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駄菓子カツと貸本屋のトヨ



「そうそう、溶き卵の次にパン粉をつけるんだよ。タリサもマヤラも上手だね。」


「愛満、頼まれた分の春キャベツの千切り終わったでござるよ。次は何をしたらいいでござるか?」


「愛之助、ありがとう。愛之助が千切りしてくれた春キャベツで、愛之助が好きな『オレンジ風味のコールスロー』作るから楽しみに待っててね。

それじゃあ次はマカロニグラタン用の新玉ねぎの皮をむいてくれる?」


「了解したでござる♪」


愛満達が何をしているかというと、山背が店番をしてくれているなか、今日王都から遊びに来る友達のトヨの為に1度食べさせてからトヨの好物になったアルモノをお昼ご飯に作ってあげているのだ。



◇◇◇◇◇



このトヨと言う人物、生まれがチャソ王国の貴族の6男ながら王都で貸本屋を営んでいるほどの本好きになり。


たまたま王都に用があり、里帰りしていた。

同じ貴族で、幼なじみの黛藍の姉の光紅が最近ハマっている愛満から借りた純愛小説の本に目ざとく気付き。

言葉巧みに光紅から本の出所を聞きだし。愛満が所蔵する、自分が読んだ事の無い未知の本を求め。

はるばる王都から朝倉村にやって来てからの愛満達の友人になる。


しかも本の事を除けば、少し天然の入ったおっとりとした性格の人物になり。のほほんとした愛満達とも話があい。

見た目も180cm有るか無いかの高めの身長なのに、本を読む事に夢中になりすぎて、たびたび食事をとるのを忘れてしまい。

他にも1年のほとんどを本を読むために室内で過ごすため、顔色が白を通り越して病人のように青白く。

細身のペラペラな体格も合わさって、初めて会った瞬間から愛満や愛之助、タリサやマヤラさえ、なぜかトヨの事をほってとけず。


マヤラにいたっては、その時に食べていたおやつを分けてあげるほどにトヨの事を心配して、トヨが分けてあげたおやつを食べ終えるまで真剣な顔でガン見していた。


それから愛満達は、トヨが毎週朝倉村に愛満が自身の(チート)を使い手に入れ、こちらの世界の文字に変換した新刊を求めて、やって来るたびに愛満宅に泊まらせ。

大好きな読書三昧の日々をおくらせながらも、時間になるとご飯やおやつを必ず食べさせ。

毎日お風呂にも入らせて、睡眠をしっかりとらせてはと、村に来た時よりも健康になるように3食おやつ付きで何かと世話をやいているのだ。



◇◇◇◇◇



そうして初めて会った時にマヤラから分けて貰って食べて以来、トヨの好物になった某駄菓子のビッ○カツを真似て作った。


豚ロース薄切り肉に塩コショウと気持ち多目のカレーパウダーを振りかけ。

タリサとマヤラがお手伝いしてくれ、小麦粉、溶き卵、パン粉の順番に衣をまぶしたペラペラのカツをカラッと揚げた『駄菓子カツ』が完成する。


他にも子供舌のトヨの好物や不摂生のトヨの為に野菜多目に考えて作った献立の

新玉ねぎやピーマン、ウィンナー等が入り。甘めの味付けに、半熟の目玉焼きののった『ナポリタン』

みじん切りにした野菜がたっぷり入った一口サイズの『ハンバーグ』

愛之助が好きなオレンジジュースやオレンジの身が入った『オレンジ風味のコールスロー』

シンプルに海老と新玉ねぎ、マカロニで作った『海老マカロニグラタン』

春野菜と豚肉を蒸籠で蒸し、愛満特製のネギソースで食べる『春野菜と豚肉の蒸籠蒸し』

海老や蒸し鶏、生野菜を彩り鮮やかに巻いて、甘酸っぱいチリソースで食べる『生春巻き』

タリサが好きな『コーンスープ』、マヤラが大好きな『タコさんウィンナー』と愛之助が好きな『海老のサラダ巻き』

等々の多国籍になる料理が乗ったお皿の数々をテーブルいっぱいに並べ。愛満達はトヨが来るのを今か今かと待っていた。


すると来店を知らせる店のベルが鳴り。


チリーン、チリーン♪


「こんにちは。今回もお邪魔しにきました。」


「トヨだ~!こんにちは。元気にしてた?」


「トヨじゃ~♪げんきにちてた?マヤラちんぱいちてたんじゃよ。」


「トヨ、こんにちわ。あっ!また前に来た時みたいに痩せたでござるね!

さては本を読むのに夢中になりすぎて、ご飯食べるの忘れたでござるね。」


トヨが店内に入ってくるやいなやタリサとマヤラの2人は、トヨに駆け寄り抱きつき。

愛之助もトヨの様子を事細かくチェックしながら、忙しそうにトヨの健康状態を調べ始める。


そんな愛之助達からの熱烈な歓迎を受けたトヨは、嬉しそうにニコニコ笑い。

3人と一緒に愛満や山背がご飯の準備をするテーブル席にやって来ると王都のお土産を渡しながら再会を喜ぶ挨拶する。

そして初めて会う山背ともお互いに挨拶したり、愛満達と最近の近況を少し話したりする。


そうしているとトヨの大好物の料理が並ぶテーブルを前に、トヨは朝倉村から王都に帰って以来、感じなかった空腹を感じ。

愛満やタリサ達が笑顔で見守るなか、早速トヨのために用意された料理を食べ始めるのであった。



◇◇◇◇◇



「トヨ、駄菓子カツ美味しい?僕とマヤラで衣つけたんだよ♪」


「マヤラ パンこしゃん トントンしちゃの♪」


「えっ、本当に!ありがとう、すごく美味しいよ♪

お肉が薄くて食べやすく、カリッとした部分と甘辛いソースのかかったしっとりした部分があって、何枚でも食べられそうだよ。」


「良かった~♪トヨが美味しそうに食べてくれてるの見たら安心して、お腹空いてきちゃった!よし、僕も食べるぞ!」


「マヤラもおにゃかすいちゃ!ごはんたべるじょ!」


トヨに誉められ、自分達のお手伝いした駄菓子カツの出来映えに一安心したタリサ達は、自分の好物でもある料理をモグモグと食べ始める。


「う~~ん♪コーンスープはいつ飲んでも美味しいねぇ。濃厚なとうもろこしの甘味と風味があって、僕コーンスープ大好き!」


「マヤラは、タコしゃんウィンニャーがちゅき!きょうのタコしゃんは、しゃんとおめめとくちしゃんもあるんじゃよ♪」

※『マヤラは、タコさんウィンナーが好き!今日のタコさんウィンナーは、ちゃんと黒胡麻の目とチーズの口があるんだよ♪』


「拙者は海老の入ったサラダ巻きが美味しいでござるよ!

巻き海苔の風味と酢飯としゃきしゃきしたみずみずしいレタス、甘いだし巻き玉子、ぷりぷりの海老が、愛満特製のマヨネーズソースと合わさり。あまりの美味しさに何個でも食べてしまうでござるよ♪」


「ワシは駄菓子カツが油ぽくなくカリカリしていて、薄く食べやすく美味しいかったのじゃ!」


愛之助達も思い思いの料理を堪能していると夢中でご飯を食べていたトヨが


「うん!やっぱり愛満が作る料理はどれを食べても美味しいねぇ!毎回ついつい食べ過ぎちゃうよ。

………………あっ、そうだ愛満!僕ね、やっと父様や兄様達のお許しをもらって、朝倉村に移住出来るようになったんだ。

それで今回は家の魔法使いも一緒に来たんだけど、どこに僕の店建てたらいい?」


トヨの爆弾発言に愛満は飛び上がらんばかりに驚き。


「…………えっ!朝倉村に住むの!?トヨが!?それに魔法使い!?」


「うん。王都と朝倉村までの行き来する時間があったら一冊でも多くの本が読めるでしょう?

だからこの村に住めば、愛満の美味しいご飯も毎日食べれるし、珍しい本だって沢山読めるからね。

前々から考えていたんだよ、ナイスアイデアでしょう!

あっ、それから建築関係とかは心配しなくて大丈夫だよ。今回は魔法使いのルヒス達を連れてきてるからね。

それにルヒス達には日頃の労いをかねて、朝倉村自慢の風呂屋・松乃に宿泊してもらっているから、今頃温泉にゆっくり浸かったり、美味しいご飯を食べたりしていると思うよ。

それで、僕のお店は何処に建てたらいい?」


更なるトヨの爆弾発言を受けて、しばしば固まる愛満であったが、食事の後に改めて今後の事を話し合い。


トヨの貸本屋のお店は、愛満から毎月新刊を納期する事や、3食おやつ付きの条件で、朝倉村の村人達が無料で利用出来る貸本屋から『図書館』に変わり。

図書館戦争奥のトヨの自宅はトヨからの強い希望により、自宅内にも広大な書個室を装備してあげ。

愛満が自身の(チート)を使い。和モダンでいて、どことなくミステリアスであり、歴史的な巨大な建築物が完成する。


そしてトヨが連れてきた魔法使いの人達には、そのまま朝倉村でゆっくり体を休めてもらい、王都に帰ってもらうのであった。



◇◇◇◇◇



こうして、朝倉村に『風呂屋・松乃』に負けないくらいの巨大な広さや膨大な書籍を保有する『朝倉図書館』と図書館・館長になるトヨやルヒスが、村の一員として仲間の入りする。



そう!トヨの店や自宅を建てるために村にやって来たルヒスは、『朝倉図書館』の造りや村の建築物にすっかり魅了され。

1人王都に帰らず、そのまま朝倉村に移り住むと本を読むばかりで働かない館長のトヨの変わりに、副館長として魔法を使いながらテキパキ、広大な広さの朝倉図書館で働いてくれるのであった。



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