類かの出汁から味噌汁を作る愛満は、今日教える味噌汁の出汁をスタンダードな『いりこ出汁』に決め。
愛満から習い。味噌汁含め、お味噌好きのコプリ族の皆が作れる出汁作りをタマネにお願いする。
すると出汁作りならお手の物のタマネはヤル気満々な様子で
「うん!前に愛満から出汁のとり方を教えてもらって、今ではいりこやアゴ、昆布、鰹節の出汁作りならバッチリだから、出汁作りなら任せてよ!」
早速、出汁作りをテキパキと始める。
「本当に、なら良かった。じゃあ、タマネに出汁作りを頼んでる間に、コペイには味噌汁の具材になる新玉葱の皮をむいてもらい。食べやすい大きさにくし切りに切ってもらおうかなぁ。」
「了解で~す♪」
愛満の指示を受けたコペイが返事して、新玉葱の皮をむきだす。
そんな物覚えや手際の良い2人の指導をしながら、何やら暇になった愛満は、余った新玉葱を使い。簡単なサラダを作り始める。
すると手際良くだし汁作り終えたタマネが近付いて来て、愛満が作っている料理に興味を持ち質問する。
「ねぇ愛満。出汁を作り終えたけど、愛満は何を作ってるの?」
「えっ!もう出汁を作り終えたの?さすがタマネ!手際が良いね。
あっ、それからコレはね。このあと2人が作ったお握りや味噌汁を皆で試食会する予定だから、味噌汁用の新玉葱も余ってる事だし。
新玉葱は白くて皮が薄く、果肉も柔かく、辛みも少なくてね。生食のサラダに向いてるんだ。
だから簡単なサラダじゃないけど、この余ってる新玉葱やオカカを使って『新玉葱のおかかサラダ』を作ろうかと思って下拵えしてたんだ。」
余った新玉葱を使った『新玉葱のおかかサラダ』の事を説明する。
「へぇ~~新玉葱でサラダが作れるんだ!全然知らなかった。それに新玉葱って、生で食べても美味しいんだ。」
「うん!新玉葱は一年中出回ってる『黄玉葱』より日持ちはしないけど、そのぶん生でも加熱しても美味しいんだよ!」
最近村の八百屋で販売されている『黄玉葱』とは違う、新玉葱の事を話し出す。
「それに僕が婆ちゃんから習った美味しい新玉葱を選ぶコツがあってね!
美味しい新玉葱を選ぶコツは表面に傷がなく、固くしまっている物で、手にした時しっかりと重みのある物を選ぶと良いんだよ。
それから新玉葱はカビやすいから、根本の部分などがカビ臭くないかチェックすると良いよ。」
愛満も婆ちゃんから習った新玉葱のプチ情報などを話ながら、愛満とコペイ、タマネの3人の料理教室は楽しげに進んでいく。
◇◇◇◇◇
「う~~~ん♪やっぱり味噌汁は美味しいね!
しかも今日の味噌汁は僕の好きな『麦味噌』だから、いつもの倍美味しく感じるよ。
味噌汁の具材の新玉葱とワカメもシンプルだけど飽きのこない味わいで、お椀に残る麦味噌の粒も美味しくて何杯でも食べれちゃう!」
味噌好きのタマネが自分が作った『お味噌汁』を自画自賛して、お代わりを繰り返す。
すると隣で持参したお米を使った『お握り』を食べているコペイも
「あぁ~~~~♪やっぱり家で作った米で握られた『お握り』は美味しい!
米全体がほんのり甘く、ツヤツヤモチモチしていて、直火の釜で炊いたから風味や味わい、食感がいつもより美味しく感じるよ。
それにシンプルな塩握りながら巻かれた焼き海苔とも良く合っていて、何個でも食べれる美味しさだよ!」
愛満が今日のためにわざわざに台所の一角に本格的な釜を造り。直火の釜で炊いた白米やシンプルでいながら、米本来の旨味を感じられる『塩握り』を自画自賛する。
そした味噌汁を一通り満足し、愛満が作った『新玉葱のおかかサラダ』を食べていたタマネが驚いた様子で皿の中のサラダを見つめ。
「うゎ!愛満が作った『新玉葱のおかかサラダ』も美味しい!
サラダ油と醤油をかけただけの新玉葱と鰹節、焼き海苔のシンプルなサラダなのに、おかかと焼き海苔の風味やシャキシャキした新玉葱の食感が合っていてパクパク食べれちゃうよ!」
「うんうん!それに味噌汁の新玉葱の食感と全然違っていて、これが同じ新玉葱を使った料理なのかとビックリだよ!」
驚いた様子で、味噌汁の新玉葱とサラダに使われた新玉葱を交互に食べ、モグモグと食べ比べする。
そうすると台所でお握りやお味噌汁のお供になる、浅漬け3種類を持った愛満が戻って来て
「2人ともお待たせ。浅漬けが漬かったから持って来たよ。
これが乱切りにした胡瓜を昆布だしの素と赤唐辛子、味醂、塩、水の浅漬け液で漬けた『胡瓜のピリ辛昆布漬け』で
拍子切りした大根を梅酢、生姜の千切り、塩、水の浅漬け液に漬けた『大根の梅酢漬け』
一口大に切ったキャベツを出汁醤油、すだち、塩、水の浅漬け液で漬けた『キャベツの香味醤油漬け』の3種類になるよ。皆で食べよう。」
3種類の浅漬けの事を説明しながらテーブルの上に置く。
すると茶屋の扉のベルが勢い良く鳴り。丈山の所へ山背と一緒に遊びに行っていた愛之助達が元気良く帰って来る。
「ただい~ま、タリサが帰って来たよ~♪」
「たらいま~、マヤラもかえちぇきちゃよ♪」
「愛満、今帰ったのじゃ!」
「ただいまでごさるよ~~♪…………あっ!コペイとタマネが美味しそうな物を食べてるでござる!
拙者達もお腹ペコペコでござるから食べたいでござるよ!」
「タリサもお腹ペコペコ、食べた~~い!」
「マヤラもちゃべる、ちゃべれるよ!」
「ワシもなんだか腹がへったのう~。………よし!食べるかのう。お箸、お箸と……」
何やら山背の中では決定事項になったらしい。丈山宅から帰って来た愛之助やタリサ、マヤラ、山背の4人も試食会に加わり。
その後、ああでもない、こうでめないとシンプルな『塩握り』の他に、3人で何種類も握った。
『鮭』や『梅干し』、『昆布の佃煮』、『海老マヨ』等の『お握り』の具材を決めたり。『炊き込みご飯』や『おこわ』の種類。
季節折々の旬の素材を使用する『お味噌汁』の具材や出汁。『麦味噌』、『合わせ味噌』、『赤味噌』、『白味噌』等の味噌を決めたりと、しだいに白熱した試食会になっていく。
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そうしてその後、コペイとタマネの2人は愛満の力を使い建てた。
広々した調理場や販売場、飲食出来る。ちょっとしたスペース等が整備された純和風な店舗兼自宅を建てて貰い。
朝倉村に新たに兎族のシャル家が作るお米や餅米を使った『お握り』や『炊き込みご飯』、『おこわ』
コプリ族の大好きなお味噌を使った。季節折々の旬の食材が入った『お味噌汁』を提供する飲食店が仲間入りするのであった。




