ナポリタンとコボルトのロッソとビアンコ
その日 万次郎茶屋には、朝倉村にある喫茶店のマスター兼パティシエのケンタウルス族のヤマトが、古くからの友人を連れ、愛満を訪ねてきていた。
「はじめまして。僕は朝倉村の村長兼万次郎茶屋の主人でもある愛満になります。
今回は急な話であるのに朝倉村に来てくださり、本当にありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそ今回声をかけて頂き、本当に助かりました。ありがとうございます。
私はコボルト族のロッソと言います。隣に居るのが弟のビアンコになります。
それからここには居ませんが、一緒に朝倉村に来た両親と幼い兄妹の9人家族になります。
けど、本当に助かりました。
実は先の戦争で、家族で営んでいた食堂をたたまなくてはいけなくなってしまい。この先どうやって生きていこうと家族で頭を悩ませていたんです。
そしたら古くからの友人のヤマトから、一緒に働かないかと便りが届きまして、本当に助かりました。」
愛満の前に座る二足歩行で、見た目が可愛らしい豆しばのようなコボルト族のロッソが愛満に頭を下げ。お互いに頭の下げあいになってしまう。
すると古くからのロッソの友人でもあり、ロッソ家族を朝倉村へと呼び寄せたヤマトが
「いえいえ、私の方こそ助かりました。
最近お客さんから、甘い物以外の食事も提供出来ないかと要望が有りまして。
しかし私と妻のナコは、注文されたパンケーキやデザート等にかかりきりになってしまっており。
ササナさんも愛之助君から習い。少し前にマスターした女性のお客さんから大人気のラテアートの注文で大忙しで………。
はっきり言ってお客さんの要望の料理どころか、今は接客さえ十分に手が回らない状態で……。」
ヤマトの話に。そんな風にヤマト達が営む『純喫茶店』が忙しかった事など知らず。少し前のマヤト達との話し合いで『純喫茶店』の内情を知った愛満は、話の途中であったが思わず謝る。
「あっ、何かごめんなさい。ただでさえ、お店忙しかったのに、そこに愛之助のラテアートが加わり。新しい物好きや可愛い物好きの客が爆発的に増えちゃったみたいで………。僕もサポートが足りませんでした。」
「いえいえ!愛満君には息子のタクともども良くしてもらっているのに、これ以上ご迷惑かけれませんよ。
逆に妻と一緒に良く、愛満君には感謝してもしきれないと話しているんです。
それにササナさんも愛之助君から習ったラテアートを毎日楽しそうに勉強しては、愛満君の作る新作の和菓子に対抗し。
自分も四季折々の新作のラテアートを発表するんだと日々燃えているんです。」
頭を下げる愛満に慌てた様子で話、更に続けて
「それに愛満君にお店の事を相談したら、お菓子作り専門の私達が日々使用している厨房とは別に、料理専門の厨房も増築してくれ。
私達が仕事しやすく、気心のしれた人をお店の一員に招き入れたら良いとも親身に相談にのってくれました。
そこでどうなるか解らなかったのですが、真っ先に思い浮かべたロッソに手紙を送ったんです。
しかし本当にロッソ達が来てくれて助かりました。ロッソ、ビアンコ君、ありがとう。」
「いやいや、僕の方こそ助かったよ。ヤマト、ありがとう。」
「いやいや、私の方こそ助かりました。」
「いやいや、僕の方が」
「いやいや、私の方こそ」
終わらないヤマトとロッソのお礼を言い合いに愛満が、お礼合戦をたちきるよう。
「じゃあ、喫茶店の新メニューになる料理をお教しえしましょうかね。ロッソさんもビアンコさん、マヤトさんも台所に移動しましょう。」
声をかけ、万次郎茶屋の台所へと案内する。
そして手洗いなどの衛生面の指導を念入りにしたあと、何種類かのパスタ料理やサラダやスープなどの作り方を教えていくのであった。
◇◇◇◇◇
「で、パスタを表示時間より1分早く茹でている間に
フライパンでさっき切っておいたウィンナーや、今が旬の新玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームを炒め。
そこにケチャップ、牛乳、ソース、砂糖、醤油、コンソメ粉末を混ぜ合わせた特製トマトソースを加え、少し煮詰めます。
パスタが茹で上がったら、ソースのフライパンに加え。
仕上げのバターや塩コショウを加えたりして、炒め合わせたら『ナポリタン』の完成だよ。
どう?ここまでで解らない所はある?」
ロッソとビアンコ兄弟に純喫茶店の新メニューになる『ナポリタン』やパスタ料理を教えている愛満が、短い時間のなかで、打ち解け仲良くなった2人に、解らない所など無かった質問する。
すると耳や尻尾をピコピコ、フリフリさせ興奮した様子のロッソやビアンコが
「初めて見聞きする料理名や調理法ばかりで、驚きの連続ですが何とか大丈夫です!
しっかりメモもとってますし、頑張ります!」
「俺も兄ちゃんを助けられるように、しっかり見聞きして頑張る!」
可愛らしい見た目の二足歩行の小さな豆しば姿のロッソ達のヤル気ポーズに、愛満の顔にもついつい笑みがこぼれ、場の空気が和やかになる。
「そう、それは良かった♪
ロッソもビアンコも解らない所があったら、調理中でも遠慮せずにドンドン聞いてね。
それじゃあ次は、春キャベツとウィンナーを使った『春のペペロンチーノ』の作りに移るね。
それから完成した料理は、後でみんなでお昼ご飯として食べるから、楽しみに待っててね。」
「「はい!」」
ロッソとビアンコが愛満の問いに元気いっぱいに返事をする。
そんな2人の可愛いらしい姿に愛満はついつい癒されながら、別の作業台で、村で一年中採れる村名産の苺を使い。
純喫茶店の新作メニューなるかもしれない。愛満から教えてもらった苺菓子の新レシピを試作しているヤマトへと声をかける。
「ヤマトさんもどうですか?『苺のフラン』焼き上がりそうですか?」
「えぇ!あと5分で焼き上がります。
それにしてもこの『苺のフラン』なる苺菓子簡単ですね。
卵に砂糖や牛乳、薄力粉をふるい入れたのを順番に加え、泡立て器で混ぜ合わせ。
無塩バターを薄く塗った耐熱皿にへた等を取った苺を並べ、先程の卵液を流し入れ、オーブンで焼き。
仕上げに焼き立てのうちに粉砂糖を振るだけなんですから!
あぁ~~~~♪今から焼き上がりが楽しみです!」
愛満やロッソ、ビアンコ、ヤマト達の4人は、純喫茶店の新作レシピ作りにヤル気がみなぎった様子で頑張る。
◇◇◇◇◇
そうして新作レシピ作りを終えた愛満達は、お昼に帰って来た愛之助や美樹達も加わり、出来立てのパスタや苺を使ったお菓子を試食し始める。
「う~~~ん♪美味しい!
この『ナポリタン』と言うパスタ料理、甘味のなかにほのかな酸味が有り、一口食べたら止まらなくなる美味しさだね。
それにナポリンタンの上にのった目玉焼きや粉チーズで、途中味が変わっていき、いくらでも食べれそうだよ。
ねぇ、ビアンコとヤマトはどれが美味しいかった?」
「俺も『ナポリタン』が美味しかった!
そのままでも美味しかったけど、目玉焼きの黄身とパスタ麺が絡み、濃厚でいてまろやかな味わいになり。癖になる美味しかっだった!」
「私も甘味とほのかな酸味のする『ナポリタン』が美味しかった。」
「本当にこの『ナポリタン』旨いな!
良く美容師の先輩達に連れていってもらって食ってた。あっちの職場近くにあった喫茶店のマスターが作るナポリタンの味と良く似ているよ。
あ~~~ぁ、懐かしい!マスター元気にしてっかなぁ~。」
「僕は『カルボナーラ』が一番美味しかったから好き♪
厚切りベーコンの旨味と生クリーム、粉チーズ、卵の濃厚なソースがパスタと絡まり。黒胡椒のピリッとしたアクセントもあって、止まらない美味しさだよ!」
「拙者は、たらこの塩気とほんのり香る爽やかなレモン汁の風味や酸味が合わさった『たらこスパゲッティ』が美味しかったでござるよ!
それに口にするたびにタラコのプチプチした食感が面白いでござる。」
「マヤラもプチプチたのちい♪」
ロッソ達は、初めて食べるパスタ料理の数々に拒否反応も無く『美味しい、美味しい』とお腹いっぱい食べ進めていく。
そしてマヤトが作った新作レシピの『苺のフラン』も嬉しそうに間食し。
「うむ!苺のフランなるお菓子 初めて食べたのじゃが、口当たりも良く、焼かれた苺が甘味を増していて美味しかったのじゃ♪」
「プリンよりさっぱりした口当たりで美味しかったでござる♪」
「愛之助達が言うようにアルね。口当たりが良く、苺と一緒に食べるのを計算されたバランスの良い甘さで美味しいアルよ!」
満足そうに『苺のフラン』の感想を教えてくれた。
◇◇◇◇◇
こうして、朝倉村にコボルト族のロッソ家族と純喫茶店に新しい新作料理やお菓子が仲間入りするのであった。




