肉ゴボ天うどんと狸族の花笑と和花
「へぇ~~!なら、花笑と和花の故郷ではうどんが主食になるんだね。
それで2人の生まれ育った村がうどんの発祥の地になるんだ!」
愛満は朝倉村の噂を人伝に聞き。昨日の夜遅くに遠く離れた生まれ育った故郷から、たった2人でやって来た花笑と和笑の話に驚く。
「うん。昔ある日ふらりと村にやって来てな、村に住む事になりんしゃった。珍しい黒髪黒目の人から村に広まった麺料理らしいんよ。
昔の村の人じゃと、そん人があんまりにも美味しそうに食べよるけん。
村ん人達も食べたぁなって食べさせてもろうたら、めっちゃ美味しいて食べやすいけん、村で爆発的に人気が出てな。村全体に広まったらしいんよ。
やけん、名前もその人が言なさった『うどん』て広まり。
今では、うどんは僕達故郷のソウルフードになったんよ。ねぇ、和花。」
「うん!そんで他にもそん人が言ってたらしい、村に残るうどん伝説があってな。
うどんはコシが命だとか、だしも大事とか、俺は狸と縁が有るとか、この世界をうどん王国にしてやるとか、様々な伝説が村に残ちょるんよ。
そんでな、その伝説の中には、そん人が亡くなりさった後に出来た決まり事もあってな。
この世界にうどんと言う美味しい麺料理を広めるために、村に生まれた子供はな。
幼い頃からうどん打ちに始まり、うどんのだし汁作りを村ん大人達から教えられてな。成人する頃には『うどんマスター』なる者になっておらないかんくてな。
勉強や家の手伝い、うどん教室と結構大変なんよ!
そんにうどんマスターなったらなったでな。
村ん生まれた次男以下の成人した男子は、村を出てうどんを広めるためにとな、村さぁ出て
様々な場所でうどんの店さぁ開いて、うどんの美味しいさを広める運動をせんにゃならんのよ。ねぇ、花笑。」
「うん、やけん村に生まれた長男以外の男子は、すごか大変なんよ!」
「えっ!次男から下の男子は村をでなくちゃいけの!?それにお店を開けって!ちょっと横暴すぎない、それに厳しすぎるよ!」
狸族の花笑と和笑から更なる話を聞き、愛満その横暴に怒りが湧く。
そんな愛満の自分達を思っての怒ってる姿に、何やらくすぐったそうに2人は微笑み。
「まぁ、横暴と言ったら横暴やけどな。昔の村では子沢山な家庭が多くてな。長男は家の家業が継げるんやけどな、次男以下の男子はなかなか仕事が無かったとよ。
やけん何か手に職をつける事を、そん時の村長が考えてな。
うどんやったら食べ物やろう、やけん金が無くても食うに困らんし。小麦粉が有れば作れるけん、そう決めたみたいたい!」
「そうそう、それに今では先の戦争で村ん人も減ったけんたい、次男以下でも村から出んで良うなったとよ。
そんにうどんの店を出すんは絶対じゃないけん、そこまでうどは広まってないとよ。」
狸族の花笑、和花兄弟の話を昨日話せなかった分いろいろ話ながら、3人は一緒に朝早くから、朝ご飯用のうどんの麺を仲良く打っていた。
◇◇◇◇◇
そうして3人で打ったうどん麺やだし汁が完成し。
更には愛満が作った『甘辛く煮た牛肉』や『ゴボウ天』等が完成し、腹ペコの愛之助達が待つ朝ご飯が始まる。
「お待たせ!今日の朝ご飯は、花笑と和笑の2人が一から打ってくれた手作りの『肉ゴボ天うどん』になるよ。
他にも『ゆかりお握り』と『ワカメお握り』の2種類
だしを取った後の昆布と鰹節を使って作った『昆布の佃煮』と『鰹節のつみれ風団子』もあるよ。
お漬け物、とろろ昆布、葱も用意してあるから、たくさん食べてね。」
白い湯気上げる、熱々出来立てのうどんをそれぞれの前に置いてあげる。
すると台所から香るだしの匂いなどに久しぶりのうどんに心弾ませ楽しみに待っていた。
お腹を空かせた美樹や愛之助、黛藍、山背は『フーフー』と冷ましながら、勢いよく麺をすすり始める。
「うんめー!!やっぱ、久しぶりの生麺のうどんはうめなぁー!
麺にコシがあって、モチモチした歯応えと牛肉の甘辛い味付け、葱のシャキシャキ感。それが一体感に合わせさり、最高の味わいだぜ!
しかも俺の好きなとろろ昆布も用意してあるから、何杯でも食えるぜ!」
「本当に美味しいでござるね!だしは風味豊かでござるし。
うどんの麺はなめらかシコシコもっちりの太麺と良く合っているでござるよ!……モグモグ……ワカメお握りも美味しいでござる♪」
「黛藍は、斜め切りした大きなゴボウ天が美味しいアルね!
だしに浸かった部分は、衣がだしを吸ってしんなりした美味しさがあるアルし。だしに浸かってない部分は、天ぷら独特のサクサクした食感で、2種類の美味しさが楽しめるアルよ♪」
「う~~~ん♪本当に旨いのう~!コシのある麺も良いのじゃが、ワシはこのうどん汁が気に入ったのじゃ!」
口々にうどんを誉めてくれる。
そして美樹は、久しぶりに食べたうどんに大絶賛しながら、お代わりを3杯繰り返し。うどんを堪能した様子で、職場へと出勤して行った。
◇◇◇◇◇
「そうそう。下処理した油揚げを水と砂糖、みりん、料理酒、醤油で1度沸騰させた煮汁で煮るんだよ。
他にも温かいうどん用の丼鉢は、1度お湯を入れて丼を温め、うどんを作るとお客さんにも喜ばれると思うよ。
あっ!和花。ワカメうどん用の乾燥ワカメは、その半分の量で大丈夫だよ。少しの量で、かなりいっぱいになるから気を付けてね。」
「えっー!こげん少な量で、いっぱいになるん?」
「そう思うよね。僕もそう思って、昔 乾燥ワカメを半袋水で戻したら大失敗して、しばらくワカメ料理続きの大変な思いをしたんだ。」
朝ご飯の後片付けなどを終わらせた愛満達は、朝ご飯中に美樹から聞いたうどん料理の数々に、興味を持った花笑の和笑の2人からのお願いにより、愛満が知るうどん料理を2人に教えていた。
「はぁ~~乾燥ワカメって、そげん難しいたいね!勉強になったけん。あっ!これもノートに書いとかないけんね!」
2人の村には無い新しいうどん料理の数々に、花笑と和花の2人は大喜びしながら一生懸命に学び。
大切な事や解らない事があると愛満に質問し、ノートに書いていっては一つ一つ学習していく。
「なぁなぁ愛満、カレーうどん用の汁はこれで大丈夫なん?」
「ねぇねぇ愛満、海老天やゴボウ天の揚げ方これで大丈夫やんな?」
「どれどれ………うんうん、2人ともそれで大丈夫だよ!」
愛満からお墨付きを貰い。喜び一安心する2人であったが、大量に完成していくうどんを前に、せっかく作ったらうどんが無駄になるんじゃないかと心配そうに愛満に質問する。
「だけんど愛満、こんなにいっぱいのうどん作って大丈夫なん?」
「うどんの無駄にならへん?」
「大丈夫だよ!このうどんは全て、お昼ご飯になる予定だし。家には食いしん坊が沢山居るからね。
それに丼自体に魔法をかけてあるから、丼鉢ないのうどんは冷めもせず、のびもせず。熱々出来立ての状態で、美味しいまま食べられるんだよ。どう?安心した?
じゃ!カレーうどんが完成した事だし。次はタヌキうどんと明太子クリームうどんを作ってみよう!」
「そうなん!なら良かったわ~♪」
「はぁ~♪それを聞いて安心したけん!
なら心置き無く作れるけん。次はどんなうどん料理が完成するか楽しみたい♪」
花笑と和花が愛満の話を聞いて安心するなか、3人でのうどん作りを楽しんでいる愛満は、まだまだあるうどんレシピを花笑と和花の2人にノリノリで教えていく。
◇◇◇◇◇
そしてその後、大量に完成したうどんの数々は、花笑と和花が心配するなか愛満の言葉通り。
お昼ご飯に愛之助やタリサ、マヤラ、黛藍、美樹、山背達が喜んで、モリモリと食べてくれ。
他にも何処からともなくうどんの話を聞き付けた朝倉村の村人が茶屋にやって来ては、一杯、二杯と美味しそうに食べていってくれ。
あんなに沢山あったうどん達は、瞬く間に消化され、完売する。
ちなみに、やはり油揚げに目がない朱冴がいつもの間にか茶屋へのやって来て。10杯もあった『キツネうどん』を全て1人で完食し、満足そうに帰って行ったのであった。
◇◇◇◇◇
こうして朝倉村の村人達に受け入れられた『うどん』は、美味しいうどんを世界に広める運動をしなければいけない。
花笑と和花の2人のために愛満が自身の力を使い。とあるお店をイメージしたうどん店の店舗兼自宅を建ててあげ、朝倉村初のうどん専門の『うどん屋』が開業するのであった。




