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アメリカンドッグと犬族のリク


その日 万次郎茶屋には、朝倉村で『油屋』を営む猿族の桃花の旦那で、桃花と同じ猿族の次郎と次郎の友人で犬族のリクの2人が愛満を訪ねてやって来ていた。


「それで、依頼中に怪我をして冒険業を廃業するリクを朝倉村に住まわせてほしいんだ。さっきも話したようにリクは、本当に心優しい良い奴なんだよ。」


「ほうほう。」


「この怪我だって、自分の不注意でおったなんて話してるけど、こいつが不注意で怪我するなんておかしいと思い。

知り合いの冒険者に聞いてみたら、案の定少し前に依頼のために組んだ3パーティーでの合同パーティーで、依頼中に魔獣に襲われそうになった他のパーティーの白魔術師をとっさに庇い、背中にかなりの大怪我をおったみたいだぞと話を聞いたんだよ。

だから改めてこいつに問い詰めると、その怪我の後遺症で利き手の方の腕が肩から上にあがらなくなったらしくて」


「背中をか!それは大変な怪我をおったのう!」


「治療師からも、これ以上治療しても治らないと言われたそうで……。

こいつ、満足に剣も振るえなくてはパーティーのメンバーにも迷惑をかけてしまうと1人考え。

田舎の家業を継がなければならなくなったなんて嘘までついて、冒険業を廃業したんだ。

もちろん怪我の後遺症の事だって、庇った相手にも他のパーティーメンバーにも一言も言わないでだよ!

俺が知ったのだって、俺や桃花が何とか口をわらせて、やっと話したぐらいで、本当にまわりに気を使いすぎるぐらい優しい奴なんだよ。どうだろう、駄目だろうか?」


愛満の隣の席に座った山背が相槌をうつなか、幼なじみで親友でもあるリクの人となりや働き者で、いかに誠実で悪い者ではないかなどを愛満に力説する次郎は、リクを村に住まわせてくれないかと愛満に頼む込む。


「そうじゃあよ、愛満。ワシからも頼むから、リクを村に住まわせてやってほしいのじゃ!」


何やら次郎の話を聞いていた山背も、まるでリクの長年の友人かのようにお願いする。

そんな山背の姿についつい苦笑いしながら、愛満は


「そうですね。次郎の話を聞いたり、リクさんの来店してからの様子を見ていても、悪い人じゃないと解ったし。

村に住まわれるのは大歓迎だけど、生活するための仕事はどうする?

一応、リクさんの怪我の方も見せてもらって、治療もしたいと思ってるけど、それでリクさんの為に建ててあげる家の構造も変わるから、何か決まってる?」


2人に話すと自分の家の一室に住まわせるきだった次郎や家が貰える事や治療をしてくれると言う話しに驚くリク達は


「えっ!家を無料で建ててくれるの!?それに治療も!」


「家も貰えて治療もしてくれるのか!!」


「うん、はるばるこんな遠くの険しい山にある朝倉村にたどり着いて、何か縁あって新しく村の仲間になるんだから、それくらい当たり前だよ。

それに早く村の人達と仲良くなるためには雨風防げる安全な家があったら安心して毎日生活できるでしょう。それでリクさんの仕事はどうなの?」


愛満の少しぶっ飛んだ考えを聞いて、愛満の懐の大きさに次郎とリクは驚きながらも感動し。


「ありがとう!ありがとう!ありがとう、愛満!

リクの仕事は桃花と話し合って、家の油を使って何か出来ないかと考えているんだけど……

愛満から教わった石鹸は、香夢楼(かむろ)さん達『香屋』さんとコラボして販売すら事が決まったんだけど………

リクのための油を使った仕事の良い案が浮かばなくて、何か無いかと考えてる途中なんだ……ごめんね。」


「俺も冒険業で鍛えた剣以外は、長年の独り暮らしで、少し料理が出来るだけしかなくて、何も考えてないんです………すいません。」


次郎とリクが、村移住した後の事をまだ決めていなかった事を謝罪する。


「ううん、次郎もリクさんも、気にしなくても大丈夫だよ!

それにしても石鹸完成したんだね、おめでとう!それで石鹸はとごで販売するか決まったの?」


「うん!香夢楼さん達のお力を借りて完成した石鹸は、家の『油屋』じゃあ匂いの関係上販売出来ないから

香夢楼さん達の『香屋』さんと、朱冴(しゅうが)さんの『商店』、アルフさんの所の風呂屋・松乃の売店と、ケンタウルス族さんの所の風呂屋さんの番頭でしょう。

そして新たに完成した!油屋2号店になる『石鹸屋』の5店舗で、販売するようになったよ。

それに愛満や愛之助からのアドバイスどおり。

形や色もシンプルな丸や四角の形だけじゃなく、可愛らしいハートや葉っぱ、花などの形の石鹸を作り。

それぞれの形で色や香りを変えて作ったから、見た目も大変良く出来ていて、桃花や香夢楼さん達や朱冴さんからも人気を得るだろうと太鼓判をもらったんだよ!

だから明後日の発売日が今から楽しみで、楽しみで!ドキドキワクワクして眠れない日々なんだよ!」


次郎は瞳をキラキラさせ、石鹸の事を話す。


◇◇◇◇◇



愛満と次郎がしている石鹸の話はと言うと

実は、兎族のアルフが番頭を勤める『風呂屋・松乃』やケンタウルス族が運営している『風呂屋』で、ありがたい事に繁盛させてもらっているため、毎月かなりの石鹸を使用しており。

朝倉村の者達や村を訪れる人達から強い希望が有り。

販売している石鹸をこちらの世界でも作れないかと考えた愛満と愛之助が、油屋の次郎夫婦に話を持ち掛け。

更には香袋などを販売している、香りの事に詳しい『香屋』の香夢楼達にも声をかけ。

朝倉村初のコラボ商品の石鹸が誕生したのだ。


(ちなみに毎週の石鹸の補充がめんどくさかったからなどと言う理由ではない……………はず。)



◇◇◇◇◇



「そうなんだ、それは良かった!改めて、おめでとう。石鹸販売されたら、僕も買いに行くね!」


「ううん、何言ってるんだよ。あんなにいろいろ貴重な情報を沢山教えてくれ。何にも見返りも求めないだから、石鹸くらい毎月プレゼントするよ。

あっ、それから愛之助とも約束した頭巾を被った兎なる動物の石鹸も必ず付けて、毎月プレゼントさせてからね。」


次郎は嬉しそうに話し、何やら急に真面目な顔になり。


「それにね。お礼を言わなればいけないのは、こちらの方だよ。

今回の石鹸作りのために、わざわざ石鹸工場も建ててくれて、食用油を販売している僕の店じゃあ、石鹸を販売出来ないからって、わざわざ石鹸を扱う専門店のお店まで建ててくれたんだから!

それに戦争の影響で、職を無くした僕達の親兄妹を村に呼び寄せてくれ。

社員寮なるオシャレなマンションに住まわせてくれて、働かせてくれたんだから、感謝の気持ちでいっぱいだよ!」


次郎と愛満は石鹸話に盛り上がり。その後、愛満の(チート)を使い、リクの治療も施し。

4人でリクのこれからの事を思い出し話していると花夜の所に遊びに行っていた愛之助達が帰って来て


「ただいま帰ったでござるよ~♪愛満 お腹がすいたでござる。おやつはなんでござるか?」


「タリサが帰って来たよ~♪お腹すいた~!」


「マヤラもかえちってきちゃよ~♪おにゃかちゅいた~!」


「おかえり。あっ!ごめんごめん。まだおやつ作ってなかった!今から直ぐに作るからちょっと待っててね。」


「お帰りなのじゃ♪」


3人を出迎えた愛満や山背は、この日に限って3時のおやつを作るのを忘れていた事を愛満は思い出し。

次郎とリクに断りを入れ、簡単なおやつを作ろうと考えた愛満は、何かを良い案を思いついたらしく、笑みを浮かべて


「そうだ!次郎の家の油を使って、大人も子供も大好きなおやつや軽食にもなり。持ち帰り専用でリクさん1人でも経営出来る、食べ歩きにピッタリな食べ物があったよ!

よしよし、そうだ!アレなら良いよ、うん!

ちょっと待っててね。今、準備してくるから!」


何やら1人納得している愛満は、次郎とリクに声をかけ、愛之助達を伴い。台所へと小走りに、その食べ物に使う材料や道具を取りに行く。



◇◇◇◇◇



「お待たせ。今からリクさんに販売してもらう事になる食べ物を作るね。」


愛満は、朝倉村にある食材や愛満が仕入れて来た材料を使って、簡単に作れる『アメリカンドッグ』を作り始める。


「ボールに常温にしておいたバターを入れ。

練って柔らかくしたところに砂糖、サナさん家の卵、牛乳の実を入れ、混ぜ合わせる。

そこに小麦粉とベーキングパウダーを合わせて振るった粉類を加え、また混ぜる。

もしこの時、生地が固くてウィンナーに絡みにくかったら、少しずつ牛乳の実を加え、絡みやすい濃度にのばしてね。

で、生地が完成したら、丸箸に刺した大吉村のウィンナーを絡め、フライヤー(揚げ油)でキツネ色になるまで揚げたら完成。

ね、簡単でしょう!

揚がったアメリカンドッグには、お好みでケチャップやマスタードをつけ、食べたら美味しいんだよ。

僕はケチャップと粒マスタードをかけて食べるのが好きなんだ!」


『アメリカンドッグ』の作り方を実演して揚げた愛満は、揚げたて熱々のアメリカンドッグを待つ愛之助達や次郎とリクに、揚げ立て熱々のアメリカドッグを渡してあげる。


するとアメリカンドッグを揚げている間の少し甘い生地が揚がる、美味しそうな匂いが辺り一面に漂い。

腹ペコで我慢していた愛之助達は、愛満から受け取ったアメリカンドッグにケチャップやマスタードをつけ、豪快にかぶりつき。


「…あふあふ………美味し~い!愛満アメリカンドッグ美味しいねぇ♪

まわりはカリカリして、中のウィンナーがジューシーでケチャップとマスタードが美味しい♪」


「おいちい~♪マヤラ こりぇ ちゅきよ!」


「本当に美味しいでござるね!拙者は、このまわりのほんのり甘い皮だけでも食べられるでござるよ。」


「………ハフハフ……モグモグ……うんうん、うんうん!くっ~~~!本当に旨いのう~!」


愛之助達4人が熱々のアメリカドッグを夢中で食べ進めるなか、愛満から進められた次郎やリクもアメリカドッグを食べ始め。


「アメリカンドッグなる食べ物、初めて食べたけど、串に刺さっているから愛満の言うように食べ歩きにもピッタリだね!

それにこの揚げ色とケチャップとマスタードの3色の色合いを見ていると、何だか食欲が沸いてくるよ。

う~ん♪これは桃花や菜緒弥達にも食べさせてあげたいな!きっと美味しい、美味しいと言って喜ぶだろうなぁ~♪」


「………モグモグ…モグモグ…はぁ~~~~♪本当に旨いな!」


「そうだ!次は、練習がわりにリクさんがアメリカンドッグ作ってみませんか?」


リクにアメリカンドッグを作らせたり。生地だけを揚げた一口サイズの丸いドーナツを揚げさせたり練習してもらっていた所。


途中、なかなか帰って来ない次郎達を心配して、万次郎茶屋へと様子を見に来た桃花や、次郎と桃花の幼い息子の菜緒弥、ベビーカーに乗った5つ子の赤ん坊達が加わり。

皆で『美味しい、美味しい』と大量の)アメリカンドッグ』や粉砂糖をまぶした『一口ドーナツ』を食べ進めるのであった。



◇◇◇◇◇



こうして、次郎宅近くの空き地に愛満の(チート)を使い、リクのための店舗兼自宅を建ててあげ。


朝倉村に次郎家の油を使用した、大人にも子供にも人気の『アメリカンドッグ』やカップに入って販売される、粉砂糖をまぶした『一口サイズのドーナツ』がメニューのリクのお店が仲間入りする。


ちなみにその後、リクが庇った白魔術師がリクの怪我の後遺症を知り。

リクを訪ねて朝倉村にやって来ると、そのままリクの家に住み着き、リクと2人でお店を切り盛りするのであった。



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